動かそまい!NAGOYA

特集・なごやエコ最前線

養殖場を見学しウナギについて理解を深める〜共育講座「味わって知る わたしたちの海」で西尾市一色町の生産現場を訪ねる〜

日本人が大好きなウナギ。江戸時代に調理法がうまれ、今に続くウナギの蒲焼きは、和食を代表する料理の一つであり、我が国の食文化の一翼を担ってきた。その馴染みの深い魚が近年、漁獲量の激減に見舞われ、資源の枯渇が懸念されている。

今年6月、IUCN(国際自然保護連合)が更改したレッドリスト(絶滅の恐れのある野生生物のリスト)の最新版に二ホンウナギが掲載され、世間の関心が高まった。国内ではすでに昨年2月、環境省による日本版のレッドリストで「絶滅の恐れのある種」に指定されている。

なぜウナギは減ってしまったのか。謎の多い生態は、どこまで解明されたのか。わたしたちは、これからもウナギを食べ続けることができるのか。多くの疑問を抱えるウナギを産地で味わい、関係者の話を聞き、養殖場を見学する学習イベントが開かれたので、その内容をレポートする。

掲載日
2014-08-22
取材・文
新美 貴資
天然の資源に依存するウナギの養殖

なごや環境大学の共育講座「味わって知る わたしたちの海」(企画運営:山崎川グリーンマップ、伊勢・三河湾流域ネットワーク)の今年度第3回が7月3日、愛知県西尾市一色町で開かれた。地元の伊勢・三河湾で獲れる旬の魚介類を調理し、味わうことを通して、海の環境や地域の漁業について学ぶこの講座。今回は、「西尾市一色のウナギ養殖の実態見学と本場一色のウナギを味わう!」をテーマにした現地学習で、名古屋市在住の一般市民ら38名が受講。一色うなぎ漁協、県水産試験場内水面漁業研究所の協力を得て、実施された。

全国のなかでもウナギの養殖が盛んな一色町。養鰻は昔から町にとって重要な基幹産業となっている。講座に参加した一行がまず向かったのは、一色町内にある「うなぎ割烹 みかわ三水亭」。大手ウナギ問屋が経営するウナギ料理専門店で、地元産の養殖ウナギを使った丼や「ひつまぶし」などが味わえる。参加者は、炭火で香ばしく焼きあげられたウナギに満足の様子で、全員が笑顔で丼に舌鼓をうった。

現在、国内で流通・消費されているウナギのほとんどは養殖物。河川の河口などで漁獲された稚魚のシラスウナギを養殖池に入れ、成魚にまで育てたもので、天然の資源に依存している。養鰻は国内だけでなく、中国や台湾、韓国などでも行われており、活きたウナギだけでなく、現地で蒲焼きに加工された商品も、一大消費国である日本に向けて大量に生産されている。今年は好漁にめぐまれたものの、近年はシラスウナギの深刻な不漁が各国で続いており、取引価格はうなぎのぼり。二ホンウナギの激減によって、最近では東南アジアやアフリカなどから外来種を輸入する動きもあり、ウナギをめぐる状況は複雑化している。

河口部の砂底域を保全するべき

続いて参加者が訪れたのは、町内にある一色うなぎ漁協。ここで内水面漁業研究所の主任研究員・冨山実さん、同漁協の参事・山本浩二さんが、ウナギの生態や資源の問題、地元養鰻業が歩んだ歴史などを説明した。

冨山さんは、ウナギ類がIUCNのレッドリストに掲載された内容について解説。リストの分類は「絶滅」、「野生絶滅」、「絶滅危惧1A類(ごく近い将来、野生で絶滅する危険性が極めて高い)」、「絶滅危惧1B類(近い将来、野生で絶滅する危険性が高い)」、「絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大)」、「準絶滅危惧(生息条件の変化によっては絶滅危惧に)」、「軽度懸念(上記のいずれにもあてはまらない)」、「情報不足」の8つに分かれ、二ホンウナギがこのうちの「絶滅危惧1B類」に指定されたことについて、「かなりの危機に瀕している」と感想を述べた。

世界で19種が確認されているウナギ類だが、このうち東アジアに生息する二ホンウナギは、フィリピン沖まで親ウナギがくだり、産卵するとされている。ふ化した仔魚は、産卵場から海流にのって北上し、プレレプトケファルス、レプトケファルスと呼ばれる幼魚の段階をへて、5〜6センチのシラスウナギにまで成長。日本においては、九州から関東までに来遊し、河川や沿岸でさらにクロコ、黄ウナギとなって5〜10年を過ごし、銀ウナギへと変わり、再び産卵場に向けて旅立つという。

