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【開催報告】衣食住からSDGs -日本の伝統編- 第3回 「住まいから考えるSDGs」

  • レポート

2023年12月2日(土)、衣食住からSDGs -日本の伝統編- 第3回「住まいから考えるSDGs」を講演とワークショップ形式で開催しました。

講演では、有限会社柏彌紙店 代表取締役社長 尾関 良祐様より、「日本の住まいとSDGs」と題して、和紙漉き、名古屋の町屋の特徴、伝統と文化等、大変興味深いお話をいただきました。

まず、柏彌紙店のご紹介をしましょう。

柏彌紙店は、名古屋市中区にあり、文政年間(1824年)から約200年続く和紙を取り扱うお店です。襖や障子などの内装材を中心に企画・流通・施工までを行っていらっしゃいます。

八代目である尾関様は、お仕事の付き合いからつながった方々と名古屋市中区の大谷派名古屋別院(東別院)でイベントを開催される等、地域に根付いた活動の他、海外に向けた事業の展開もされています。

お話は和紙漉きの動画から始まりました。福井県にある越前和紙の工房で行っている紙漉きの様子です。そこでは、のどかな風景の中にある工房で丁寧な和紙作りが行われていました。

東海地区では、美濃和紙が有名だそうです。美濃和紙には他の地域では生産されない大型のサイズの和紙が作られているとのことです。和紙は自然豊か、清流に恵まれた地域で生まれるのですね。

さて、障子や襖に和紙が使われている 日本の伝統的な家屋にはどんな特徴があるのでしょうか。

尾関様は自身のご実家でもある店舗が104年余りの名古屋の町屋であったことから、たたみと廊下、襖で構成された造りを写真と図面で紹介しながら、名古屋の町屋の特徴を教えてくださいました。

構造は、基本的には京都の影響もある在来工法ですが、二階に大広間や茶室があるところが京都の町屋と異なること、たたみのサイズは江戸間や京間ではなく、中京間(91㎝×182㎝)であるといった違いがあるそうです。その他、商家独特の建具(真四角の書院障子)のしつらえは、「商売がますます繁盛しますように」という粋な願掛けがあるとのことです。面白いお話ですね。そして尾関様の家は襖だけではなく、天井にも和紙が使われていたそうです(現在は立て替えられています)。

こうした伝統的な住まいやそこで育まれる文化は地域によって異なることもお話しくださいました。その土地の風土やそこに住まう人びとの思いが関わっているからでしょう。

ところで、この講座のタイトルにも「伝統」という言葉が使われていますが、いったい伝統とは何年でそう呼ばれるのでしょうか。

伝統的工芸品産業振興協会ウェブサイトにある「経済産業大臣指定伝統的工芸品とは」の中に、「100年以上前から今日まで続いている伝統的な技術や技法で作られたものです。」という記述があります。伝統とは、「100年以上続いているもの」が一つの目安になりそうです。

100年前は尾関様のおばあさまが生まれた大正時代。「そう考えると、今後の100年もそう遠い未来ではない。」という言葉が妙に納得できました。

私たちができることをつなげていけば、100年、200年と脈々と繋がっていく伝統になります。

しかしながら、正直、日本の住まいに昔から使われているたたみ、建具、漆塗りのしつらえ等は現在使おうとするとお金がかかり、維持管理に手間がかかり、便利で気密性の高い住宅に住むほとんどの人にとってはつなげていくことが難しい伝統と言えます。

尾関様は、日本の住まいを支える職人たちがもつ技術の継承とニーズいう点から、住まいを支える伝統が続くかはこの3年が勝負!とおっしゃっていました。

そのため、外国の方にその良さを知ってもらえるよう海外への発信も視野に入れた活動もされているそうです。

尾関様は日本の住まいについて考える上で、SDGsの17のゴールのうち、8「働きがいも経済成長も」、9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、11「住み続けられるまちづくりを」、12「つくる責任つかう責任」を挙げてくださいました。

もちろん、住まいに使われる天然素材を考えると気候変動や海や陸の豊かさ等のゴールも関わってくるでしょうが、衣食住のうち、個人にとって大きな金額で手に入れることになる住まいは、産業やまちづくりといった大きな動きの中でその伝統的部分の継承を捉えていく必要があるのだと思います。

一方で、尾関様は「四里四方(よりよほう)」という考え方を紹介してくださいました。

「四里四方に病なし」という言い方もされているようですが、四里四方のものを食し暮らすと良い、という考え方が昔からあるそうです。自分が住む場所の周囲(約16㎞)のものを使って生活を営む、そこには地産地消の考え方があります。

この言葉や地域により文化が異なっていることを考えると、地域のものに目を向け、地域ぐるみで自分が住むまち全体に目を向けることの大切さに改めて気づかされました。

「住まいから考えるSDGs」、自分の立ち位置から見直して何ができるのか考えていきたいです。

講演の後はワークショップを行いました。

ワークショップのテーマは「自分が思いつく住まいからのSDGsを考えてみよう!」

グループの話し合いでは、互いのご実家の家に思いを馳せながらアイデアを出し合う姿がみられました。

最後にグループごとに話し合った内容を発表していただき、尾関様にコメントをいただきました。また、個人でできることもふせんに書いて各自持ち帰ってもらいました。

尾関様、ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

今回で「衣食住からSDGs ―日本の伝統編―」全3回が終了しました。

この講座やブログをきっかけに伝統とSDGsについて考える機会をもっていただけると幸いです。