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ユース提案型 湿地の未来プロジェクト成果発表会

  • レポート

「ユース提案型 湿地の未来プロジェクト」成果発表会が開催されました!

このプロジェクトは、名古屋市が藤前干潟を中心とした湿地保全の取り組みを評価され「ラムサール条約湿地都市」として認証されたことと、なごや環境大学が20周年を迎え、その先に向けた活動を始めるためにスタートしました。若者(ユース)ならではの柔軟な発想で湿地の未来を考え、2026年には実際に社会実験を行うことを目指す、実践的なプログラムです。

プロジェクトの集大成として、2026年2月21日(土)、エコパルなごや バーチャルスタジオにて成果発表会を開催。プロジェクトメンバーや関係者、一般観覧者など約40名が集まり、半年間のフィールドワークや議論を経て構築された「社会実験」の提案を関係者間で共有しました。

【環境情報メディア部による作品発表】

成果発表に先立ち、会場を彩ったのは環境情報メディア部による作品展示です 。環境情報メディア部とは、名古屋の身近な施設や地形、行事などを「環境視点」で切り取り、情報を発信しているユースによるグループです。 「発信者」「取材対象」「受信者」の三者がともに名古屋への理解を深めることで、環境をより身近に感じ、実際の行動へと移す「きっかけ」を作ることを目的として活動しています。

今回、湿地の未来プロジェクトのフィールドツアーに同行し、名古屋市内の湿地の魅力を発信するポスターや動画作品を制作しました。作品の大きな特徴は、単に美しい風景を切り取るだけにとどまらない点にあります。藤前干潟が抱えるプラスチックゴミ問題や、かつての埋め立て計画という歴史といった負の側面もあえて可視化しました。「この景色を守るために、今、私たちは何ができるのか?」 来訪者一人ひとりの心に真っ直ぐ問いかける、メッセージ性の高い力強い発表となりました 。

【3チームによる社会実験の提案】

1チーム5〜6人ほどで構成される3つのチームが、藤前干潟が抱える具体的な課題に対する解決策(社会実験のアイデア)を提案しました。

<チームA テーマ:藤前干潟に訪れる人の減少問題解決にむけて>

来訪者の減少と、持続可能な保全活動のための資金不足を課題に設定。デジタル活用を軸とした多角的なアプローチを提案しました。

①ホームページの改善:Meta広告(Facebook・Instagram)を活用した集客。小学生の保護者世代へのリーチを想定した絞り込み広告のほか、教育関係者向け専用ページの新設、バーチャルツアーの導入を提案。疑似サイトを実際に作成し、デモとして発表しました。

②Webアプリ「バードクエスト」の開発:干潟で観察された鳥の記録・識別・図鑑機能・バッジ収集をゲーム感覚で楽しめるアプリです。展示物のリニューアル(幼児向けデザイン)と二段展示の導入もあわせて提案しました。

③飲食物の提供・収益化:キッチンカー誘致や食べられる食器の活用によるごみ削減、チェアリング(椅子レンタル)で家族連れがゆっくり楽しめる仕掛けづくり、アジア・アジアパラ競技大会に合わせたイベント出店など、収益化の仕組みを具体的に提案しました。

<チームB テーマ:生物の減少(コアジサシ)問題解決に向けて>

渡り鳥であるコアジサシの繁殖地の減少を課題に、名古屋市内の臨海部空き地や造成地に人工営巣地を設置する「空き地にコアジサシを呼ぼう」プロジェクトを提案しました。

営巣に適した資材も比較研究を行い、「砕石コンクリートは植生が生えにくく営巣に適している」という調査結果を発表しました。社会的な認知拡大に向けては、「なごや生物多様性センターまつり」「環境デーなごや」でのアンケート・展示、Change.orgを活用したオンライン署名活動、環境省・空見スラッジリサイクルセンター・名古屋市との座談会を開催したいといった自分達にもできる取り組みを提案しました。

