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特集・なごやエコ最前線

子どもと大人がつくる持続可能な未来私たちが今できることとは?

コロナ禍での暮らしが長期化するなかで、子どもを取り巻く状況も刻々と変化している。新聞などのメディアでは子どもに関する記事も見かけるが、その現状については、よく分からないことも多いのではないだろうか。

そこで今回は、特定非営利活動法人こどもNPO(以下、「こどもNPO」)を取材。こどもNPO理事長の根岸恵子さん(以下「根岸さん」)と、こどもNPO事務局長であり子ども食堂にも携わっている河村玲子さん(以下「河村さん」)にお話を伺った。

SDGs(持続可能な開発目標)における17の目標のうち「1 貧困をなくそう」「2 飢餓をゼロに」は、子どもの貧困にも大きく関わっている。このインタビューを通して、今できることはどんなことかを一緒に考えてみたい。

掲載日
2021-07-08
取材・文
松橋佳奈子
コロナ禍で始動した「こども特急便」

2020年4月の緊急事態宣言の発令により、一斉休園・休校になったことは記憶に新しいだろう。これが多方面に影響を及ぼし、大人だけでなく子どもも大変な状況に置かれることになった。

こうした状況を受けていち早くスタートしたのが、「こども特急便」だ。こどもNPOのスタッフの「子どもに関することが後回しになっているのではないか」という危機感から生まれた、自主事業である。

事業の主な内容は、生きることの生命線である食事面のサポートや、子どもから寄せられる困りごとを傾聴することなどだ。「心身の『いのち』を守ること」を最優先にしている。また、閉鎖的な環境のなかで起きやすいとされる虐待を防止するために、大人と子どもの双方に対して理解と啓発を促す取り組みも行っている。

コロナ禍では、行政などでもいろいろな政策を実施している。しかし、そのなかには「ひとり親世帯」や親の年収などの条件が付いていることも多い。こうした現状をふまえて、こども特急便では一切の条件を外して取り組みを行っている。

■セーフティーネットの「地網(じあみ)」をつくる

こども特急便などの取り組みについて、根岸さんは「私たちが取り組んでいるのは、セーフティーネットの『地網』のようなもの」「はざまの声をどうやって拾っていくのかを常に意識している」と語る。

たとえば、家にずっといて不安が大きくなった子どもから「家にいるのが限界だ」という連絡が届いたこともあった。はじめは子どもからのSOSだと思わずに話を聞いていると、実はSOSの声だったと後で分かることもある。子どもからのSOSは多種多様で、型にはまった対応をしているとSOSを見過ごしてしまうケースも多い。そこで、こどもNPOでは「まず、話を聞かせて」というスタンスで向き合っている。特にコロナ禍では、先入観を持たずに子どもと対話することの意味や可能性を再確認した。

2020年4月から2021年3月までの1年間で、こども特急便には「延べ84名(子ども78名、若者6名)の参加があった。取り組みを進めるなかで、地域で活動している人々や傾聴ボランティアとも連携。地域の住民からはたくさんの食料品や物資の寄付などもあり、社会的な役割としてのセーフティーネットや地域のネットワークの強化にもつながった。

想いや経験がつながっていく、こどもNPOの活動とは

こどもNPOは、こどもの社会参画を推進し、子どもたちと共に持続可能な社会をつくるために、2001年に発足した。活動のなかで大切にしているのは、「子どものために」ではなく「子どもたちと一緒」という考え方である。ホームページや出版物などには「こども×おとな=未来」という言葉が掲げられている。

こうした理念をもとに、こどもNPOではさまざまな事業を行っている。その主なものとしては、学習サポート事業や子どもの地域拠点づくり、Teen’sCafe(中高生の社会参画活動)、子どものまち、子どもの権利条約学習会、子育ち・子育て支援などがある。子どもの地域拠点としては、こども食堂やプレーパーク(冒険遊び場)なども含まれており、子どもが主役になる場づくりに取り組んでいる。

活動を続けるなかで見えてきたのは「一定の枠組みに入らない子どもたちのほうが、大変な状況に陥っていることが多い」ということ。一見すると何も問題がなさそうに感じられても、実は言葉にできないほどの困難を抱えている子どももいる。

「子どもの貧困」という言葉を昨今よく聞くようになったが、貧困というのは経済的な意味だけではない。たとえば「家庭内に居場所がない」など、その背景には複雑な家庭事情があるケースも多い。こども特急便で対象者の条件を定めていないのは、こうした課題と常に向き合ってきたからでもある。

