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特集・なごやエコ最前線

2010年COP10なごや開催決定!〜私たちと関係あるの?〜

5月30日、ドイツ・ボンで開催されていたCOP9で、2010年のCOP10の開催地が名古屋に決定した。COP10の正式名称は「生物多様性条約第10回締約国会議」。生物多様性って何? 条約って何? この会議で何を決めるの? 私たち市民にも関係あるの?

環境首都を目指す名古屋が新たに挑戦するCOP10について考えてみよう。

掲載日
2008-06-21
取材・文
浜口 美穂
COP10って何?

COP(Conference of the Parties)とは、国際条約を批准した国(締約国)が集まって開催する会議のこと。京都議定書が採択された気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)の「COP3」が有名だが、COPは他の国際条約の締約国会議にも使われる略称だ。

2010年に開催されるCOP10は、「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」に基づき、おおむね2年ごとに開かれる環境の分野では世界トップクラスの国際会議。生物多様性条約は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する枠組みとして、1992年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択され*、翌年に発効。同年、日本も条約に批准した。2008年5月現在で190の国と地域が締約国になっている。

*国連環境開発会議(地球サミット)で採択
地球サミットでは、気候変動枠組条約も採択されている。
生物多様性って何?

現在、一日あたり50〜100種の生物が絶滅しているといわれ、種の多様性にばかり注目が集まっているが、生物多様性条約では、生物多様性を「すべての生物の間に違いがあること」と定義し、次の3つのレベルでの多様性を示している。

○ 種の多様性
例えば、藤前干潟は日本有数の渡り鳥の飛来地。そこに集まるハマシギ、チドリ、ダイゼン、ダイサギ・・・など、生物の単位となる「種」が豊富である。

○ 生態系の多様性
例えば、藤前干潟には、庄内川と新川によって上流の森から豊富な有機物が流れ込んでいる。それを吸収して植物プランクトンが育ち、その植物プランクトンや有機物を底生生物(カニ、カイ、ゴカイなど)が食べる。その底生生物を魚が食べ、鳥が食べ・・・というように、干潟で多くのいのちがつながり、干潟の生態系をつくっているのだ。
干潟には干潟の、里山には里山の、山間地には山間地の生態系=いのちのつながりがある。

○ 遺伝子の多様性
例えば、アサリの貝殻は、色や模様が千差万別。同じ種でも遺伝子によって多様な「個性」がある。遺伝子が多様であれば、寒暖や病気など環境の変化が起こったときでも絶滅の可能性は低くなる。

このように「個性」と「つながり」が「生物多様性」といえる。そして、人間もこのつながりの中にいる。生物が多様だからこそ、私たちは豊かな暮らしができるのだ。

生物多様性の危機

今、このいのちのつながりが、ドミノ倒しのように急速に崩れ始めている。そのきっかけをつくったのは人間だ。

2007年に定められた第3次生物多様性国家戦略* には、人間による3つの危機と地球温暖化の危機が挙げられている。

○3つの危機
(1)第1の危機〜乱獲や開発によって
乱獲による個体数の減少、森林の開発、埋め立てによる海の破壊などで、日本の脊椎(せきつい)動物、維管束(いかんそく)植物の約2割が絶滅危惧種になっている。

(2)第2の危機〜人が自然から遠ざかった
薪や炭などの燃料、落ち葉堆肥などを得るために人の手が入って保全されてきた里地里山。人が自然から遠ざかり、荒れることで、そこに生息していた生物が絶滅の危機に。メダカなど、絶滅危惧種の約5割が里地里山に生息しているといわれている。

(3)第3の危機〜移入種や化学物質の影響
オオクチバス(ブラックバス)など、人間によって外国から持ち込まれた種が、地域固有の生きものや生態系に悪影響を及ぼしている。ダイオキシンなど化学物質の影響も。

○地球温暖化の危機
例えば、ホッキョクグマは、海氷の上から、息継ぎのために顔を出すアザラシを捕獲しており、氷が溶けることで、絶滅の危機に瀕している。

*第3次生物多様性国家戦略
生物多様性条約は、生物多様性の保全と持続可能な利用について、「国家戦略」の策定を各締約国に求めている。日本は、1995年に最初の国家戦略を策定し、2002年に改定。さらに、2007年11月に第3次生物多様性国家戦略を策定した。
生物多様性条約の内容は?

生物多様性条約の目的は次の3つ。

(1)地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全
(2)生物資源の持続可能な利用
(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分

締約国会議で、最も議論になっているのは(3)。現在、先進国のバイオ産業が、医薬品の原料や作物の種子に導入する遺伝資源を途上国に求め、利益を独り占めしている状況のなか、遺伝資源を提供する国(途上国)の権利を認め、利益を公正かつ衡平に配分することを定めている。

また、伝統的な暮らしを営む原住民の知識を尊重し、普及することや、その利用がもたらす利益を衡平に配分することも明記。条約は、生物多様性の問題だけだと思いがちだが、南北問題や食糧問題、文化の多様性をも含めた幅広い環境問題を視野に入れているといえるだろう。

COP10はどんな会議になるの?

