ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム

増やそう、エコショップ。応援しよう、買い物で。 〜エコのこだわり宣言店に注目!〜

取材・文 浜口 美穂
  • SDGs

名古屋市では、平成23年(2011)12月に、「低炭素都市なごや戦略実行計画」を策定した。ここで定めた温室効果ガス削減目標は1990年比で、2020年に25%削減することになっている。この高い目標に向け、名古屋市では、事業者対象に様々な省エネへの働きかけを行っている。
業態別に様々な省エネメニューを提示するなかで、小規模店舗には「エコジョブチャレンジメニュー」を用意し、「エコのこだわり宣言」を勧めている。エコのこだわりは、省エネだけでなく、「割り箸を使用していない」「地産地消」「レジ袋の削減」など多種多様。まだまだ消費者には知られていないが、独自のこだわりを持つエコな店がたくさんありそうだ。

事業所の省エネを支援

名古屋市では、平成14年度から「エコ事業所認定制度」を始めている。「環境に配慮した取り組み及び評価点」表にチェックを入れ、一定以上の点数を取れば、「エコ事業所」「優良エコ事業所」に認定される制度だ。環境に配慮した取り組みには、「省エネ・省資源」のほか、「廃棄物の発生抑制・リサイクル」、「グリーン購入」、「緑化」、「自動車利用」など12項目が挙げられている。優良エコ事業所になるには、高得点を取るほか、温室効果ガスの年間排出量が基準年度* の排出量よりも低下していることが条件となっている。

さらに、平成19年度〜21年度にかけては、業態別(19年度:店舗編、20年度:病院・老人ホーム・オフィスビル編、21年度:ホテル 文化・教育・スポーツ施設編)に「省エネ対策 虎の巻」を制作。特徴的なのは、実際に数十施設(店舗)のエネルギー使用状況を調査し、どこにどの程度の省エネの余地があるかを探り、省エネ対策メニューとして提示している点だ。「費用をかけずに実施できる対策」「費用をかけて実施する対策」に分け、空調・照明・給湯などそれぞれに細かく対策が掲載された手厚い手引き書になっている。

そして特筆すべきは、作って終わりではなく、これを実践につなげるために、「省エネアドバイザー」が虎の巻持参で事業者回りをしていることである。今年度からは、ごみの排出削減に携わってきた排出事業者指導員と統合し、13名の「事業者環境推進員」が、手分けして事業者の環境対策のアドバイスに回っている。さらに専門的知識を持つ「省エネ指導員」4名も設置し、主に大規模事業者を中心に省エネのアドバイスを行っているそうだ。

しかし、これらの支援の網からこぼれ落ちていたのが小規模店舗だった。

* 基準年度:平成17年度以降の任意の年度

手厚い省エネ対策の手引き書

小規模店舗には「エコのこだわり宣言」

平成21年度、今度は小規模店舗をターゲットに、もっと気軽に取り組める「エコジョブチャレンジメニュー」を制作した。右図の8つの省エネメニュー、それ以外の6つのエコジョブの中で「すでにやっている」「これならできる」というものを選び、さらにお店のエコ自慢を書いて応募すれば、「エコのこだわり宣言証」がもらえ、市のホームページでエコな店として公表される。

各店の「エコのこだわり」を見てみると、「不用な蛍光灯は消している」「エアコンの温度をこまめに調整している」「レジ袋を削減している」という一般的なものから、「靴の箱を廃棄せずにメーカーに返却している」という靴屋さん、「保冷剤を返却すれば1個2円で引き取り、リユースしている」というケーキ屋さん、「畳を作る際に出てくるイ草表の廃材を捨てずに、テーブル、マットや花びん敷きを作り、お客さんにサービスで提供している」という畳屋さんなど、業種ごとにエコな工夫があるのがおもしろい。

平成24年8月14日現在の宣言店の数は市内全域で255店舗。そのうち、緑区にある店が204店舗を占めている。実はこれには理由があるのだ。

省エネエコジョブ

緑区のエコへのこだわり

緑区は平成19年、他区に先駆けてレジ袋有料化のモデル地区になり、全市に有料化を広げる原動力となったところ。名前も「緑」区だけに、これまでもエコを意識した特色ある区づくりを行ってきている。

その緑区が、平成22年度の事業として取り組んだのが、「エコのこだわり宣言店」を増やすことだった。目標を200店舗に定め、これまでグリーンマップづくりで実績のある市民グループ「グリーンマップみどり」* に店の発掘調査を委託した。また、緑区独自の「エコのこだわり宣言店」のタペストリーやステッカーも制作し、宣言店に配布した。地元市民グループの地縁と足を使った発掘作戦は功を奏し、平成23年度末には目標の200店を突破したのだ。

