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特集・なごやエコ最前線

つながる「人」と「ため池」のネットワーク Part3〜なごや生物多様性センターが誕生〜

ちょうど一年前、このサイトに「つながる『人』と『ため池』のネットワーク Part2」を掲載した。2008年度から2010年度まで、環境省の補助事業として行われた「名古屋ため池生き物いきいき計画事業」の成果を紹介。その最後は「新しい展開の形が見えてきたころ、このレポートのPart3を書いてみたい」で締めくくられていた。

ということで、今回は、その新しいステップを紹介したい。生物多様性の調査・保全並びに情報・交流の拠点「なごや生物多様性センター」が誕生したのだ。

掲載日
2011-12-15
取材・文
浜口 美穂
なごや生物多様性センターの役割

3年間実施された「名古屋ため池生き物いきいき計画事業」では、大まかに次の2つの成果を挙げた。

(1)大都市名古屋にも多様な生きものがいること、そして、開発による生息域の減少・悪化や外来種の侵入が進んでいて、早急に対策をとらないと多様性が失われてしまうことが分かった。
(2)市民、森づくり団体等のNPO、専門家、行政の強固なネットワークができた。

この成果をさらに推進するため、2011年度に入ってから、なごやの生物多様性の拠点づくりが始まった。これまでのため池調査の成果を引き継ぎつつ、対象を名古屋全域の生きものに広げ、「生物多様性2050なごや戦略」* を実現する拠点となるのが「なごや生物多様性センター」だ。

その役割は、
(1)生きものに関する情報を集め、発信する
・標本・写真などの収集と保管
・生きもの情報のデータベースの作成
(2)生きもの調査を市民と協働で実施する
・なごや生物多様性保全活動協議会(後述)の事務局として市民と協働で調査
・レッドリスト及びレッドデータブックの調査・作成
(3)連携・交流とネットワークづくりをすすめる
・生きものに関する情報を持つ大学、研究所等との相互協力
・調査・保全活動を実施する市民活動団体等に対する支援

ちょうど、2010年度で廃止されることになった不燃ごみの中継施設(天白中継所)があったため、場所はそこに決定。天白区の植田川沿いで、ため池調査でも連携した名城大学のすぐそば。結果的に日常的な植田川の生物調査と名城大学との連携が取りやすい恵まれた環境でもあった。予算は、環境省の補助事業費と名古屋市単費を合わせて確保し、2011年4月に「環境局環境企画課分室」を置いて本格的な体制づくりと施設改修に入った。

*生物多様性2050なごや戦略
2010年3月に策定。http://www.city.nagoya.jp/shisei/category/53-5-14-2-0-0-0-0-0-0.html
なごや生物多様性センターの運営体制

センターの運営体制は右図のとおり。

ため池調査の実施母体となった「名古屋ため池生物多様性保全協議会」を発展的に組織改編し、新たに「なごや生物多様性保全活動協議会」に。ため池から調査対象フィールドを広げるためだ。その事務局を生物多様性センターが担う。また、新たに、センターの運営に関する助言を行う「アドバイザリーボード」を設置した。有識者、教育機関、協議会、市民が入り、センターの羅針盤的役割を担う。

センターの正式発足は2011年9月2日。同時に、協議会のウェブサイト* も立ち上げ、情報発信を始めた。

*なごや生物多様性保全活動協議会ウェブサイト
http://www.bdnagoya.jp/
活動の主体はなごや生物多様性保全活動協議会

なごやの生物多様性を守り育てる活動の主体は「なごや生物多様性保全活動協議会」だ。センターの発足に先立ち、2011年5月15日に設立。ため池調査で協力関係にあった日本野鳥の会愛知県支部や名古屋昆虫同好会、なごやの森づくりパートナーシップ連絡会など31の団体と16名の個人、名古屋市で構成され(2011年7月現在)、プロジェクトごとに8つの部会を設けた。

「アライグマ対策部会」「ミシシッピアカミミガメ対策部会」「外来スイレン対策部会」は、各外来生物の調査・捕獲(駆除)活動を行う。センターの隣を流れる植田川では、月平均3日、カメのわなを仕掛けて捕獲。在来種はマーキングして川に返し、外来種は取り除いている。これを基に、外来生物防除モデルを策定する予定だ。

