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特集・なごやエコ最前線

ESDユネスコ世界会議に向けて動くフェアトレードタウン運動

2009年、このサイトのバックナンバーで、名古屋のフェアトレードタウンに向けての動きを紹介した。2010年のCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を経て、2014年11月には名古屋国際会議場でESDユネスコ 世界会議が開催される。ESDとは、「持続可能な開発のための教育」と訳される。この世界会議の開催前にフェアトレードタウンに認定されることを目指し、フェアトレード活動の輪が急速に広がっている。

「名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会(略称:なふたうん)」「フェアトレードタウンなごや推進委員会」「中部フェアトレード振興協会」「NPO法人 アジア日本相互交流センター(ICAN)」の主立った4つの団体が軸となり、2013年1月には「フェアトレード名古屋ネットワーク」が設立され、個々の活動もまとまった大きな流れで見ることができるようになった。この秋、日本で2番目のフェアトレードタウンへ、カウントダウンが始まっている。

掲載日
2014-06-20
取材・文
浜口 美穂
ワークショップ中心の「名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会」

「名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会(略称:なふたうん)」が活動を始めたのは2009年6月。代表は、名古屋初のフェアトレードショップ「風”s」(ふ〜ず)* の店主であり、情報発信のための市民団体「GAIAの会」の代表でもある土井ゆきこさんだ。フェアトレードタウンを目指し、ワークショップを中心にコツコツ型の活動を続けている。なごや環境大学でも毎年前期・後期と、3回連続の国際理解教育講座を開講するほか、チョコレートをテーマに生産国の貧困や児童労働の問題を参加者と一緒に考えるワークショップ「チョコレートの来た道」は、これまでに40回開催されている。

第40回目のワークショップは2014年5月25日にエコパルなごやで開催された。ファシリテーターは、第1回目のワークショップに親子で参加した斎藤しほさん。22人の参加者は、大人も子どもも混ざり合って4つのグループに分かれ、カカオからチョコレートができるまでの行程の写真を並べ替えたり、カカオ生産国とチョコレート消費国の違いを話し合ったりした。また、児童労働の写真を食い入るように眺め、感想を話し合うことも。斎藤さんがCOP10のときに親子で作ったというフェアトレードの紙芝居を読む場面もあった。最後のふりかえりのアンケートには、「チョコレートという身近なものを通じて、グローバルな視点で地球の抱える問題に触れられ、とても良かった。今日のワークショップは知ることの入り口であって、もっとこれから興味を持って学び、自分の選択した行動を取る必要性を強く感じました」(40代)、「世界にこんなに子どもが働いている国があるってしらなくて、勉強になった。これからフェアトレードマークのついたものを買う」(10歳)など、気付きと自らの行動への意欲が書かれていた。

なふたうんでは、フェアトレード商品を店舗の一角に置いてくれる店をコツコツ開拓し、それをマップにして情報発信にも努めてきた。行政への働きかけも意識して行い、愛知県庁の県職員生活協同組合の売店には、2009年からフェアトレード商品コーナーがある。

*風”s
1996年にオープン。店と同時に、フェアトレード情報を発信、普及しようと市民団体「GAIAの会」も設立された。
イベント中心の「フェアトレードタウンなごや推進委員会」

一方、イベントを中心に発信力を発揮しているのが「フェアトレードタウンなごや推進委員会」。テレビ塔1階にあるフェアトレード&エシカル・ファッション* の店「エシカル・ペネロープTV TOWER」代表の原田さとみさんを世話人とする若者中心の団体だ。なふたうんと同じく、名古屋市をフェアトレードタウンにすることを目標に、2009年12月に設立された。

メインは、毎年5月第2土曜日に世界各地で開催される「世界フェアトレード・デー」のイベント。5回目となる今年は、テレビ塔下から久屋大通公園(もちの木広場)を会場に、「地域と世界を、そして今と未来をつなぐ、地球とのフェアトレード」をテーマとして、トークやライブ、フェアトレード・ファッションショーが繰り広げられた。

来場者3万人、運営スタッフは総勢200人という大規模なイベント。スポンサーを獲得したり、物品を提供してくれる企業と協力したり、地域でお金を回し、人を巻き込む大きな機会となっている。「人を巻き込むということがフェアトレードタウン化には大事なんです。いろんな方々に関わっていただき、一緒に学び感じて、楽しさも共有する。時には迷惑をかけるかもしれない。でも大事なのは、迷惑をかけた人には恩返しをし、その後も関係をつなげるということ。地域でそういう丁寧な人間関係をつくることが、地域の未来を築くのではないかな」と、推進委員会世話人の原田さんは話す。

「まずは私たちが輝き、私たちが楽しく国際協力・地域貢献に取り組んでいる姿を見ていただく。そうすると自然に協力者や仲間が増える。それは大きな一歩だと思います。今回のテーマはビック・テント・アプローチなんです。大きなテントの中にみんなを招き入れ、フェアトレードの軸の下で、みんなそれぞれのアプローチで平和な未来を目指して活動する。そんなムーブメントが名古屋から始まっています」

