動かそまい!NAGOYA

特集・なごやエコ最前線

あなたの食が、地球を変える??フードマイレージから見える日本の食

食品や賞味期限の偽装、中国冷凍餃子事件など、食の安全・安心について考えさせられる事件が数多く起きている中、「フードマイレージ」という言葉を耳にする機会が増えている。フードマイレージとは、食べものを考えるときの指標のひとつ。作った場所から食べる場所まで運ぶ「距離」も一要素として食べ物をとらえる考え方だ。2008年2月29日にKKRホテル名古屋で行われた「フードマイレージと環境を考える講演会」を通して、フードマイレージから見えてくる日本の食の現状とその危うさを考えたい。

掲載日
2008-04-22
取材・文
吉野 隆子
輸入に頼る日本の食生活

中国で作られた冷凍餃子の事件によって、私たちの食生活が輸入食品で支えられる危ういものであることを知った方は多いことだろう。昭和40年度の日本の食料自給率はカロリーベースで73%だった。それが平成18年度には39%となっている。この数字は日常食べている食品の61%が輸入品ということを示すものである。

他の先進国の自給率を見ると、フランス130%、アメリカ119%の100%越えをはじめとして、ドイツ91%、イギリス74%と、日本の自給率の低さが際だっていることがわかる。

その原因はいくつも考えられるが、安さと便利さを優先して食材を調達してきたこと、そして私たちの食生活が和食中心の生活から洋食へと変化したことが大きいだろう。

昭和40年度と平成18年度の食生活をカロリーベースで比較(表1)すると、食事の中で米が占める割合がおよそ半分になる一方で、畜産物は約2.5倍、油脂類も約2.5〜5倍にふえている。それに伴って、畜産物に与える飼料作物(とうもろこし・大麦などの穀類・大豆油かすなど)、及び油をとるために使う種子など(大豆・綿の実・ごま・とうもろこし・パーム・菜種)の需要は増加しているが、国内での生産がコストに見合わなくなったこともあって、多くを輸入に頼るようになった。

 しかし、これまで輸出国だった中国などの国における所得の向上や人口の増加によって、畜産物・油脂類の需要が増大し価格も上がる一方だ。また、温暖化・砂漠化・水不足などによる生産条件の悪化や、バイオ燃料の需要増によって食料になるはずの農産物がバイオ燃料の原材料となってしまうなど、食料が不足する新たな要因も生まれ、輸入に頼ってきた食料の確保が難しくなりつつある。

食料輸入が引き起こしている問題

東海農政局と愛知県消費者団体連絡会は2月29日に「フードマイレージと環境を考える講演会」とワークショップを開催したが、予定していた人数の倍にあたる170人の申し込みがあり、担当者を驚かせた。

講師は農林水産政策研究所でフードマイレージの研究を手がけ、現在、九州農政局消費生活課長を務める中田哲也さん。中田さんによると、食料を輸入に頼ることが難しくなりつつあるだけではなく、日本が大量に食料を輸入することは地球規模で環境や資源に負荷を与え、さまざまな問題を引き起こしているという。

問題点として中田さんがあげたのは、次の3点である。1つは「土地」。日本向けの食料を生産するために使っている海外の土地は、国内の農地の2.5倍にもなるという。2つめは「水」。土と同様、輸入する食料を栽培するために必要な水は、日本国内で使う農業用水より多い。そして、「地球温暖化」。輸送に伴う温室効果ガスの量は非常に多い。輸送に伴う環境への負荷を把握するために役立つ指標が、フードマイレージである。

食生活を表す指標??フードマイレージ

フードマイレージとは、輸送量に輸送距離を掛け合わせたもの。10トンの食料を50キロ輸送する場合、フードマイレージは、(10×50) t・km=500t・km(トンキロメートル)となる。

国別に輸入食品のフードマイレージを比較(表2)すると、日本は韓国やアメリカの3倍、EU諸国の4〜5倍となり、突出して多いことがわかる。中田さんも、「日本は食料自給率が低いから、フードマイレージは大きいだろう」と予測して計算を始めたものの、ここまで差が出るとは思っていなかったという。

