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「環境白書から実践へ2022」をオンラインで開催しました

  • レポート

今回の講座は、第一部では最新の「環境白書」をもとに日本や世界の現状とトピックを環境省に紹介していただき、第二部ではグリーン社会実現に向けた企業・団体の取組みを事例紹介していただきました。


第一部についてご講演いただいたのは環境省 大臣官房総合政策課 係長の森 様です。
現在の地球上で大きな問題になっているのは気候変動問題です。産業革命以降地球の平均気温は1℃上昇しました。たった1℃だけ!?と思うかもしれませんが、その1℃が与える影響はとても大きなものです。日本では毎年のように豪雨の被害がでており、猛暑日も増えています。アメリカやカナダでは高い気温が続き、山火事が問題になっています。ヨーロッパでは広範囲で洪水が起こっています。また、気候変動や自然災害は生物多様性にも影響を及ぼしています。
平均気温の上昇を、1.5℃までに留めるにどうしていけばいいでしょうか。
日本においては多角的な以下の3つの切り口によりアプローチします。

◆脱炭素:2050年のカーボンニュートラルにむけて、2030年において温室効果ガスを2013から46%削減を目指します。そのために再生可能エネルギーの拡大や企業の取組みが必要不可欠となります。


◆循環経済:ライフサイクル全体での資源循環に基づく脱炭素化の取組みを進めます。プラスチック資源循環の取組みについては、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルーオーシャンビジョン」の提唱国として、世界的な対策の推進に貢献します。


◆分散・自然共生:2021年のG7サミットでは、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支える「G7・2030年自然協約」が採択され、我が国も、2030年までに陸と海の30%以上の保全を目指す30by30を約束しました。生物多様性の損失や、気候変動対策を含む様々な社会の課題解決として、自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)を用いていくことを柱とし、社会経済活動における生物多様性の主流化についても提示していきます。また、再生可能エネルギーを活用した分散型エネルギーシステムの導入により、災害時の対応力向上を目指します。

国の施策についての紹介の後、地域とライフスタイルについてもお話していただきました。温暖化の要因の一つになっている温室効果ガスは、約6割が家庭から排出されています。一人一人のライフスタイルにおける変革、行動が今後の持続可能な社会づくりにとって重要とのことです。例えば、3R(Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル))を積極的に行ったり、食品ロスをなくすために、賞味期限の近い商品を購入したり、私たちにできることを実行していくことが大切です。


第二部では株式会社若鯱家 取締役副社長 高橋様とおかえりやさいプロジェクト リーダー 岡山様にご講演いただきました。


<株式会社若鯱家の取組み>
コロナ禍でテイクアウトやデリバリー、EC事業など新しいビジネスモデルを取入れてきた若鯱家。リサイクル箸やサスティナブル素材の制服など、SDGsに関する取組みにも積極的です。また、地域に根差した会社とのコラボなど、新しいビジネスには助け合いが大切だと高橋様はお話されていました。

飲食業界で問題になるのが食品ロスです。食品ロスを無くすには、商品開発から工夫が必要であり、新しい挑戦には他企業との連携が欠かせないそうです。そこで意気投合した桂新堂株式会社の社長と商品開発をすることになりました。作るのは若鯱家から出るうどんの端材と桂新堂株式会社から出る甘えびの頭を使ったえびせん。うどんの端材も甘エビの頭も捨てられてしまうものだけれど、美味しいものには変わりない。このような考えでサステナブルえびせんは生まれました。一番大変だった事は社内の理解を得ることだったそうです。まだSDGsが浸透する前だったこともあり、捨てるもので売り物を作るという点がなかなか受け入れてもらえなかったようです。しかし、発想を転換させて、捨てるはずだったものから価値を見出そうじゃないか、という方向にもっていきました。社内の理解と商品開発で2年の年月がかかったそうです。

サステナブルえびせん開発ではワークショップもおこないました。商品の名前やパッケージ、売り方などを高校生と一緒に考えました。環境に優しいだけではなく、美味しさや見た目、お客さんに喜んでもらえる商品を開発することが大切なのですね。
完成したサステナブルえびせんは、過剰包装を省いたり、開発背景のしおりをいれたり、消費者に環境について知ってもらう仕組みが詰め込まれたえびせんになりました。


<おかえりやさいプロジェクト>
おかえりやさいプロジェクトの原点は藤前干潟。藤前干潟は昔、ごみの最終処分場にされそうになった過去があります。しかし、藤前干潟は渡り鳥や海の生き物にとって重要な場所です。市民による保全運動の結果、藤前干潟は保全されました。本年はラムサール条約登録20年を迎えます。

こうした背景から、ごみ減量の大切さが市民に共有されていく中で、ごみ減量の取組みの1つとしてはじまったのが、生ごみのリサイクルを進める事で名古屋市のごみ減量に貢献するおかえりやさいプロジェクトです。このプロジェクとではスーパーやレストラン、学校給食の生ごみを堆肥化し、その堆肥を使用して「おかえりやさい」を生産、スーパーやホテルで販売あるいは提供していく仕組みです。こうすることにより、循環の輪が生まれ、食品ロスを少なくできます。
おかえりやさいプロジェクトが次に目指したのはリサイクルシステム(循環ループ)の見える化でした。2000年に施行された食品リサイクル法により、消費者が知らない企業努力を知って欲しい。そこで、なごや環境大学の共育講座で、「おかえりやさい」を巡るツアーを企画しました。スーパーやレストランのバックヤードを見学し、そこから排出される生ごみを堆肥化工場までもっていく過程を見学したり、農場での堆肥の利用、収穫を体験したりします。「おかえりやさい」を実際に食べて締めくくるツアーも人気です。

また、ダンボールコンポストを作り、各家庭から生ごみを減らす取組みも行い、なごやを循環型社会にしていきます。


私達が生活していくために選択する行動や商品が環境に関わっています。持続可能な地球社会を目指すためにも、一人一人が環境に良いものを選択していく事が大切です。