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【開催報告】生物多様性とサブカルチャーの世界

3月9日、SDGsセミナー「生物多様性とサブカルチャーの世界」を開催しました。

今回の講座では、NHK「クローズアップ現代」やフジテレビ「全力!脱力タイムズ」でおなじみの国立環境研究所、五箇公一先生をお招きし、国立環境研究所ならではの最新の研究情報とともにサブカルチャーの世界から生物多様性をひもといていいきます。

サブカルチャーというテーマもあって、会場内には先生の等身大パネルと顔はめパネルをご用意!
参加者の方が楽しそうに写真を撮っている姿が印象的でした。

講演では、ご用意いただいたたくさんのスライドを元に、映画やアニメなどの話を交えながら、生物多様性についてわかりやすくご説明いただきました。例えば、エイリアンの映画の話の後に外来種のアライグマが生態系に与える影響をお話いただいたり、狂犬病の映画の話の後に両生類の感染症カエルツボカビや新型コロナウイルス感染症のお話をいただくなどなど。
個人的には、先生がお話の中でおっしゃっていた、「多様性って最強!個性って大事」という言葉が印象的でした。
講演の内容は、先生の著書『これからの時代を生き抜くための生物学入門』(辰巳出版)に基づいておりますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。

講演の後には、参加した学生(4名)からの質問タイム!

まずは、名古屋国際中学校・高等学校 中学2年生の松雪さん
松雪さん:「比較的新しい種の人間が生態系を牛耳っている。生き物自体や生き物の生息する環境を維持するために私たち人間がしないといけないことは?」

五箇先生:「本来人間は脆弱だが、文明社会を築き、農業や狩猟採集によって食料を安定確保できるようになり、化石燃料を物質生産とエネルギーに充当することで膨大な数の人口を維持している。現在は、自然界からの資源搾取の度合いが行き過ぎてしまっている。かつての日本人は、里山で、人間が利用できる範囲内で生活するなど究極の自然共生社会を作ってきた民族。そういった概念を現代社会に適合させ、不必要に過剰に資源やエネルギーを消費するのではなく、地域で消費・循環できる資源およびエネルギーの地産地消を行い、自立した地域社会どうしが連携した国家を構築する。日本が自立型持続社会のリーダーシップをとることで、世界の地域や国家も、それぞれの地域固有性を生かした持続型社会を構築し、お互いに支え合う健全なグローバリゼーションを達成する。これが理想のシナリオ。」

続いて、名古屋国際中学校・高等学校 中学2年生の松木さん
松木さん:「今南京虫(トコジラミ)が話題となっているが、コロナのようにパンデミックになってしまうのか?その対策として環境省でも何か行っているか?」

五箇先生:「このまま放っておいたら、確実に蔓延する。できる限り早期に発見して駆除していく必要があり。ただ、従来の家庭用の殺虫剤に対しては抵抗性を発達させているため、効果が低く、専門の駆除業者に依頼することが大事。そして、トコジラミは行政では対応が困難な虫。建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則で防除の対象となっていたり、旅館業法で必要な措置を講じるようにとされているが、事業者向けの内容で家庭向けではない。なので一般家庭や街中で仮に発見されても、通報や対処の義務がないため、潜伏的に広がってしまう恐れがある。トコジラミに対する知識を広く普及し、市民、自治体及び国のすべてのレベルで連携して駆除を図っていくことが求められる。」

3人目は、名古屋国際中学校・高等学校 高校1年生の服部さん
服部さん:「将来世代に生物と触れ合う機会を残すために、私たちにできることは?」

五箇先生:「里山や雑木林が放置され、第一次産業が衰退することで、若い人たちが地方に住んで自然に触れ合うライフスタイルが当たり前ではなくなってしまっている。自治体など行政のサポートの下、若い人たちが地方に住んで、生計を立て楽しく生きている社会をいかに作り維持していくかが大事。そういった社会が形成されると、人が集まってきて、里山が再生されるなど自然と触れ合う機会が生まれてくる。」

最後は、星城大学の川上さん。
川上さん:「観光分野ではオーバーツーリズムが問題になっているが、地域の経済を発展させないといけいないという面もあれば、人が来すぎてもいけないという面もある。エコツーリズムを考えるとき、人の制限をすべきか学びとして自然と触れ合う場を設けるべきか?」

五箇先生:「自然を維持するための費用を観光客に負担させるという政策も検討していかなくてはならない時代になっている。チベットやヒマラヤなどの貴重な山系では、登山には高額な費用がかかるためオーバーツーリズムが抑制されている。制限がある一方で自然は守られる。自然観光をみんなが楽しめるのは良いことだが、それを享受するにはそれなりの対価を支払う必要があることを当たり前に受け止めるリテラシーの向上が重要。」

ご質問いただいた皆さま、ありがとうございました。

今後もなごや環境大学では環境を知り考えることを意識した講座・イベントを企画していきます。

引き続き、なごや環境大学の情報をお見逃しなく!