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【開催報告】第4回SDGsオンラインセミナー
8月23日にSDGsオンラインセミナー「地域企業が守り育てる生物多様性」を開催しました。
第4回「人と自然とが共生する社会を目指して」は、株式会社三五 総合企画部 ESG推進室 髙野 薫 様をお招きし、「三五環境チャレンジ2050」の自然共生社会の構築について、生物多様性の保全、自然環境の保護の事例についてお話ししていただきました。
株式会社三五は自動車部品を製造している会社です。マフラーなどの排気システム、ボディ部品など鉄を使った製品を商品としています。株式会社三五は人づくり、ものづくり、環境づくりを基本理念に掲げており、生物多様性の保全、自然環境の保護を基本理念に基づき取組んでいるそうです。名古屋市熱田区にあるECO35は15,000平方メートルの敷地に執務棟がある他、研修棟、マフラーミュージアムそして森と水辺、田んぼからなる生き物の生育空間が広がっています。
ECO35は名古屋工場跡地につくられました。名古屋工場は周囲の宅地化・都会化に伴い周辺の環境のため、みよし市、豊田市に工場を移転し、更地となりました。先代社長の発想から森づくりがすすめられ、植樹をしてからおよそ10年で森となったそうです。ECO35の森は地元の熱田神宮の森をお手本とし、62種1万8000株の苗木が植樹されました。ECO35のビオトープは先代社長のホタルが飛ぶ場所にしたいとの思いから、ホタルを指標種としたビオトープがつくられました。その後、田んぼがつくられ水辺と森のあるECO35は都会の中のオアシスとなり、空から見ると鳥にとって良い居所のように見える場所となりました。
ECO35に訪れる生き物を紹介していただきました。水辺にはイトトンボやギンヤンマ等のトンボが13種類確認され、ヤゴも生息しているそうです。カワセミ、サギなどの水辺の鳥も見られ、水辺にいるメダカやドジョウ、タモロコを餌にしているのではないかと髙野さん。タヌキなどの哺乳類も見られ、セミナーの中では夜に走り回る哺乳類の映像も見せてくれました。
ビオトープの指標種であるヘイケボタルは、ヘイケハウスという飼育小屋で幼生を飼育し、放流していました。今では50頭~70頭のヘイケボタルが自然発生するようになり、従業員やその家族を招いてホタルの鑑賞会を催しているそうです。
2017年に株式会社三五では三五環境チャレンジ2050を立ち上げました。
チャレンジの4番目に自然共生社会の構築があり、3つの柱を基に活動しています。
<3つの柱>
① 植樹活動
・国内外の拠点(工場)で植樹活動を行っている。
・その地域の森を調査し、本来ある樹種を植樹している。
② 自然と共生する工場
・八和田工場の調整池のビオトープは施工する際に従業員がコイ、フナ、メダカを救出し、放流した。
・ビオトープは今年で6年目となり、ハトやカラスが良く水浴びにくる。
・年に1、2回保全活動を行っている。
・タイでもビオトープを施工管理しており、アジアンゴールデンウェーバーバードを指標種としている。
③ 外来生物駆除活動
・みよし工場では2016年からオオキンケイギクの駆除活動を行っている。
・7年間継続的に活動した結果、オオキンケイギクの数が減ってきた。
株式会社三五では地元地域をはじめ、海外を含めた多くの地域と環境活動を行っています。
ECO35では地元の小学5年生が田植えと稲刈りを体験したり、どんぐり拾いに来たりなど、自然とのふれあいの場になっています。また、地域の方への講座のフィールドとして活用しています。
東日本大震災の被災地への支援も行っています。
東日本大震災では松の木が波に流される被害がありました。松の木は根を浅く張るため波に流されやすいそうです。そこで株式会社三五では防潮堤の役割としての森づくりのサポートを行いました。現地にあった森づくりに拘り、東北産のどんぐりを各工場で3年ほど、苗木になるまで育て、その苗木を東北地方の森づくりに使用しました。この活動は2022年5月で終了しましたが、22,400本以上の苗木を寄付しました。
株式会社三五の森は植えっぱなしにはせず、間伐などの管理を行っています。間伐を行うと、明るい森となり、幹が太く成長する他、多様な森にすることができます。生態調査では猛禽類が確認され、生態系が整ってきたことが窺えます。工場でありながら、自然との共生ができあがってきています。
ECO35から始まった自然共生の活動は、東日本大震災の支援や海外拠点までの広範囲に広がっていきました。今回オンラインセミナーのお話を聞いて、在来種の保護の観点での森づくりを広げている株式会社三五の活動は生物多様性が重要視される今日に必要な活動だと感じました。
髙野さん、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
当日見逃した方、またもう一度ご覧になりたい方のために、アーカイブもなごや環境大学YouTubeチャンネルにて公開しております。ぜひ、ご覧ください。
■いただいた質問と髙野さんからの回答
Q :森づくり、ビオトープ作りを最初に行う際、名古屋市熱田区を使うことに反対がなかったのでしょうか?株主や金融機関から、儲けになることしろと言われなかったのですか?
A :熱田区という立地なので、三五の役員や従業員からは儲けになる駐車場や借地などの不動産として利用すべきとの意見も多くありました。
儲けになることを考えるのが企業は当然ですが、まずここに森をつくるという当時の社長の意見を通して現在の里山環境が熱田区にできあがりました。森づくりの先駆けで当時従業員は不安でしたが、今となっては三五グループ全体で自然共生を推進し、自然共生のトップランナーと言われるまでになったので、企業CSRとして当時の判断は良かったと考えます。社長のトップダウンでの決行は、上場していないオーナー企業である三五ならではであったと思っています。