愛知のウナギの養殖生産量は、全国でも常に上位にある。鹿児島、宮崎でも養鰻は盛んで、この3県で日本の養殖ウナギの8割以上が生産されている。全国の養殖ウナギ生産量は、平成元年の3万9704トンがピーク。愛知は昭和63年から平成4年まで1万2000トンを超えていた。平成25年の全国の生産量は1万4200トンで、愛知は3140トン。鹿児島の5746トンに次ぐ2番目となっている。

昭和40年代頃から急減し、近年、獲れなくなってきているシラスウナギの不漁の原因について、冨山さんはこれまでの調査などから以下の3点をあげた。

① 海洋環境の変動(産卵場の南下や地球温暖化などの影響による海流の変化などによって日本沿岸に回遊してくるシラスウナギが変動)
② 棲息環境の悪化(河川改修によりコンクリートで囲まれた河川などが増え、砂底や石底が少なくなりウナギが棲みにくい環境となっている)
③ 乱獲による資源減少(漁業や魚釣りなどによってシラスウナギや親ウナギを捕りすぎたことによって天然資源が減少)

ウナギの漁獲量の回復に向けて、冨山さんが強調したのが、河口部の砂底域を守ることの大切さだ。シラスウナギは、砂底にもぐって棲息することから、「着岸後のウナギの生育場として重要であり、保全すべき」と訴えた。また研究所が取り組んでいる試験研究にも触れ、シラスウナギを天然に依存せず確保するため、国の研究所と並行して、人工種苗生産技術の開発に取り組んでいることなどを紹介した。

持続的な利用について考える

続いて山本さんが、100年以上の歴史をもつ一色町の養鰻業について説明。露地池からビニールハウスでおおう養殖方式への変遷、餌の成分や配合の他、飼育方法などの進化の過程などをくわしく解説した。途中でウナギに餌を与える映像を流し、たくさんの魚体が配合飼料に群がる場面があらわれると、参加者からは驚きの声があがった。

同漁協では、平成元年より品質検査室を立ち上げて生産履歴の確認や医薬品の残留検査を行っており、出荷の際には安全・安心に万全を期していることを強調。山本さんは、町内にある養殖池が、自然の河川よりウナギの生育に適した水をひいて使っていることに加え、池が地区内に密集していることから、技術の共有ができる点を一色の養鰻業の特徴にあげ、「日本一の技術をもっている」と地元ブランドのウナギをアピールした。またウナギの完全養殖には成功したものの、量産化技術はまだ確立されていない、水産総合研究センターによる人工種苗生産技術の開発の現状についても紹介し、今後の進展に期待をあらわした。

冬から春の間に漁獲され養殖場に放たれた稚魚は、半年ほどで成魚になり、出荷される。今年のウナギの生育状況について山本さんは、「一色では8月の需要期に食べられるウナギの生産を使命としている。今期はシラスウナギが好漁だったことから、よいウナギを届けることができると思う」と話した。また消費者の関心を集めている価格の動向については、「いつ安くなるかと聞かれるが、12〜1月に池に入れたときのシラスウナギの価格は高かったので、安いウナギがでるのは9月以降になる。もうちょっと待っていただくとよいのでは」などと述べた。

この後、参加者は同漁協が運営する養殖場へ移動。池の水温が約30度に保たれ、室温が40度を超えるハウスのなかに入り、担当職員の説明を聞きながら、養鰻が行われている現場の様子を肌で感じた。漁協では、230坪〜80坪の広さの池を32面所有しており、現在約38万匹のウナギを育てている。

親しみのある魚でありながら、その生態には未解明な部分がたくさんあり、多くが謎に包まれているウナギ。産地を訪れ、味わい、見聞を広めることによって、絶滅の危機にひんしている資源の問題や、地域の伝統産業である養鰻についての理解は深まったはず。大切な食資源であるウナギを枯渇させることなく、これからも味わっていくために、一人ひとりがどう行動していくべきか。今回学んだ貴重な体験は、ウナギを通して社会における持続的な利用について考える、ひとつのきっかけにもなったのではないか。

バックナンバー