日本のフードマイレージを大きくしているのは、家畜に与える飼料や小麦などの穀類、そして油をとる種子などの輸入だ。しかし、飼料や油脂の原材料の輸入量は世界一ではあるが、他の国に比べて飛び抜けて多いわけではない。それなのに日本のフードマイレージがこれほど大きくなる原因は、輸送距離の長さだ。中田さんの概算では、輸入された食料が日本の港に着くまでに約1700万トンのCO2が排出されている。また、国内での食料輸送に伴っておよそ900万トンのCO2が排出されているという(2000年度)。大量の食料を長距離輸送することは大量にCO2を排出することであり、地球環境に負荷を与えることにもなる。

では、フードマイレージを削減するにはどうすればいいのだろうか。キーワードとなるのは、「地産地消」だ。フードマイレージはそのままCO2の排出量を表すわけではないが、少なくとも地産地消を心がけ、身近な場所で作られた農産物や食品を食べることがCO2の削減に効果をもたらすことは確かだ。

しかし、フードマイレージという指標には限界もある。

まず、輸送手段によって環境負荷がまったく違うということがあげられる。日本では食料輸送のほとんどをトラックに依存しているが、1トンの貨物を1キロ運んだときに出るCO2は他の輸送方法に比べてトラックが格段に多い。だから、地産地消に取り組むより、トラックから鉄道・船による輸送に切り換える方が即効性は高くなる。地産地消がいいからと言って自家用車で道の駅に買いに行くようなことも、フードマイレージを押し上げる要因となるだろう。

また、食べ物が生産から消費されるまでの過程にも、重油を炊いて温室を暖房する、化学肥料や農薬を使うといったさまざまな環境負荷が考えられるが、フードマイレージはそうしたものを考慮していない。例えば、国内で農薬や化学肥料を多量に使って温室栽培したものに比べ、ニュージーランドで無農薬・粗放的に栽培したものの方が、総合的に見ると環境負荷が少なくなる可能性があるということだ。

「フードマイレージは、あくまでひとつの考え方。きっかけにしていただくものだと思っています。

消費者としてできることは、なるべく旬のものを食べ(旬産旬消)、食べ残しをしないこと。地元の農業者を消費者が応援することによって、フードマイレージは小さくなっていきます。何を食べるかは、自分たちが決めることです」という中田さんの呼びかけが、印象に残った。

一箸1%、一膳10%

会場の熱心な参加者からは、多くの質問が寄せられた。「非生産者である消費者が、食料自給率を上げる方法はありますか?」との質問には、東海農政局栗本局次長が答えた。

「毎日ごはんを一口多く食べていただくと、それだけで食料自給率を1%上げることになります。茶碗1杯多く食べていただけば10%。これだとカロリーの摂り過ぎが気になるというなら、原料のほとんどを輸入している油を数滴減らしてください。朝食のパンを週に1回ごはんにすると2%、昼食の麺類を週1回ごはんにすると2%食料自給率が上がり、日本の農業者を応援することにもなります。

フードマイレージを通して、みなさんの食べ方、暮らし方を見直して、行動に移していただけたらと思います」

ワークショップで振り返る自分の食生活

会場では東海農政局が開発したソフトを使ったワークショップも行われた。自分がよく食べる料理を100種類の「フード・マイレージメニュー」から選んで一日の献立を組み立て、注文票に書き込んで提出すると、アウトプットとしてフードマイレージが記された素材シートと診断書が渡される。食材ごとに自給率・主産地・距離が記された素材シートを切り離して会場の世界地図、日本地図に貼り付けると、どんな食材がどこから運ばれてくるのか、ひと目でわかる地図ができあがる。

診断書には、選んだ料理のフードマイレージ以外に、国産・地場産(愛知)それぞれの場合のフードマイレージ、年間CO2排出量も併記されている。参加者からは、学校の教材に使いたいという声が多く寄せられていた。子どもだけでなくおとなにとっても、こうした形で自分の食生活がもたらす環境負荷を知ることは、食生活を見直すきっかけとなることだろう。

バックナンバー