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「生ごみを捨てない暮らし」が地域をつなぐ――コンポストから始まる循環のかたち
近年、環境への意識の高まりとともに、「コンポスト」という言葉を耳にする機会が増えてきた。コンポストとは、生ごみなどを微生物の力で分解し、堆肥へと変える仕組みのこと。家庭の生ごみを資源として活用できることから、注目が集まっている。
一方で、「管理が大変そう」「臭いや虫が心配」といった理由から、興味はあっても一歩踏み出せない人も少なくない。
そんな中、2022年からコンポストを通して「生ごみを捨てない生活」を広める活動を続けているのが、「アーバン♻コンポストナゴヤ」の代表・魚住佳奈(うおずみ・かな)さんだ。
今回は、活動を始めたきっかけやコンポストの魅力、そしてこれから目指していることについてお話を伺った。
「家庭でできることは?」――コンポストとの出合い
魚住さんがコンポストに関心を持ち始めたのは、お子さんが小学校でSDGsについて学んできたことがきっかけだった。
「家庭でも何かできることはないだろうか」。そんな想いから、暮らしの中でできる環境への取り組みを考えるようになったという。
もともと、スーパーでの使用済み油の回収に協力するなど、ごみの分別やリサイクルに関心を持っていた魚住さん。そんなある日、テレビで東京のコンポストの取り組みを知り、「やってみたい」という気持ちが芽生えた。
当時、魚住さんの住む地域では、ごみ置き場でのカラスによる被害が多かったという。
「家庭から出る生ごみを減らすことができれば、カラス被害も少なくなるのではと思い、まず始めてみることにしました」(魚住さん)
そんなタイミングで出合ったのが「LFCコンポスト」だった。見た目がおしゃれで、作業も簡単そうと感じたことが、選ぶ上での決め手になったという。
ファスナー付きバッグの中には、生ごみの分解を促進して、悪臭を抑えるために独自に配合された基材が入っている。ここに家庭で出た野菜くずやコーヒーかすなどを少しずつ加えていく。
このバッグの中に入る生ごみの容量は約20リットル。1日400gの生ごみを、1.5~2カ月間投入できる仕様になっている。生ごみ投入期間の後、水を加えて2~3週間熟成させて堆肥を作る流れだ。
こうして完成した堆肥に赤玉土を混ぜて、かぶとパクチーを種から栽培してみた。すると、想像以上に元気に育ち、収穫して料理したところ、格別の味わいだった。
その頃のことを、魚住さんはこうふりかえる。
「とても嬉しくて、コンポストにすっかり夢中になりました。それと同時に、この魅力をさまざまな人に伝えていきたいと思いました」
この体験が転機となり、魚住さんはLFCコンポストアドバイザーの資格を取得。2022年、5名ほどのお母さん仲間と一緒に「アーバン♻コンポストナゴヤ」を立ち上げ、コンポストを広める活動をスタートした。
「生ごみが減る」だけではない、コンポストの魅力
現在、魚住さんは名古屋市内の2ヵ所の飲食店でLFCコンポストの商品の設置・販売を行うほか、講座や相談、マルシェ・イベント出展などにも対応している。また、近郊に畑を借り、コンポストを使った野菜づくりにも取り組んでいる。
2023年のJR名古屋タカシマヤ「やさしい暮らし展」、2025年の名古屋名鉄百貨店・無印良品EXHIBITION「LFCコンポストでたのしい循環生活」に出展した際には、多くの人にコンポストに触れてもらう機会になった。
展示会では、「難しそうと思っていたけれど、やってみたくなった」「コンポストのイメージが変わった」「都市部でもできそうと感じた」などの声も多く届いた。
魚住さんが感じるコンポストの魅力は、家庭から出る生ごみが減ることだけではない。家庭菜園の楽しさや、子どもの食育につながることも大きな魅力だという。
コンポストにはさまざまな種類があるが、LFCコンポストは見た目がおしゃれでコンパクト。マンションのベランダなど都市部でも使いやすく、ファスナー付きで虫が入りにくいことも特徴のひとつだ。
また、コンポストでできた堆肥を地域で循環利用するため、設置店舗に利用者が堆肥を持ち寄り、集まった堆肥を岐阜県の畑で野菜づくりに活用している。そこでできた野菜が利用者のもとへもどる仕組みとなっている。
つまり、“生ごみが減る”だけでは終わらない、小さな循環につながっているのだ。実際の回収会には毎回10人ほどが参加し、コンポスト利用者同士の交流も自然と生まれているという。
「一度きりではなく、コンポストを通して継続的に関われるのが嬉しいですね。研究熱心な方も多くて、みなさんどんどん上達しています」と魚住さんは笑顔で話す。
活動を続ける中で見えてきた課題
自身の感動体験をきっかけに活動を始め、コンポストの魅力を伝えてきた魚住さん。しかし、活動を続ける中で2つの課題がみえてきた。
ひとつは、価格面だ。マルシェなどで紹介すると、LFCコンポストで提供している商品の価格がハードルになることも少なくないという。全国的には購入時に助成制度を設けている自治体もあるが、まだ一部の地域に限られている。
その一方で、一般的な生ごみの80〜90%は水分を含んでいて、焼却には多くのエネルギーが必要だ。その処理費用には税金も使われている。
「コンポストが広がれば、生ごみの量が減り、結果として税金の負担軽減にもつながります。助成制度が多くの地域に広がることを期待しています」(魚住さん)
もうひとつの課題は、活動を支える仲間の存在だ。現在、名古屋市内のLFCコンポストアドバイザーは魚住さんひとり。手伝ってくれる仲間はいるものの、講座や相談、イベントなどの対応に限界を感じる場面もあるという。
「この活動に共感して、一緒に広めていく仲間が増えたら嬉しいです」と魚住さん。
これから目指したい、コミュニティガーデンという形
取材の最後に、これからの展望について尋ねてみると、こんな言葉がかえってきた。
「コンポストを活用した“コミュニティガーデン”をつくりたいですね。老若男女問わず参加できて、みんなで育てたものをみんなで食べる。地域の交流の場にもなるし、災害時にも役立つ。福祉や子育ての面でも大切な場所をつくりたいと考えています」
魚住さん自身、コンポストを始めたことで、さまざまな人との出会いがあり、食や暮らしへの意識が大きく変わったという。
コンポストの魅力は、生ごみを減らすことだけではない。人と人、人と地域をゆるやかに結びながら、暮らしを見つめ直すきっかけにもなっている。
“捨てる”を“循環”へ変えるコンポストの取り組みは、これからの暮らしの新しい選択肢として、少しずつ地域に広がっていきそうだ。