さらに、グリーンマップみどりは、店の発掘と平行してエリア別の「エコマップ」づくりにも着手。店に宣言を勧めるだけでなく、広く区民に知らせ、他の事業者にも普及啓発する意図があった。「徳重」「有松」「鳴海」のエコマップでは、宣言店のこだわりをグリーンマップの手法を使ってアイコンで表示。ほかにも、史跡や公園などの見所を盛り込んで、徒歩や自転車でエコなまち歩きをしてもらうことをねらっている。

エコマップは、区役所・徳重支所や図書館などで入手できる。宣言店にとっても店を知ってもらえる大きなチャンスだ。市が進める「エコのこだわり宣言店」事業の課題は、なかなか広がらないこと。緑区の取り組みは参考になるに違いない。

* グリーンマップ及びグリーンマップみどり:平成16年度に緑生涯学習センターで開催されたグリーンマップづくりの講座を受講したメンバーが立ち上げたグループ。グリーンマップの手法を使ったまちづくりは、平成17年度から緑区の特色ある区づくり事業に位置づけられている。平成19年度には緑区まちづくり推進室と連携して、緑区を流れる扇川のグリーンマップ、平成21年度には市総務局交通政策室と連携して、緑区のエコ交通マップを制作している。

緑区独自の「エコのこだわり宣言店」タペストリーとステッカー
店の入口にステッカーを貼った宣言店
エコマップ
エコマップ

子ども記者が宣言店を取材

緑区がさらに宣言店のPRができないかと今年度に取り組んだのが、子ども記者による「みどりっちエコ新聞」づくり*。子どもたちがエコのこだわり宣言店を取材し、新聞をつくろうというものだ。エリアは、新住民が多くPR効果が期待できる徳重を選んだ。

夏休みの自由研究にもなるようにと、8月4日・5日に小学生を募集して実施した。集まったのは、地域の小学1年生から6年生までの17人(保護者9人)。講師はグリーンコンシューマー名古屋。商店の環境にやさしい取り組みを応援し、グリーンコンシューマーを増やそうと活動する市民グループだ。

4日は、買い物がエコにつながることを子どもたちに知ってもらおうと買い物ゲームを実施。「きゅうりのまとめ売りとバラ売り」「再生紙トイレットペーパーとパルプ100%トイレットペーパー」「LED電球と普通の電球」など7品目について、どちらを選ぶか子どもたちは頭を悩ませた。そのあと、翌日の取材の打ち合わせとお店の人へのあいさつの練習。最後に、会場となったユメリア徳重(緑区役所徳重支所等共同ビル***)の施設見学を行った。太陽光発電や地熱を利用した空調などエコアイテムの数々に、子どもも保護者も「ユメリアにはよく来てたけど、知らなかった」と驚いたようだった。

5日はいよいよ本番の取材と新聞づくり。午前中は、酷暑の中、2グループに分かれて、各3店舗を回り、そのエコのこだわりを取材した。午後からは3時間をかけて新聞づくり。高学年が中心となり、低学年もイラストを描くなど協力し、個性あふれる新聞ができあがった。

過密スケジュールの2日間にも関わらず、子どもたちには概ね好評だったようだ。アンケートには、「いろいろなお店がエコを心がけていたのが分かった」「エコがこんなにあると思わなかった」「これからもエコについて調べたい」などの感想が書かれていた。

新聞は、10月27日(土)に大高緑地で開催される緑区民まつりでお披露目。A3サイズに縮小したプリントが配布される予定とか。また、ユメリア徳重や区役所のホットスペースなどにも展示され、多くの区民の目にとまることだろう。

* みどりっち:緑区のマスコットキャラクターの名前。
** ユメリア徳重:緑区役所徳重支所のほか、地区会館、図書館なども入っている。最高ランクの環境性能を誇る施設。当サイトでも紹介。

買い物ゲーム「どっちを選ぶ?」。「きゅうりはまとめ売りの方がお得だけど、こんなにいっぱいあったら食べきれないかも」と、頭を悩ませる子どもたち
熱心にメモをとる子ども記者
「Rびん」(リユースびん)の説明を聞く子ども記者。カメラマンも子どもが担当
みんなで協力してエコ新聞づくり

みんなで協力してエコ新聞づくり
完成した新聞を手に「みどりっち」と一緒に記念撮影