■活動に関わるようになったきっかけ

では、河村さんや根岸さんは、どんな想いや経緯から、こどもNPOの活動に関わるようになったのだろうか。

河村さんは、もともとは子どもNPOの活動に参加するひとりのお母さんだった。当時のNPOスタッフが話してくれた「子ども観」に深く共感したことが、この道に入る大きなきっかけになったのだとか。自身の子育てを振り返ってみると、先輩ママにはよく助けてもらった。本やインターネットなどではいろんな情報が手に入るが、地域のネットワークで得られた情報は何よりも役に立った。「自分が子育てで経験したことを、次の世代の人たちにも伝えていきたい」と思いながら、活動に関わり始めて約15年になる。

それに対して根岸さんは、大学で児童心理学を学んだり、自助グループのサポーターなどを務めたりするなかで、困難な状況に置かれた子どもたちに接してきた。親子で受け継がれている「負の連鎖」も目の当たりにした。

でも、その責任を親に押し付けるのは何か違うのではないだろうか。そこには、地域コミュニティの欠如を強く感じた。さらに「子どもの柔らかな感性にアプローチすることで、負の連鎖を断ち切れないか」と考えるようになった。そして、中間支援組織の職員として働いていた際に、こどもNPOに出会う。河村さんと同じく、団体のミッションに共感してスタッフとなった。

「声にならない声」をどのように拾っていくのか

子どもの基本的人権を定めた「国連子どもの権利条約」では、子どもにひとりの人間としての人権を認めるとともに、子どもならでは権利も定められている。しかし、現在の日本では、本来当たり前であることが当たり前ではなくなっている状況がある。実際に、日本は国連から数回にわたり勧告を受けている。

そうはいっても「子どもたちの声にならない声を、どのように拾っていくのか」はとても難しい課題である。しかし、信頼できる大人が身近にいるだけで、その状況は大きく変わってくる。根岸さんは「子どもは、信頼できる大人には自分の話をすることが多い」と語る。そこで、こどもNPOでは、子どもに対するアプローチに加えて「信頼できる大人」を増やす取り組みやネットワークづくりなど、多角的な視点から事業を行っている。

■「子どもの声が届くまちづくり」

コロナ禍では、子どもの声がますます届きづらくなる状況があった。これを受けて、困難な状況に置かれた子どもの現状を地域と連携して見つけるための仕組みづくりを進めている。2020年4月~2021年3月には自主事業として「子どもの声が届くまちづくり」を実施。この事業には、延べ451名の参加があった。

主な内容は、子どもや子育て世代が抱えるニーズや困りごとを把握し、必要に応じて地域の資源や食・物資を提供することで応援していくことだ。こどもNPOがコーディネート役をつとめ、地域と関係機関と連携して、情報の共有・調整を行う。もちろん、「こども特急便」として、子どもたちに直接アプローチする場合もある。

根岸さんは「みんなが大変な状況だったからこそ、ネットワークがスピーディーに構築できた」と当時を振り返る。

■傾聴することが、何よりも大切

インタビューでは、子どもとの接し方について「傾聴する」「対話する」という言葉が繰り返し登場した。「これが徹底できれば、何があっても動じないし、気持ちを溶きほぐすことができるよね」と、根岸さんと河村さんはお互いに顔を見合わせながら、力強くうなずく。

たとえば、乱暴な言葉を使う子どももいるが、内心では「ただ挨拶をしたかっただけ」「それしか言い方が分からなかった」という場合も多いのだとか。そんな時に頭ごなしに注意するのではなくて「本当は〇〇って言いたかったんだよね」と穏やかに聞き返してみる。こうしたやりとりの繰り返しによって、子どもとの関係性が構築されていく。「大人は信頼できないもの」と思いながら育ってきた子どもが「こんな大人がいるなら、ほかの大人も信頼できるかもしれない」と考え直すケースもあるという。

「自分ごと」として考えて、行動してみよう

お二人のお話を伺うなかで、現場と向き合ってニーズを把握することや、さまざまな主体と連携することの大切さを強く感じた。そして、まずは「自分ごと」として考えることから、すべては始まっていくのだろう。私自身も、この機会に自分に何ができるのかを考えてみたい。

こどもNPOでは、「子どもに関わることに関心がある」「何か始めてみたい」という人に向けて、オンラインでの講座やイベントなども今後予定しているとのこと。興味のある人は、こどもNPOのホームページなどを定期的に確認してみてはいかがだろうか。