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特集・なごやエコ最前線

組手什でおかげまわし〜組手がつなぐ材と地域と思いやり〜

最近、環境イベントなどでよく見かける組み立て棚「組手什(くでじゅう)」。棒状の木材に等間隔で切り込みが入っていて、それをはめ合わせることで自由自在に棚や間仕切り、椅子などを作ることができる。

この馴染みがない組手什という言葉の意味を聞いてみると、「組手(くで)」とは障子の桟など建具を組み立てるときの切り込み(業界用語では、切り欠き)のこと、「什(じゅう)」とは什器のことで、身の回りの器具のことを表すという。つまり、組手什は、組手を使った身の回りの器具のことだ。双方の切り込みをはめ合わせて組み立てることで、木材の欠点とされる反り、ねじれ、曲がりが補正され、丈夫な構造になる。

さらに、この言葉にはもう一つの意味合いも込めている。「什」は、「人」と「十」が組み合わさった文字。つまり、「人々が交わり、長所を活かし、短所を補う」という意味があるようだ。

組手什が何を目指し、何をつなげてきたのか、組手什の旅を追ってみた。

掲載日
2014-02-21
取材・文
浜口 美穂
「もったいない」から生まれた組手什

組手什の誕生は「あいちの木で家をつくる会」の活動に端を発する。同会は、地域で育った木を家づくりや暮らしに取り入れることにより、資源やエネルギー消費の少ない循環型住まい社会の実現を目指して活動している。山の恵みである丸太をまるごと全部使いたいが、どうしても周縁部(胴縁*)が残ってもったいない。何かに使えないかと試行錯誤していたところ、同会のメンバーで、あいち節木工舎(ふしぎこうしゃ)の都築宏行さん(建具職人)が組手をはめて組み立てる試作品を作った。それが組手什の原型だ。

細い間伐材や端材でも余すことなく利用でき、組手をはめ合わせるだけなので、子どもからお年寄りまで誰でも自分の手で組み立てられ、のこぎりで自由に長さを切れば、棚や机、椅子など様々なアイデア作品が誕生する。部屋のスペースを最大限に活用するにはもってこいの部材。しかも、必要でなくなれば、解体してまた別の活用をすればいい。「誰でも」「どこでも」「自由に」「簡単に」が組手什の最大の特徴なのだ。

*胴縁
周縁部から切り出した最小角材の用途を表す建築資材名。
木の駅プロジェクトとの連携

組手什の本格的なデビューは、2008年12月。「あいちの木で家をつくる会」などが入る共同事務所「伊勢三河サロン」(中村区那古野)の改装に使われた。もちろん組手什の材料は、三河の木材だ。古い鉄筋コンクリートの部屋の中が杉の香りで満たされた。

その伊勢三河サロンに同じく事務所を構えていたのが、「矢作川水系森林ボランティア協議会(以下、矢森協)」。ちょうどその頃、矢森協は、以前このサイトでも紹介した「木の駅プロジェクト」を推し進めていた(関連記事)。間伐したまま山に放置されている材を木の駅(土場)まで運べば、1トンで6千円の地域通貨が得られるという仕組みだ。6千円のうち半分の3千円は寄付金や寄付材の売り上げ、補助金などで補填しているのが現状で、その寄付金に組手什の売り上げの一部を回そうという計画が持ち上がった。まちの人が組手什を買うことで、山の恵み「おかげ」をいただくだけではなく、山の保全活動を支援することにもなる。まちと山間地をつなげる活動でもあるのだ。

木の駅プロジェクトと組手什の連携は、木の駅プロジェクトを全国2番目に始めた鳥取県智頭町で最初に始まった。ここでは、木の駅に運び込まれた材で組手什を作り(外注)、販売している(取り扱いは、NPO法人「賀露おやじの会」)。

そして、組手什とこの仕組みを全国に広めていきたいと、2009年6月に「組手什おかげまわし東海」が立ち上がった。同会では、これまで、豊田市旭町の旭木の駅プロジェクトと、新城市引地の秋葉道木の駅プロジェクトの設立時に売り上げの5%を寄付している。木の駅プロジェクトはここ数年で全国に広がり、40カ所ほどになろうとしている。組手什での支援は現在、使い途を決めずに売り上げの一部を積み立てている状況だという。