生物調査のほか、気象や水文などの環境調査を行っているのは「熱田神宮の生物多様性調査と外来生物対策部会」。1900年の歴史をもつ熱田神宮には、隔離された環境で進化してきた固有の生きものがいる可能性があるのだ。実際に、森林由来で名古屋にはほとんどいない貝も見つかっている。

「生きもの田んぼ」では、水田が広がる港区で農家の方の協力を得て2010年から農薬を使わずに稲づくりを行い、生きもの観察を行っている。「生きもの田んぼ」を始めたきっかけは、2009年まで環境局で進めていた市内の幼稚園・保育園におけるバケツ稲づくりで、子どもから「いくつバケツを並べたら、食べられるだけのお米ができるの?」という質問が出て、「子どもたちに本当の田んぼを見せなくてはいけない」と思ったから。2011年からは園児だけでなく、一般の人も田植えや生きもの観察、稲刈りに参加。田んぼには昆虫の専門家も来て、子どもたちが捕まえた虫の解説や、「農薬を使わないからクモがいる。クモが害虫を食べてくれるんだよ」という生きもののつながりの話も。収穫した餅米は、10月29日に開催された藤前干潟ふれあいデーの餅つきなどに使われた。

大根池の池干し

2011年度の池干しは、天白公園の中にある大根池(おおねいけ)で実施。3つの学区と接しているため、それらの地域団体を巻き込んだ実行委員会が組織され、事前調査も行われた。

本番の池干しは、11月3日。ギャラリーも含めると約1200人が訪れ、そのうち約600人が池に入って、ヘドロに足を取られながらも、泥んこになって生きもの探しを行った。

子どもたちは比較的足場がしっかりしたエリアで生きもの探し。ミズカマキリやヤゴを見つけて「おもしろい!」「もっとやりたい!」と元気いっぱい。地元中学の3年生は、大人と一緒に池の真ん中まで入り、ミシシッピアカミミガメ3匹を捕まえる大手柄。「いつもは外から池を見て、どんな生きものがいるのかなあと思っていたので、今日は中に入ってカメを見つけることができたのでよかった」と満足げだった。2009年の隼人池の池干しに兄とともに参加した緑区の小学6年生は、おもしろかったからと今回は一人でバスに乗ってやってきたとか。泥に足を入れたとたん「やっぱり気持ちいい〜」と頬をゆるませた。

天白公園には子どもたちの自由な冒険遊び場「てんぱくプレーパーク」* がある。午後からは、そのプレーリーダーが引率し、大根池の「中の島」を探検。弁天さんが祀(まつ)られていた祠(ほこら)跡の石段を発見したり、夢中になってカエルやザリガニ探しをした。

今回は水が抜けきらなかったため、不十分な池干しとなったが、それでも、モツゴやオイカワ、スジエビなど多くの在来種や絶滅危惧種の貝が見つかるなど、予想した以上に環境がいいことが分かった。それ以上に、絶滅が危惧される「水辺で遊ぶ子どもたち」がイキイキと水に入り、生きもの探しができたことは大きな成果だろう。この積み重ねが、なごやの生物多様性を守る人づくりにつながるに違いない。

*てんぱくプレーパーク
http://tenpaku-playpark.com/
現場で生きものたちの声を聞こう

協議会会長である滝川正子さんは、「知ることはおもしろいことだと思います。人から与えられたデータではなく、自分が現場で情報を集め、自分たちの暮らしの質をリアリティーに把握する。その知る調査に関わる過程が大事です。

調査は、生きものと人間とのつながりを伝えるツールなんですね。現場で生きものたちの声を聞くことが大切。現場で人は出会い、そして納得して育つんじゃないですか」と話す。

協議会では、「なごや市民生きもの調査員(市民調査員)」を随時募集中。調査活動や講習会へ参加希望の方は登録してはいかがだろう。申し込みは、なごや生物多様性センターへ(連絡先は以下)。

最後に滝川さんからひとこと。「生きものたちの声を聞き、汗と泥にまみれる現場で出会いましょう」

<なごや生物多様性センター>

〒468-0066 名古屋市天白区元八事五丁目230番地

TEL 052-831-8104 FAX 052-839-1695

E-mail bdnagoya@kankyokyoku.city.nagoya.lg.jp

業務時間 祝休日・年末年始を除く8:45〜17:30

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