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特集・なごやエコ最前線

天ぷら廃油をバイオディーゼル燃料に

みなさんのご家庭では天ぷらを揚げた後の廃油はどう処理されているだろう。ちまたには固めてごみとして処分できる商品も販売されているし、炒め物などで使い切っている人もいるだろう。中には処理に困ってため込んでいる人もいるかもしれない。

そんな天ぷら油などの廃食用油をバイオディーゼル燃料(以下、BDF)にリサイクルし、軽油の代替燃料として活用する取り組みが各地で進んでいる。 BDFは植物由来のためCO2排出はゼロカウント。しかも使用した場合の排ガスもクリーンということで、資源循環・環境保全の観点で注目されているのだ。

名古屋市でも2009年6月にモデル事業としてスタート。家庭から廃食用油を回収し、リサイクルしたBDFを市バスやごみ収集車に活用している。その他、民間でコンソーシアムをつくりダイナミックに動き始めた事業についても紹介しよう。

掲載日
2012-12-22
取材・文
浜口 美穂
名古屋市の廃食用油リサイクル

名古屋市では資源循環とCO2削減に取り組むため、2008年頃から廃食用油のリサイクルシステムの導入を検討。2009年6月に、千種区のアピタ千代田橋店を回収の拠点とするモデル事業をスタートさせた。回収対象は、家庭で使用したサラダ油、なたね油などの植物性油である。そのリサイクルの輪は右図のように巡っている。

回収店舗は、2010年度に3区10店舗、2011年度に8区30店舗に拡大し、今年2012年度には全区72店舗に達している*。地域拡大の際は、回覧板で知らせたり、広報なごやに掲載。回収店舗ではチラシやポスターなどで広報に努め、少しずつ周知されるようになった結果、1店舗あたりの回収量も増えてきている。しかし、市バス2輛、ごみ収集車3台で年間に必要な5万リットルは、まだ家庭から回収した廃食用油だけではまかなえず、事業系の廃食用油で補っているという。

2012年10月から全区に広がった回収拠点。まだまだ市民に知られていないのが現状だ。市では広報に力を入れて1店舗あたりの回収量をさらに増やしたいと考えている。また、BDFの用途についても情報を収集し、今後の回収量増加に対応できる体制をつくりたい意向だ。

<年度別回収量>
2009年度  2,299リットル
2010年度  5,335リットル
2011年度  15,316リットル

国内最大規模のBDFリサイクルシステム

一方、民間でも次のような動きがある。2012年3月、中部地区の企業11社が参加して、国内最大規模のBDFリサイクルシステムを立ち上げたのだ。スーパー、飲食店、企業の社員食堂、高速道路のサービスエリア等から廃食用油を回収。回収は大手古紙回収業者が段ボール回収のついでに行い、BDF精製工場に運ぶ。リサイクルしたBDFは、運輸・建設会社などに販売するという仕組みである(右図参照)。11月末現在の参加企業は大小合わせて40〜50社に膨らみ、事業を展開している。

その主体となりBDFを製造・販売しているのが(株)ダイセキ環境ソリューションだ。同社は、「限られた資源を活かして使う」をモットーに資源リサイクル、産業廃棄物処理等を行う会社。中でも、オイルのリサイクルや精製については50年以上の実績があり、また自社に品質管理のための分析部門を持っているのが強みだ。水を使わない精製技術により品質の高いBDFが製造でき、廃水処理が不要なのでコストを低く抑えられるという。精製の副産物としてできるグリセリンも、同社のリサイクル全国ネットワークを活用して補助燃料にするなど、100%リサイクルを実現している。

コンソーシアムは、同社が呼びかけた。大きな枠組みをつくれば採算がとれ、安定・大量確保が可能。廃食用油を排出する企業は、食品リサイクル法対策、 CSR(企業の社会的責任)活動として、購入先はCO2削減(省エネ法対策)、CSR活動になる。廃食用油排出元、BDF製造、BDF購入先、それぞれにメリットがあると考えたのだ。

日本ガイシ(株)では、社員食堂で出た廃食用油をこのシステムでリサイクルし、BDFを自社のフォークリフトに活用している。また、兵庫県明石市では、給食センターで出る廃食用油の全量をリサイクルし、BDFをごみ収集車11台で活用している。このように、企業・行政内でリサイクルの輪が完結するところもある。

地産地消のBDFとして

ダイセキ環境ソリューションのBDF精製プラントは、東海市にある「バイオエナジーセンター」。製造処理能力は一日につき、廃食用油12キロリットルから BDF10キロリットルで、大型タンクローリー1台分だ。年間にすれば3000キロリットル。全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会によると、国内の BDF生産量は年間1万キロリットルなので、それから考えてもかなり大きなプラントであることが分かる。現在の稼働率は約3割。需給ともに開拓営業に力を入れているところだという。

一日の最大生産量10キロリットルのBDFを使用すると、約26,400キログラムのCO2を削減することになる。これは、一日で約1,900本のスギ人工林が吸収するCO2の量に相当するとか。同社の山本浩也常務は、「地産地消のBDFという付加価値をつけて、地域ぐるみで環境保全活動に取り組んでいきたい」と意気込みを語っている。また、小中学校の社会科見学や、すでに行っている大学生のインターンシップ受け入れにも意欲的。BDFの可能性は今後まだまだ広がりそうだ。

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