使い回しながら情報発信

2010年、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催された。同時開催された生物多様性交流フェアでは、伊勢・三河湾流域で活動する様々な団体が組手什を使って展示を行ったり、(社)国土緑化推進機構のブースの一部で組手什の組み立てワークショップを実施した。COP10終了後、ここで使った組手什は、12月に東京ビッグサイトで開催されたエコプロダクツ2010の国土緑化推進機構の「森林(もり)からはじめるエコライフ展」ブースや、なごや東山の森に同年9月に建てられた「里山の家」の展示棚として使い回されている。組手什で情報発信しながら、山とそのおかげで暮らすまちの人たちをつなげ続けているのだ。

震災被災地で組手什が大活躍

2011年3月、東日本大震災が起きた。被災地で組手什を活かそうということになり、まずは国土緑化推進機構の緑の募金支援活動の一環として、5月4日(みどりの日)のイベントに合わせ、組手什おかげまわし東海の代表・長坂洋さんとあいちの木で家をつくる会の事務局長・渡辺径さんが、組手什をハイエースに積み込み、名古屋から宮城県気仙沼市まで10時間かけて運んだ。この時に運んだ鳥取県智頭町の組手什4千本と愛知県の2千本は、2カ所の避難所とボランティア活動の拠点となっていたRQ市民災害救援センターに持ち込まれ、間仕切り兼収納棚や支援物資を分ける棚などに使われた。できあがりの棚を寄付するのではなく、利用者自らがみんなでわいわい話しながら組み立てることで、集団生活の潤滑油になり、自分たちの利用しやすい棚が完成。利用者からは「場所を選ばず簡単に組み立てられ使いやすい」「木の香りが心に安らぎを与えてくれる」と喜びの声が上がったという。これが組手什の被災地支援の始まりである。

同時に、現地の木を使って組手什を作る活動を呼びかけたところ、宮城県の栗駒木材(取り扱いは、日本の森バイオマスネットワーク)と登米森林組合が手を挙げ、地産地消の組手什生産も始まった。

その後は、人から人へとネットワークをつくりながら支援先を広げ、地元産材の組手什と愛知・岐阜県産の組手什が、被災地を駆け巡った。長坂さんたちも2011年、2012年に各3回、宮城・岩手まで車を走らせている。岩手県住田町の仮設住宅では、炊飯ジャーや電子レンジが支給されていたが、棚がないため床に置かれていた。組手什ならそのサイズに合わせて自由自在の棚ができる。また、狭い仮設住宅の玄関には靴があふれていたため、長靴まで収納できる下駄箱を作った人もいた。その他、仮設診療所の薬品整理棚、復興市場の間仕切り兼収納棚、図書館の書棚、仮設公民館の棚、災害ボランティアセンターで洗浄した写真を干すのにも利用された。

山のおかげを回すため

組手什は、誰でも作れるようにと知的所有権を取っていない。端材を使うシステムとして全国に広めたいと考えているのだ。建具屋にはもともと組手を切る機械があるが、採算が合わないとやりたがらないため、木材や加工機械を扱う会社を経営する長坂さんは、独自に組手を切る機械(ラジアルソー)を設計し、つくってしまった。機械の貸し出しをしながら、組手什生産を広める計画だ。

組手什を作る機械の旅は2013年6月、岩手県住田町からスタートしたが、復興に忙しくそれどころではなかったため、すぐに栃木県佐野市へ。一緒に被災地支援に回っていた人のご縁だった。同地では、栃木県産材を使って2500本を生産。佐野市クリーンセンターで開催された「もったいないフェア」で木工教室に使われた。その時、参加者で作った本棚は、クリーンセンターに集まった古本を並べるために活用されている。

機械は、佐野市から神奈川県小田原市、滋賀県甲賀市へ転々と。甲賀市のグループは、木の駅プロジェクトを始めるにあたり、材の利用の一つとして検討しているそうだ。

組手什は口コミで徐々に広がり、個人のリピーターのほかにも、大阪のシェアハウスや名古屋のカフェなどでも使われている。また、名古屋市の南リサイクルプラザでは、組手什を使ったラック講座が年に3回開催され好評だが、まだまだ市民に知られていないのが現状だ。最近は、子どもたちに木の香りと手触りを感じてほしいと積み木にして販売も始めた。

様々な人が手を組んで誕生し、育ってきた組手什。山のおかげを回すため、人をつなげ、地域をつなげて組手什の旅は続いている。

*組手什の積み木「クデクデキューブ」。価格は2000円(税別)。販売元「長坂木材株式会社」。問い合わせは、名古屋市東区のコミュニティカフェ「夢茶や」(内チームクデクデ)

組手什取り扱い団体

東海地方 名古屋市   組手什おかげまわし東海

西日本  鳥取県智頭町 賀露おやじの会

東日本  宮城県栗駒市 日本の森バイオマスネットワーク

     宮城県登米市 登米町森林組合

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