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【開催報告】SDGsオンラインセミナー 「ものづくりが生み出すサステナブルな社会」第1回

  • レポート

5月16日(金)にSDGsオンラインセミナー「ものづくりが生み出すサステナブルな社会」を開催いたしました。

第1回「江戸時代から続く八丁味噌の伝統がつなぐもの」は、株式会社 まるや八丁味噌 代表取締役社長 浅井 信太郎 氏をお招きし、江戸時代から続く製法でつくられている八丁味噌の伝統から受け継がれているもの、サステナブルな社会を目指すものについてお話していただきました。

八丁味噌の歴史は古く、いつから作られたかという記録はありませんが、江戸初期にはそのように呼ばれており、400年続いているそうです。八丁味噌が長く受け継がれている理由を探ります。


八丁味噌の名前の由来は、岡崎城から西へ八丁離れた八丁村で作られてきた味噌というものでした。現在、八丁村は八丁町となり、まるや八丁味噌も昔から同じ場所に蔵を構えています。付近には矢作川が流れており、味噌づくりの大豆などを船で運んでいました。また、蔵は旧東海道に面した場所で、江戸時代には参勤交代や伊勢参りに行く人で大変賑わった場所だったそうです。


味噌は微生物による発酵で作ります。蔵では天然の木、竹、土をなるべく使うようにしており、鉄などの金属を避けて微生物が棲みやすい環境づくりを行っています。蔵に江戸時代初期からこの地で世代交代して生息している微生物が2年以上かけかけて木桶の中で味噌を発酵させます。可能な限り、先祖から伝わる仕込み帳に沿った味噌づくりを心掛けている、と浅井社長はおっしゃっていました。


蔵の中で目を引くのが桶の上に大きく積まれた石で、これは石積み職人が積み上げています。セミナーの中では石積み職人さんのインタビューがありました。

味噌は発酵する過程で僅かですが上がったり、さがったりと動きます。積まれている川石も同時にバランスよく動きます。現在の親方は約7年でやっと任されるようになったそうです。この技術も石積み職人の親方が江戸時代からやり方を引継ぎ守ってくれています。川石は先祖から受け継いだものをずっと使用しています。


味噌を仕込む桶は160年ほど経過した木桶も使っているとのこと。道具を大切にされている事が伝わってきました。立派な木桶ですが、今、この木桶屋さんの経営が厳しくなっているのです。浅井社長は、「これはいけない」と考え、20数年前から木桶を定期的に発注しているそうです。木桶文化を守り、その文化を世界に発信しています。

まるや八丁味噌の仕込みは季節を選んで行います。仕込み時の低い温度で乳酸菌が発酵しはじめ、夏に向かっていっそう進みます。主に嫌気性乳酸菌による発酵なので八丁味噌は酸味を感じます。発酵に一切熱を加えずに2年以上天然成熟されたものが八丁味噌のブランドになります。成熟した味噌は黒光りしています。


まるや八丁味噌には信念の三か条があります。勘定帳に書かれたものでした。
「質素にして倹約を第一とする」
先祖が残してくれたもの、普段使う道具を大切にしていくこと。無駄をしない。
「事業の拡大を望まず継続を優先する」
まるや八丁味噌の味噌づくりは手作業が多く生産量が限定されてしまう。事業を大きくせず、継続することを優先する。
「顧客、従業員との縁と出会いを尊ぶ」
従業員、顧客との出会いを大切にする。味噌づくりを継続することで世代を超えて八丁味噌を親しんでもらえる。
この信念が、まるや八丁味噌が長く愛される秘訣なのですね。
岡崎市の八丁町で受け継がれてきた八丁味噌。その土地で同じ作り方を受け継いでいく事で伝統が守られているのだと分かりました。今回のオンラインセミナーを通して、「変わりゆく時代の中で日本の文化を残し、世界に知ってもらうこと、伝統文化を後世に残す事ができたら良いと思っています。」という浅井社長の言葉の大変さや大切さを改めて感じました。

次回のオンラインセミナーはオフィス家具を手掛ける株式会社オカムラから小倉悠希さんをお招きし、人にも地球にも優しい働く環境についてお話いただきます。講座の締切りは2025年6月17日(火)。まだまだご応募お待ちしております。

●寄せられた質問と回答●
①東日本大震災の時なども、酒蔵の菌が、蔵が壊れてダメになってしまった話などあったと思いますが、リスクヘッジで菌を別の場所に飼っていたりするのでしょうか?
1)蔵に棲みついている菌を別途保存はしていません。
2)まるや八丁味噌の八丁味噌は殺菌しませんし、保存料も使用しませんので生きた菌が味噌の中にも保存されていることになります。
3)日本酒は培養した菌を添加しますので保存が必要ですが弊社八丁味噌は酵母や乳酸菌等を添加しませんので敢えて保存の必要はありません。

②蔵の見学は可能でしょうか?
1)年間を通じて蔵見学者を受け入れています。
2)毎30分間隔て案内しています。

③蔵の菌がすごく大事だとお聞きしましたが、コロナ禍においては消毒と相性がすごく悪いと思いますが、対応はどのように苦慮されましたか?
1)蔵内は洗剤を使用しませんので水のみでしっかり洗います。
2)菌の生態系を守る努力をしています。
3)木桶や建物を大切に使用します。
4)蔵内を清潔にきれいに保つようにしています。

●セミナーの動画●
https://youtu.be/he-jLzU1XkM

●お詫び●
今回のオンラインセミナーにて機材トラブルのため本来のセミナーの形式で進行ができず、申し訳ございませんでした。皆さまのためになる講座を目指し、スムーズな進行となるよう努めてまいります。