PROJECT プロジェクトなどの活動に興味のある方
【開催報告】なごやをささえる環境学第2回「私たちの頭上」を開催しました!!
2022年11月28日(土)10:30より、山神 真紀子氏をお招きし、第2回SDGsセミナー「なごやをささえる環境学」を開催しました。
今回は、名古屋の大気環境の状況と改善に向けた取り組みについてお話しいただきました。
山神氏は、環境省中央環境審議会委員であり、名古屋市環境科学調査センター研究員として、市内の大気汚染物質を常時監視されています。
空気中に含まれる様々な物質は、私たちだけではなく生き物全体にも影響を与えることを考えると、大気中の有害物質をチェックしてくださっていることはとても心強いですね。
大気汚染はどれほど人体を及ぼすのでしょうか。1952年12月に起こったロンドンスモッグや1960年代に注目された四日市ぜんそくでは、工場から排出される硫黄酸化物(SOx)により多数の喘息患者が発生し、死者まで出ました。日本では、その後大気汚染防止法が制定されました。
窒素酸化物(NOx)では、例えば1974年製の自動車が新車に買い替えられ、排ガス中のNOxが約97%も抑えられたお話があり、科学技術の進歩が環境負荷を軽減していることを改めて感じました
その他、実際私が経験したことでは、真夏の無風の中、なんだか目がチカチカするなあ・・・と思ったら光化学スモッグ注意報が出ていた、ということがありました。
これは、光科学オキシダント(Ox)の影響のようです。
そして、現在では微小粒子状物質(PM2.5)が有名でしょうか。
こちらは無臭、そしてすぐに自覚症状がでないので怖いですね。
PM2.5の健康への影響については、アメリカにおいて、PM2.5の濃度が上がった翌日に死亡率が上昇することが報告され、日本でも1999年から観測と調査が始まり、名古屋市では2003年から通年観測が開始されたそうです。
私たちが口にする食べ物は美味しいものを選ぶことができますが、自分が住む場所の空気を選ぶことはできません。空がつながっていることを考えると、自分の地域だけではなく、隣接地域、そして偏西風の元にある諸外国の大気や自然の状況、まさに地球規模で有害物質の大気への拡散を意識し、規制していかなければならないのだと強く感じました。
初めて知ったことは、揮発性有機化合物(VOC)とNOxという有害物質を単純に減少させればOxの濃度が下がるわけではない、ということです。物質同士の関係性は複雑です。
VOCは家庭で使うスプレー缶や芳香剤からでも排出されているとのことなので、私たちの使う責任も考えていかなくてはいけないと思いました。
空はつながっている・・・
名古屋市内でVOCを削減した場合、その効果は風下の地域で現れるそうです。つまり、名古屋市内の大気環境は、風上の地域の努力に影響されるということですね。
まさに、空はつながっている!そう感じたのと同時に、水の話を思い浮かべました。上流の水質が下流の水質にも影響します。
空も川もつながっている。そうした環境の中で生活している私たち。何を利用して、何を我慢して、何を改善していくのか、そこに科学の力を加え、知恵を出し合って一人ひとりできることを行動にしていくこと。やはり、私たちはこうしたことを考え続けていく必要があります。皆さんはどう思いますか。
山神さん、「私たちの頭上」というテーマについて詳しいお話をありがとうございました!
ご参加してくださった皆さまもありがとうございました!
皆さまからのアンケートにあった質問にご回答いただきましたので記載いたします。
Q1. 愛知県の家庭からの排出量は分かったのですが、自動車関連の下請工場の建設業関連からの排出量の変化はわからないでしょうか?
A1. 愛知県における輸送用機械器具製造業からのVOC排出量は全体の27%、建築工事業からの排出量は10%(令和2年度)となっております。
Q2. WHO はどうやって基準をきめたか? 世界平均から?
対象を子供にしたのでしょうか?
A2. WHOは大気汚染がヒトの健康に与える損害は、従来言われていたより低濃度で起こるという証拠を提供しています。それに基づき、大気汚染によって全世界で毎年700万人が早死にしていると推計しています。そのうちの8割がPM2.5に関連していると報告しています。詳しくは以下のサイトをご覧ください。
https://www.who.int/news/item/22-09-2021-new-who-global-air-quality-guidelines-
aim-to-save-millions-of-lives-from-air-pollution
Q3. 子供や特定の人への影響、光化学スモッグや VOCならペンキ屋やガソリンスタンドスタッフに悪影響ないのか?
A3. 光化学スモッグは、揮発性有機化合物(VOC)と窒素酸化物(NOx)が大気中で反応して生成するので、VOCの発生源の直近で光化学スモックの濃度が高いというわけではありません。むしろ少し離れたところ(数~数10km)で高濃度になる傾向があります。
Q4. 大気について、法に示された健康保護、生活環境保全の違いを教えてください。
A4. 「生活環境」は「人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物およびその生育環境を含む。」と定義されています。「「生活環境の保全」とは、通常大気や水の清浄さ静けさ、大地の安定が保たれることによる生活の快適さ、便宜さを維持することを指す。」としつつ、これらの意味の他に、さらに人の生活に密接な関係のある財産、人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含めた意味で「生活環境」という言葉が用いられています。大気の汚染に係る環境基準は、植物などへの影響について検討された項目もありますが、現時点では人の健康の保護の観点のみから設定されています。