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リユースびんのお酒で「めぐる」ものはびんだけじゃない!?〜Rマークびんに入った地酒「めぐる」プロジェクト〜

ちまたにあふれるペットボトルと缶容器。一方で、何度も繰り返し使える「リユースびん」は片隅に追いやられ、減少の一途をたどっている。リユースびんの中で8割弱を占めるのは、牛乳びん、一升びん、ビールびん。これらは、一回で砕いてしまう「ワンウェイびん」やペットボトル、缶に比べてCO2排出量やエネルギー消費量が少ない、環境にやさしい容器なのだ。

利便性追求の影で廃れていくリユースびんを何とか復活させたいと、狭いエリアで循環させる地域発の「Rびん」の取り組みも全国で見られるようになった。その中のひとつ、愛知県で循環するRびんの地酒「めぐる」プロジェクトを紹介しよう。どうやらめぐっているのは、びんだけじゃないようだ。

掲載日
2013-06-25
取材・文
浜口 美穂
肩身が狭いリユースびんの現状

まずは、リユースびん* の現状を、名古屋大学大学院環境学研究科特任助教の松野正太郎さんに伺った。「リユースびんは、全体的に見ると、ペットボトルに置き換わり、徐々に減ってきた」(右図参照)と語る松野さんは、リユースびんの研究で博士号を取得したという珍しい研究者だ。

「流通」「販売」「収集」の3つの面から、びんが減少した理由を見てみよう。

<流通>
びんが、軽くて丈夫なペットボトルに代わったことに加え、第三のビールやチューハイなどの新しく出てきた飲み物が最初からリユース容器に入っていなかったという2つの側面が考えられる。ビール、日本酒など伝統的な飲み物自体の需要が減っているのだ。

<販売>
昔は、酒類は酒屋で買って配達してもらっていた。配達の際に空びんも回収してもらい、びんが酒屋を通じて循環していたのだ。現在は、個人がスーパーや量販店で買って持ち帰るため、一方通行で出るばかりである。

<収集>
行政が資源の収集をするようになり、びんも缶もペットボトルも行政収集に出せば終わり。行政収集に出したものでも、リユースびんは選別して「びん商」** に引き取られ、再利用されるが、あるびん商によると、行政収集のものは蓋を取って排出されるので、口の部分が欠けやすく、結局、カレットになるものが多いとのことだ。

時代の流れとともに片隅に追いやられつつあるリユースびん。でもこのままでいいのだろうか。
「“お古”という言葉がありますが、本来、使えるものは使うということで、服もびんも循環していたんです。そこにお金が介在するようになった。リユースは経済的なところだけを見ると、使い捨てのモノに必ずしも優位にはならないが、それだけじゃないものがあるんです。また、リユースには適した規模があり、地域で循環させれば、それだけ環境にもやさしくなります」と、松野さんは話す。

*リユースびん
「リターナブルびん」「活きびん」とも呼ばれる。
** びん商
使用済みのリユースびんを回収し、洗浄して、酒類・飲料・調味料メーカーに販売する仕事を行う。
おかえりライスから誕生した地酒

環境にやさしいリユースびんを復活させようと、この地域でも、2006年にエキスポエコマネーを利用したリユースびんシステムを立ち上げたり、なごや環境大学「循環型社会推進チーム」(当時)の「リユースびんプロジェクト」で、大学やイベントを中心にリユースびんの販売・回収実験を行ってきた。そのリユースびんプロジェクトの有志により2010年に製品化したのが、Rびん* の地酒「めぐる」だ。

メンバーは、市内各地でリユース・リサイクルステーションを運営する中部リサイクル運動市民の会、びん商、前出の松野さん、環境活動をしている市民など。Rびんの普及のためにもっと具体的な動きができないかと考えていたとき、別のプロジェクトである「おかえりやさいプロジェクト」でつくった米(おかえりライス)が浮上した。市内の学校やスーパーの生ごみを活用した堆肥で育てた愛知の減農薬米「あいちのかおり」だ。「米があるから酒をつくってみようという軽いノリでやり始めて、えらい目にあった」と笑うメンバーの一人。でも楽しそうだ。

ご縁があった愛西市の水谷酒造におかえりライスを持ち込み、醸造を依頼。書類も交わさないまさに信頼関係の契約だ。水谷酒造は江戸時代末期から続く老舗の蔵元。木曽川の伏流水を使用し、米の旨味を活かした酒造りを行う。その5代目の水谷政夫さんは、「米があったらつくるのが酒屋。おかえりライスを広めるにあたって加工するのも大事だと思って引き受けました」と話す。「日本酒がただの商品としてだけでなく、世の中の役に立つ付加価値をもって普及するのはいいこと。私自身も“めぐる”を通じていろいろなところに参加するようになり、人のつながりが増えて、楽しく仕事をさせてもらっています」。

*Rびん
日本ガラスびん協会が認定している規格統一リユースびん。びんには識別のための「Rマーク」が付いている。
人がつながり思いがめぐる

2000リットルタンク1つ分の酒は、720mlのRびん1600本に詰められる。「めぐる」というネーミングもラベルのデザインも、みんなでアイデアを出し合った。

初年度は売り切れず、2年目はノルマを設けて各自のルートで売り切ったという。また、2年目からは、チェーン展開をする酒販店「酒のすぎた」がメンバーに加わったことで、店舗で「Rびん」の宣伝をしながら販売も行うようになった。

3年目の昨年は、飲食店を開拓し、数軒が扱ってくれるように。ラベルも一新し、酒蔵見学をしたり、「めぐる」の酒かすや米ぬかを使ったお菓子作り教室も実施するなど、新しい企画を展開した。蔵元の水谷さんも「めぐる」を通じて夢が広がる。

「みなさんにも酒造りを手伝ってもらったり、気軽に遊びに来てもらえるような蔵にしたい。お金を払えば酒は飲めるけど、みんなが関わって酒をつくる拠点にしたいんです。それも蔵のあり方のひとつかなと思っています」。

年を重ねるごとに、つくる人、売る人、飲む人、びんを返す人のつながりが増えていき、びんとともに「食べ物を大切にしたい」「資源を大切にしたい」「仲間と美味しい酒を飲みたい」という思いもめぐらせている。これも、松野さんが言う「リユースは経済的なところだけを見ると、使い捨てのモノに必ずしも優位にはならないが、それだけじゃないものがある」というもののひとつなのだろう。

新たなネットワークの動き

しかし、「めぐる」の課題は山積している。知名度がなく、小売店も「酒のすぎた」(名古屋市内に複数店舗展開)と名古屋市東区にある「みのや北村酒店」のみ。専用の回収箱もなく、回収しにくい。これは同時にRびんの課題でもある。

Rびんを含めたリユースびんをこれからどう普及していくか。地域単位の小さな普及活動はあるが、広がりがない。そこで、それらの活動を支援し、活動同士をつなげたり、新しく取り組む地域を増やしていきたいと、2011年9月に「びんリユース推進全国協議会」が設立された。そして、この地域でもびん商を中心に「東海地域びんリユース促進協議会」をつくる動きが生まれている。まずは地球環境基金の助成を受け、飲食店など限定された関係の中でびんリユースシステムをつくることを目的に、今年度、課題をあぶり出すアンケート・ヒアリング調査やシンポジウムを行う予定だ。

この動きについては、またの機会に紹介したい。リユースびんがつなげる人の輪に期待しながら……。

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