本会議の日程は、2010年10月18日〜29日*、メーン会場は名古屋国際会議場である。

2010年は、COP6(2002年開催)で採択された「現在の生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」という目標年に当たり、その達成状況の検証と、次の10年の具体的目標** の採択を目指すなど、重要な会議になる。

*本会議の日程
本会議直前の10月11日〜15日には、同条約のカルタヘナ議定書第5回締約国会合(MOP5)を開催。カルタヘナ議定書とは、生物多様性条約第19条に基づき、遺伝子組み換え生物などが生物多様性に悪影響を及ぼさないようにするための措置を規定した議定書。1999年にコロンビアのカルタヘナで討議され、2003年に発効した。
**次の10年の具体的目標
国別に数値目標などを設定する具体的な目標を、生物多様性条約事務局(カナダ・モントリオール)は「ナゴヤ・ターゲット」と呼んでいる。
ドイツ・COP9から名古屋・COP10に向けて〜その1

COP10という国際会議を成功させるだけでなく、市民レベルでも生物多様性を考え、行動するムーブメントにつなげようと、名古屋市から3人の生物多様性アドバイザーが選ばれ、ドイツのまちとCOP9の会場を視察した。その一人、長谷川明子さん(ビオトープを考える会 会長・なごや環境大学 実行委員)に話を伺った。

「生物多様性条約といえば、どうしても生物多様性の保全という意識がありますが、COP9のサテライト会場では、民族衣装を着たネイティブアメリカンやアフリカの人々などがたくさん歩いていて、自分たちの文化や利益を認めてほしいと訴えていました。条約には、原住民の知恵や利益を守ることが明記されているので、わかってはいたものの、実際に行ってみて改めて、その重要性を認識しました」

サテライト会場のNGO・NPOブースでは、フェアトレード商品のPRブースもあり、生物多様性条約の幅の広さを改めて実感したそうだ。

ドイツのまちは、緑のアーケードがつながり、至る所にエコラウベと呼ばれる自然環境により近づけた市民農園があったとか。ドイツでは都市計画の中にしっかりと緑のネットワークが位置付けられているのだ。

「名古屋では、これからCOP10に向けて、市民と行政が協働で自分たちのまちの将来像を考えていくことになります。その役割をなごや環境大学が担っていかなければなりません」と長谷川さん。また、なごや環境大学のもう一つの役割についても「なかなか情報だけでは、地球の裏側で何が起きているかとか、未来に思いを馳せることはできませんから、五感で感じる場が身近にたくさんあることが必要です。五感で感じられる体験の場を提供したり、自分たちの暮らしと地球環境がつながっていることに気づいてもらうことも、環境大学の大切な役割だと思います」と話す。

ドイツ・COP9から名古屋・COP10に向けて〜その2

名古屋で活動するNGO・NPOもCOP9の視察を行っている。その一人、「藤前干潟を守る会」代表・辻 淳夫さんに話を伺った。

折しも今年10月にラムサール条約第10回締約国会議(COP10)* が韓国で開催されるため、日本湿地ネットワークの共同代表でもある辻さんは、ラムサール条約COP10に向けて多忙な日々。この機会にラムサール条約と生物多様性条約をつなぎたいと考えている。

「ラムサール条約は湿地が対象ですが、生態系そのものの理念を広めていこうとしていますから、生物多様性COPとは情報交換しながらやっています。ラムサールCOPは、国際NGOの意見は反映される仕組みがあるのですが、現場で重要な仕事をしている草の根NGOの声を届ける仕組みがありません。でも、生物多様性COPはもっと良い形で進めているときいて、その点を見たいと思ってCOP9に行きました」

COP9では、本会議の前に盛り上げイベントやNGOサミットなどが開かれていた。本会議ではNGOルームとILC(Indigenous and Local Community)ルームが近くに用意されて、毎朝、当日の本会議やワークショップの進行状況が報告され、それぞれ分担してロビー活動を進めたり、EUの首脳が、そこで直接対話する機会が設けられていたという。ドイツのNGOはそのコーディネート役として政府からの十分な資金提供を受け、会議の一年以上前から海外のNGOとも連携を取りながらCOP9の準備を進めてきた。そこには「信頼関係」があると辻さんは話す。

「ドイツに行って何より驚いたのは、駅に改札がないことです。日本の駅のようにアナウンスもないし、切符の全数チェックもない。個人の自律と、社会的な信頼関係が育っていると感心。それがCOP9では、NGOと政府のしっかり連携した取り組みに現れているんだと思いました」

COP10に向けては、バラバラに活動しているNGOをどうつないでいくか、行政との信頼関係に基づく協働を、初めの段階から、どのようにつくっていくかが大きな課題。また、これを機会に多くの市民に、生物多様性=いのちのつながりについて考えてもらうことも大切だ。

「絶滅危惧種だけに焦点を当てるのではなく、当たり前に周りにいた生きものや、普通に食べていた食べもののことから、自分たちの生活とつながっていることに気づき、なぜそうなっているか、どうしていけばよいかをみんなで考える機会にしたいと思います」

*ラムサール条約COP10
ラムサール条約とは「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年に策定、75年に発効。締約国会議(COP)は3年おきに開催されている。1993年のCOP5は釧路で行われた。現在、日本のラムサール条約登録湿地は33カ所。第3次生物多様性国家戦略では、2011年までに10カ所増やすという数値目標が示された。
市民の力で

6月14日・15日、生物多様性条約事務局長のアハメド・ジョグラフ氏が来日。14日午後は愛知県芸術劇場で開催された「生物多様性キックオフシンポジウム」(環境省、生物多様性条約第10回締約国会議誘致委員会 主催)に出席。同日午前に、急きょ、地元NGOとの情報・意見交換の場がつくられた。そこでは、市民・NGOの声で社会を変えていくことの大切さが語られたという。

市民の力、NGOの力を結集するCOP10へのカウントダウンが始まった。

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