<チームC テーマ:釣りごみ問題解決に向けて>

釣り糸・針による野鳥への被害と子どもへの危険性を課題に。「禁止」ではなく「抑止」を軸とした行動変容のアプローチを提案しました。

①クリアケースによる掲示板:干潟で回収した実物のごみを展示し、現状を可視化。標語やトリックアートを活用して印象に残る工夫を施します。

②根がかり回収機レンタル:アンケートで「根がかりが最大のごみ原因」という結果を踏まえ、海中の根がかりを回収できる機器を貸し出すことでごみ問題を根本から軽減します。

③子ども干潟見学:教育目的での子どもの来場を促進し、釣りをしている人が「見られている」環境をつくることで自然な行動変容を促します。チームAのアプリ・ホームページとの連携も予定しています。

④釣りごみ専用ポリ袋:子どもが描いたかわいいイラスト付きのポリ袋を設置・配布。ごみ箱は設置せず、持ち帰り文化の醸成を図ります。横浜の「釣り袋配布イベント」やオーストラリアの事例を参考に設計しました。

【専門家からの講評とフィードバック】

専門家・講評者:嶋 久美子氏(名古屋市環境局 担当局長)、皆木 寛司氏(環境省中部地方環境事務所 名古屋自然保護官事務所)、長谷川 明子氏・杉野 実氏(なごや環境大学 実行委員)

各分野の専門家からは、ユースならではの斬新な発想と、具体的なプロトタイプにまで落とし込んだ行動力が高く評価されました。今後の実装に向け、以下の実践的なアドバイスがなされました。

・行政・企業との連携:学校教育への組み込みや、地元企業とのコラボレーション(食べられる食器等)の推進。

・環境負荷への配慮:集客増加に伴う生態系への影響を考慮した「ゾーニング(立ち入り制限エリアの設定)」と共存の仕組みづくり。

・インセンティブの設計:アプリと連動した飲食のデポジット制など、来訪者が自発的に環境保全に協力したくなる仕組みの導入。

【ユースとの交流会】

発表の締めくくりには、会場に足を運んでくださった皆さまとユースたちによる交流会が行われました 。今回は、より深く想いを伝えるための工夫として、来場者の皆さまにメッセージカードを記入していただき、ユース一人ひとりに直接手渡ししていただく時間を設けました。 皆さまが考えたオリジナルの賞とともに、今後の活動への期待や応援の言葉が綴られたカードが手渡され、会場は終始賑やかな雰囲気に包まれました 。ユースたちにとっても、自分たちのアイデアが誰かの心に届いたことを実感できる、何よりの励みになったようです。

【まとめ】

本発表会は、単なるアイデアの発表に留まらず、若者が自ら課題を発見し、関係者へのヒアリングを通じて現実的な解決策を模索したプロセスそのものに大きな価値がありました。

今後は、本発表会で得られた専門家のフィードバックをもとに提案をブラッシュアップし、行政や施設管理者と連携を図りながら、2026年度中に小規模な「社会実験」として実装・効果検証を進めていく予定です。

藤前干潟の未来を変えるユースたちの挑戦は、まだまだ続きます!

【今までの歩み】

第1回フールドワーク

庄内川フィールドワーク(協力:名城大学附属高校)・南陽町水田フィールドワーク(資料協力:名古屋市緑政土木局都市農業課)、藤前干潟の課題発見フィールドワーク&ワークショップ(協力:藤前干潟活動センター、稲永ビジターセンター、名古屋市野鳥観察館)

左上:庄内川 右上:南陽町田んぼアート下:藤前干潟

第2回シンポジウム参加

ラムサール湿地都市認証となごや環境大学20年周年の記念シンポジウム

第3回ワークショップ

藤前干潟とつながるものを考えるワークショップ(マインドマップ)・チーム分け

第4回フィールドワーク

八竜湿地フィールドワーク(協力:水源の森と八竜湿地を守る会)なごや東山の森 ハンノキ湿地の保全活動体験(協力:なごや東山の森づくりの会)・企業ビオトープ見学(協力:株式会社三五)

左上:八竜湿地 右上:ハンノキ湿地

左下:東山の森保全活動 右下:ECO三五ビオトープ

第5回中間発表

藤前干潟プロポーザルゲーム、各チームの中間報告。
事務局・長谷川委員よりフィードバック

第6回成果発表 成果発表会(社会実験提案)と交流会

左上:成果発表会の様子 右上:環境情報部メディア部による展示 下:記念撮影