イベントのステージプログラム「地球のゆかいな仲間たちトーク」は、まさにその体現だ。名古屋でいきいきと活動する7人と、文化人類学者でナマケモノ倶楽部世話人の辻信一さん、大村愛知県知事が同じステージに並び、「地球とのフェアとは?」についてトークを展開した。

*エシカル・ファッション
環境に負担をかけないオーガニック素材や自然素材、リサイクル素材などを使用し、フェアトレードであり、地域の伝統技術・製法を継承しながらクリエイトされる、良心を大事にしたファッションのこと。(エシカル・ペネロープ ウェブサイトより)
それぞれの個性が生きる「フェアトレード名古屋ネットワーク」

フェアトレードタウンは、2014年5月末現在、世界中に1400以上あるが、日本のフェアトレードタウンは、2011年に認定された熊本市のみ。認定は、各国のフェアトレード認定機関が行い、日本では「(一社)フェアトレードタウン・ジャパン」(2014年5月現在の名称)が担っている。認定されるには、以下の6つの条件を満たすことが必要だ。

  1. フェアトレードタウン運動の推進団体が発足している。
  2. 地元でのフェアトレードの認知度が高まっている。
  3. 地元の企業や団体・学校・市民組織がフェアトレードに賛同している。
  4. 地域の経済や社会の活力が増し、絆が強まるよう、地産地消やまちづくり、地域活動、障がい者支援などのコミュニティ活動と連携している。
  5. フェアトレード産品が買える地域の店(商業施設)が増えている。
  6. 地元議会による決議と首長による意思表明が行われている。

COP10を契機に活動が本格化した名古屋のフェアトレードタウン運動。前出の2つの団体が条件をクリアするため、学校、企業、自治体も巻き込み、着々と人の輪を広げてきた。そしてESDユネスコ世界会議に焦点を合わせた2013年1月、目的を同じくする両団体が手を組み、この地域で実績のある「中部フェアトレード振興協会」「NPO法人 アジア日本相互交流センター(ICAN)」にも声を掛けて、「フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)」が立ち上がった。代表は土井さん、副代表は各団体から原田さん、杉本てる子さん、吉田文(あや)さんが務めている。

中部フェアトレード振興協会もICANも、かつてフェアトレードマップを作ったことがあり、それぞれに人脈や情報を持っている。振興協会の拠点であるフェアトレードショップ「オゾン」では、2001年の開店から、対面販売で丁寧な関係づくりに基づく情報発信を行ってきた。「お店に来てもらい、顔の見える関係の中で、劣悪な環境に置かれている生産者の実情を知らせたい。そしてフェアトレードで変えられることを知ってほしい」と、店長の杉本てる子さんは話す。なふたうんがコツコツワークショップ型、推進委員会が楽しいイベント型なら、オゾンはじっくり対面型と言えるだろう。また、ICANはフィリピンの危機的状況にある子どもたちへの支援に取り組むNPO団体で、独自の広いネットワークを持っている。

FTNNができたことで、条件1は整った。4つの団体の個性を認め合いながら、各団体の活動にFTNNとして共催したり、後援して大きなムーブメントをつくっている。また、2013年7月からは、名古屋テレビ塔の下で毎月第1日曜日に「フェアトレード・ツキイチ・マルシェ」も主催。店を持たずにフェアトレード活動をしている人たちの発信の場であり、人がつながる場になっている。さらに情報ツールとしてフリーペーパー「惣 sou」を発行し、6月中にはフェアトレードを分かりやすく紹介する冊子も完成する予定だ。

そして、5月にはフェアトレード認証商品を2品以上販売する店を集めた市内のマップが完成。これは、条件5を達成するためのもので、227万人都市である名古屋の場合は人口比により227店舗が必要だが、マップには253店舗を記載することができた。これまでコツコツと店を開拓し、マップに表現してきた運動があったからこそ、今、一気にここまでたどり着いたのだ。

こうして、残る条件は6のみ。あと一息である。

フェアトレードタウンは出発点

FTNNの代表、土井さんは今、大きな変化の波を感じているという。

「この5年間の運動の積み重ねの成果です。それが形として見えてきた。FTNNは、すごくいい形態だと思っています。それぞれの団体の特徴を生かしてそれぞれに活動するけれど、連携をとり、全体から見たらそれが一つになってフェアトレードを推進していく形ですね。

フェアトレードタウンになるのはあくまで出発点だという気持ちでやっています。消費者運動もフェアトレードにつながるし、生物多様性のこともフェアトレードにつながるし、児童労働など人権を考えるきっかけにもなります。フェアトレードタウンをスタートにして、自然と世界の人々、地域の人々がつながり、ともに生きられる名古屋になったらいいと思います」

秋に向けて、また大きな変化があることだろう。フェアトレードタウン認定のニュースを楽しみに待ちたい。

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