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「くらしの中のネイチャーポジティブ~私たちの選択~」を開催しました!

  • レポート

1月24日(水)にシンポジウム「くらしの中のネイチャーポジティブ~私たちの選択~」を中区役所ホールにて、開催しました。

■開会にあたって
・「なごや環境大学」実行委員会 委員長/名古屋市副市長 杉野みどり

主催者挨拶の後、2022年12月に出席した生物多様性国際自治体会議(カナダ・モントリオールで行なわれた生物多様性条約COP15の併催イベント)の内容や名古屋市の生物多様性の取り組みについて紹介しました。
また、名古屋市が2023年10月に策定した「生物多様性なごや戦略実行計画2030」や政令指定都市初となる「なごやネイチャーポジティブ宣言」について説明し、ネイチャーポジティブにつながる、生物多様性を意識した一人ひとりの身近な行動について呼びかけました。

■ 生物多様性を取り巻く国内外の動向
・環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室 室長補佐 渡邉加奈氏

はじめに、生物多様性について、多様性があることで様々な恵みを得ていることや、社会経済の基盤となっていることについてご説明いただきました。そのうえで、生物多様性が国内外で危機的な状況にあるなか、生物多様性の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ」が2030年に向けた目標となったことなど、国内外の動向をお話しいただきました。
また、COP15で決定した「30by30目標」(2030年までに陸と海の30%以上を保全する)という新たな世界目標を達成するため、日本で始まった「自然共生サイト」の取り組みについて、事例を交えながら紹介いただきました。



■事業者の取り組み
・株式会社テクノ中部 環境事業本部 環境技術センター
 陸域調査グループ 副長 花井隆晃氏

「工業地帯のビオトープから広がる生物多様性の輪」というテーマで、環境省の自然共生サイトに認定されたテクノ中部本店ビル屋上のビオトープに関する事例紹介をしていただきました。
紹介いただいたビオトープは、里山の風景をモデルに「都市環境での自然性の回復」を図ることをコンセプトに、緑地整備や水田環境の再現を行い、動植物観察の場や社員の憩いの場として活用されており、動植物確認種数は約200種類にのぼることなどをお話しいただきました。また、地域との連携活動として、2019年度から中部大学第一高等学校と「ウシモツゴ」の域外保全に取り組んでいることや中学校の校外学習をはじめとする地域環境学習の受け入れについて紹介いただくとともに、都市域のネイチャーポジティブを進めていくうえでのポイントをお話しいただきました。


・東山遊園株式会社 テラス営業部 販売促進/
 エリアリレーション統括 朝日恵子氏

「星が丘テラスの植物を通した街づくり」をテーマに、取り組み事例の紹介を交えながらお話を伺いました。
はじめに、星が丘テラスでは東山動植物園に隣接しているという特徴を活かし、植物や生き物たちと共存する風景を創りだすことで、そこへ人が集まりコミュニケーションが生まれる「ボタニカルタウン」づくりを目指していることをご紹介いただきました。このボタニカルタウンづくりでは、1年草をメインに植えていた花壇を宿根草メインの花壇へと少しずつ植え替えを進めることで、季節の移ろいにより枯れている姿をあえて見てもらい、自然本来の季節の変化を楽しむことができるように取り組んでいるとのこと。また、この他にも花壇への虫たちのインセクトホテル設置や植栽の植替えを学生に手伝ってもらうことで、生物多様性や学び、集いの場といった特色のある花壇にしている、といった工夫についてもお話しいただきました。


・イオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木隆博氏

「未来の資源を守る“優しいお買い物”を目指して」をテーマに、お買い物や食卓といった日常生活の行動を生物多様性とつなげる取り組みについてお話をいただきました。まず、「商品・店舗出店時・お客さまとともに」という3つの切り口から、自社だけでなく様々なステークホルダーやサプライヤーとともに、商品製造時や原料調達時の段階から環境負荷について考え、取り組みを進めていることについてご紹介いただきました。また、消費者への透明性の高い情報発信や第三者認証を取得した商品などの概要、魚を事例とした国際認証商品、そして国内最大規模で展開するオーガニック商品についてもご紹介いただき、生産時の環境負荷低減や食品廃棄物の削減、消費者への啓蒙イベント開催や店舗をつくる際の植樹、生物多様性に配慮した店舗の建設など、消費者と生物多様性をつなげる取り組みについて、幅広い事例をご紹介いただきました。



