PROJECT プロジェクトなどの活動に興味のある方

【開催報告】森イキ!スキルアップ講座第1回を開催しました。

  • レポート

森イキ!スキルアップ講座は森林管理に携わっている方、興味がある方を対象にした講座です。今回は岐阜県立森林文化アカデミー教授の柳沢 様を講師にお迎えし、里山の管理から森づくりについてご講演いただきました。

森林を管理する際に必要な視点は、
•立地(気候、地形、地質、土壌)
•更新(実生更新、萌芽更新、伏条更新、植林等)
•植生遷移(先駆植物、陽樹と陰樹、極相種、ギャップ)
•病気(松枯れ病、ナラ枯れ病)
•資源量(密度、面積、成長量)
森林が生育している場所の環境、そしてどう変化していくのかを知り、適切に管理していくことが必要であると学びました。

さらに、森林を管理するには目的が重要であると言います。例えば、里山でキノコを収穫するなら、キノコの種類に合わせた林の管理をし、公園として利用するなら公園の目的によりますが、低木層をすかせて見通しをよくするとよいケースもあります。



森林の管理以外にも、アカマツ林の管理とマツタケについて、竹林の整備についてもお話いただきました。近年マツタケの生産量が落ちているのは、木炭の需要が少なくなり、林床を管理されたアカマツ林が少なくなってきているからだそうです。アカマツ林自体も松枯れ病や植生遷移が進んだりといった理由で減少しています。また、竹林の管理では目標とする竹林によって、竹の密度を変化させるそうです。



講座の最後に持続可能な森林とは何かというお話がありました。それは適切に管理された里山を成長量以下の収穫量で利用することだと柳沢先生はおっしゃっていました。現在、人が管理・利用しなくなったことで自然が変質しており、生物多様性保全のためにも再び管理・利用が必要です。私たちにできる事は、里山で生産された商品を購入したり、里山を観光地にしている場所を訪れたり、私たちなりに里山を利用していくことが大切だと気付きました。



柳沢 様より、質問に回答していただきました。

Q1 エノキの病気について。こぶができる病気の対策はありますか?

A1 エノキの病変部を見ていないので、確実なことは申し上げられませんが、枝や幹にコブ状のものができるのであれば、菌が原因の病変であるエノキこぶ病というものがあるようです。病原菌の生態は未だ明らかになっていないようですが、一般に病変部から菌が広がらないように切除、焼却すること、林内を明るく風通しのよい状態に保つこと、などが予防につながるのではないかと考えます。詳しくは樹木医の方に相談なさってください。


Q2 利用されなくなった里山の問題点と解決方法をしりたい。

A2 利用されなくなった里山林にもアカマツ林や落葉広葉樹林など様々なものがありますが、ここでは特にコナラやアベマキの林について私の考えをお話します。まず、「何が望ましい状態か」が決まっていなければ、「何が問題か」は決まりません。
 生物多様性の観点から多様性の高い林が望ましいとした場合は、林冠の優占種がコナラ、ないしはアベマキのみの状況は多少望ましくはないかもしれませんが、林冠層の優占種は1種でも、低木層には多様な樹種がみられることも多いです。また、萌芽更新時に実生から更新してくるコナラ、アベマキ以外の高木性樹種を選択的に残すことで、多様性の高い森に誘導することも可能です。
 カタクリのような春植物は、遷移が進行して林床に常緑樹が増えると春先の太陽光を利用できなくなり、衰退してしまいます。こういった絶滅危惧植物がみられるところでは、落ち葉を搔いてやったり、林内を明るく保つといった管理は生物多様性の観点からも重要です。講演で例に挙げたように、搔いた落ち葉を堆肥にするなどの利用も考えられます。
 経済的に循環する森を「望ましい」と考えた場合には、林冠層優占種がコナラやアベマキのみで占められている林もあり得ると思います。その場合は林の現在経済的価値を考える必要があります。現在最も経済的な需要のあるサイズは直径10cm程度のコナラやクヌギで、シイタケの原木(ほだ木)や、薪として取引されます。現状の昭和三十年代以降伐採を経験していない林は、このサイズを超えており、経済的価値を生み出さないので「問題」であるといえます。林を萌芽更新させて若齢にする必要があります。
 樹病も問題の一つかもしれません。ナラ枯れ病はブナ科の樹種の中でも感受性が高い樹種で、直径の大きなものが攻撃を受けやすいとされています。萌芽更新させて林を若返らせることが対策であるとされていますが、この病気を引き起こす菌とキャリアの組み合わせは昔から日本にある訳なので、ブナ科樹種が滅んでしまうような極端なことにはならないと思います。しかしミズナラなど大径材が家具に使われるような樹種が被害に遭うような場合は材利用の観点からは問題であると思います。
 利用する樹種はお金を生み出すものに限定することで、大きな経済効果を得ることができますが、経済的に有利な樹種は時代によって変わりますし、経済的価値を生み出さなくなることもあります。一方で、多様な樹種の育つ林をそのまま利用できれば、生物多様性が高く、循環利用されている林を実現できます。古くから続く薪炭利用の場合、樹種を選ばず(もちろん向かない樹種もありますが)皆伐して出た材をほぼ無駄なく使うことができます。講演で紹介した粗朶などは、伐採して出てきた材をほぼすべて使用することができ、無駄がありません。
 また、講演でご紹介したような里山の様々な樹種を材料にスプーンをつくるなどのグリーンウッドワークは、林を多様性の高いまま使うことができ、よい方法だと思います。
 最後に、里山林に限りませんが、シカによる獣害も問題の一つです。里山林の持続可能な利用を担保しているのは萌芽等による確実な更新なので、これは由々しき問題です。また、植生が回復できなければ表土流出などの問題が生じることになります。獣害の無い場合、林床植生が保たれていればコナラ林を放置しても土砂流出等の問題は生じないと思います。
 里山は人が自然と持続可能な形で関わることのできるよいモデルだと思いますので、関わり方は一つでないにしろ、上記のような「問題」を解決するために里山を使っていくことが重要であると考えています。