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【開催報告】生物多様性とことんトークを実施しました!
3月28日、国立環境研究所の五箇公一先生を約2年ぶりにお招きし「生物多様性とことんトーク」を開催しました。
前回は「生物多様性とサブカルチャーの世界」というテーマで講演いただいたのですが、今回は2部構成で、始めに五箇先生から短めの話題提供をいただいた後、参加者との対話の時間として質疑応答を中心に行いました。質疑応答の時間は、参加者からどんどん手が挙がり、会場は大盛り上がり。全体2時間半の所要時間があっという間に感じられました。

話題提供
自身の経歴と研究に至る背景、生物多様性とは何か、生物多様性劣化の要因、野生生物・外来種・感染症のリスク、温暖化と生物多様性の関係、共進化の事例紹介といったお話をしていただきました。
個人的に一番印象に残っているのは、五箇先生の「生物多様性の保全は、“エコ”ではなく本当は“エゴ”」というお言葉です。人間は生物多様性が生み出す様々な生態系サービスを享受して生きており、生物多様性があるからこそ人間は生きていけるのです。人間は「生かされている」のだなと痛感しました。
話題提供の内容は、先生の著書『これからの時代を生き抜くための生物学入門』(辰巳出版)や『クワガタムシが語る生物多様性』(集英社)に基づいております。ご興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

質問タイム
たくさんの質問があり、すべてを掲載できないので一部をご紹介します。
Q1
絶滅してしまったニホンオオカミの再導入についてどのように考えるか?
A1
オオカミは神格化されいているが、あくまで野生動物。ハッキリ言って食べやすいものから食べる。鹿や熊を減らしてくれる期待もあるが、人間や人間の家畜の方が襲いやすいのは明らか。結果として、獣害が増えるだけになる可能性が高い。欧米のような保護管理区域内(国立公園など)で導入すればうまくいく可能性はあるが、比較的最近地域絶滅した欧米と絶滅してからかなり時間が経過している日本とでは導入のハードルの高さもだいぶ違うと考えられる。
Q2
自然観察会に参加した際、講師から植物の固有種、外来種、ハイブリッドなどの説明を受け、固有 種を残さないといけないと説明を受けた。植物目線では生きやすい形になるのが多様性だと思うが、先生はこの考え方についてどう考えるか。
A2
学者の世界でも意見が分かれる難しい問題。基礎生態分野では、ナチュラルに進化してきたものを維持する必要があり、ハイブリッドも含めて外来種に侵略されないようにと考える。一方で応用生態分野では、自然の流れの中でハイブリッドができて繁栄しているのなら、今の環境ではハイブリッドの方が適応的であり、多様性を維持するうえでは悪いことではないと考える。動物の世界だと、食用に中国から輸入したオオサンショウウオが逃げ出し、京都の鴨川辺りでは日本のオオサンショウウオとのハイブリッドが捕獲個体の多数を占める。純粋種を残すためにハイブリッドの捕獲を続けているが、実態として今の日本の河川環境ではハイブリッドの方が適応的である可能性も捨てきれない。ただし、交雑によって外来種が固有種の生殖能力を奪ってしまうケース(生殖干渉)があり、そういった場合は固有種が絶滅しないように外来種を排除すべきと考える。
Q3
ここ数年、戦争など環境への負荷が大きい問題に直面している。何か個人でできることがあれば教えて欲しい。
A3
環境問題と相対する時、まずもって当事者である人間自身が物理的にも精神的にも豊かである必要があると思う。原油価格が高騰し生活苦になっている今だからこそ、例えば燃費よく運転するだとか、省エネ家電を使用するといったことから実践してみては?
Q4
アジアでアフリカ豚熱が流行っていると聞いたが、必要な対策は?
A4
水際対策。確認されたら、鳥インフルエンザ同様、区域内の豚を殺処分し、広がるのを防ぐしかない。将来的には、ウイルスに強い種を生み出すことも考えていく必要がある。
Q5
クワガタナカセ(寄生性ダニ)はなぜクワガタに寄生するのか?
A5
ダニの中にもスペシャリストとジェネラリストがいる。スペシャリストは、特定のものに寄生する分、寄生する能力が強く宿主を独占できる一方、寄生先がなくなれば死滅してしまう。一方でジェネラリストは、色々なものに寄生する分、寄生先がなくなっても他のものに乗り換えられるチャンスがある一方、競争においては不利になることがある。クワガタナカセはスペシャリストの道を歩み進化している。
Q6
五箇先生は全身黒づくめのファッションだがその意図は?
A6
好きな格好をしていたら今に至りアイデンティティとして確立したというのが結論。面白いと思える研究をして成果をあげ面白いネタを持っていることで、その格好と相まって相乗効果が生まれたのだと思う。
Q7
観葉植物や愛玩動物が一つのコロニーを持って広がっている状態についてどう考えるか?
A7
観葉植物にしても愛玩動物にしても本質的に決められたエリアから外に出してはいけない。また、外に出すものは増殖しないものではないといけない。
Q8
将来の夢は?
A8
研究自体はこれまでやりたいことをやってこれたので、今あるたくさんのフィギュアを展示するスペースを設けたカフェ併設型の博物館を作りたい。
Q9
世界中を回る中で遭遇した一番の危険生物は?
A9
マラリアを媒介する蚊。
Q10
今日本にやって来ている外来種も時間が経てば生態系に組み込まれるのか?
A10
組み込まれるものもいるが、今日本にやって来ている外来種は大昔に来ている外来種と違って、人間が作り出した環境に適応的なものが優勢しており、これらはむしろ自然環境においては適応的ではないと考えられる。

五箇先生、参加された皆さま、ありがとうございました!