■トークショー 
庭師・俳優 村雨辰剛氏
〈コーディネーター〉
名古屋大学大学院特任教授・大同大学客員教授・
ー級ビオトープ計画管理土 長谷川明子氏

村雨辰剛氏をお迎えし、長谷川明子氏のコーディネートによりトークショーを行いました。
 村雨氏は、メディアやSNSをはじめ様々な場面で日本の文化や魅力を発信されています。トークショーでは、日本に興味をもった理由や名古屋に住んでいた頃のお話、庭師になったきっかけなどを伺うとともに、竹垣や門松づくりのお話しから放置竹林の問題などについて話題が及びました。

また、床の間や縁側のある古民家での暮らしを例に、村雨氏が日常に取り入れている和暮らしの紹介や、地域ごとに特色を持つ“お雑煮”をはじめとする食べ物を切り口に、その地域の自然をもとに生み出され、受け継がれてきた文化の価値を再認識することの大切さについて、トークが繰り広げられました。



■ トークセッション

トークショーに引き続き長谷川氏のコーディネートで、村雨氏と事例紹介いただいた花井氏、朝日氏、鈴木氏に加え、2023年11月に中国・昆明市で開催された都市生物多様性国際フォーラムのユース参加者である岸晃大氏と名古屋市環境局の土屋佳弘主幹をパネリストに迎えてトークセッションを行いました。
はじめに岸氏から、都市生物多様性国際フォーラムでの経験を交えながら、ネイチャーポジティブの実現に向けた若者世代としての意気込みなどを伺いました。

つづいて、学生をはじめとする市民のイベント・講座への参加や、庭に植えた木々、店舗における花壇や森づくりが、人と生きものが接する場となることで、ひいては、生きものとのつながりを感じることに結びつく点について、パネリストのお話を伺いながら進んでいきました。その中で、名古屋市から生物多様性緑化をすすめるポイントなどを示した「なごやのまちなか生物多様性緑化ガイドライン」の紹介がおこなわれ、名古屋のような都市化が進むまちにおいては、一人ひとりの取り組みが点と点でつながっていくことで、生きものの保全が広がっていく、といったことが話し合われました。
さらに、地産地消やオーガニック、アニマルウェルフェア(動物福祉)商品のように生きものに配慮した商品の開発や、事業者がそれらを取り扱う店舗を増やしていくことで、消費の選択肢を広げていくことが話題にあがりました。また、消費者側は、そういった商品について学び、無理のない範囲で購入することや、探しても見つからない場合は、お店に導入を求めていくことが大切であり、行政は生物多様性に配慮した消費の後押しをしていく必要がある、といったことが話し合われました。
トークセッションの最後には、岸氏から様々な事業者・世代と若者世代とがコラボレーションをしながら、楽しく活動を続けていければ、との抱負を伺いました。
そして村雨氏からは、「生物多様性」ときくと、一見難しいことだと思いがちだが、もっと単純に“生きものへの思いやり”であると捉えていることをお話しいただきました。また、自身の古民家での暮らしを通じて、日本の昔の暮らし方を振り返ってみると、現代と比べて自然や生きものたちとの距離が近かったと感じることから、見失われつつある素敵な日本の文化を再認識でき、それを皆さんと共有できると嬉しい、といったメッセージがありました。


シンポジウムでは、それぞれのお話の中に多くの行動のヒントがありました。私たち、一人ひとりができることを考え、行動することで、ネイチャーポジティブを実現させ、自然と共生できる社会をつくっていきましょう!
当日ご登壇いただきました皆さま、参加者の皆さま、降雪の中お越しいただき、ありがとうございました。