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料理やお手当、遊びまで活用できる「レンコン」。身近な食材から始める、持続可能な暮らしとは?

取材・文 松橋 佳奈子

コロナ禍での暮らしが長期化するなかで、今まで以上に心と身体を健康に保つことやセルフケアの大切さを感じている方も多いだろう。私の周囲では、身近な環境や地域の魅力に気が付いたという方や、「シンプルな暮らし」をしたいと願う方も増えてきているように感じている。世界規模での大きな流れとして「持続可能な開発目標(SDGs)」などが広がりつつあるが、一人ひとりが「持続可能な暮らし」を意識し始めているとも言えるのかもしれない。
こうした状況を受けて、身近な野菜「レンコン」に注目したい。レンコンは昔から「先の見通しが良い」と言われ、おせち料理などにもよく使われている。愛知県での生産も盛んに行われており、愛知県愛西市ではレンコンが特産品となっている。
レンコンは、煮物やきんぴらなどの料理に利用されることが多いが、実は、子どもの遊びや民間療法などにも幅広く使われてきたことをご存知だろうか。レンコンの美しい花は信仰の対象ともされるなど、その魅力は多方面から語り継がれ、さまざまな用途に活用されてきた。
それでは、料理以外にも活用できるレンコンの魅力についてご紹介していこう。

レンコンってどんな野菜?

レンコンは、漢字で「蓮根」と書くことから、「蓮の根」というイメージをお持ちの方も多いかもしれない。でも、実はレンコンは、蓮の地下茎の部分だ。また原産地にはいろいろな説があるが、中国またはインドから伝わったという説が有力である。

全国的には、茨城県・徳島県・佐賀県などの一大生産地に次いで、愛知県でも盛んに生産されている。現在市場に出回っているレンコンの多くは「中国種」と呼ばれるもので、明治時代に日本に伝わった品種である。その他、主な種類としては在来種・備中種・加賀レンコンなどがある。

スーパーなどでは一年中レンコンを見かけるが、旬の時期は秋から冬にかけてである。おせち料理などでレンコンの需要が高まる年末の頃にもたくさん収穫されている。出始めの時期は柔らかくて瑞々しいタイプが多いが、冬になるにつれて甘味や粘りの強いタイプへと変化する。

レンコンは輪切りや厚切り、すりおろすなどの切り方や、加熱方法などによっても、食感や味わいが大きく異なる。定番の煮物やきんぴらだけでなく、スープや揚げ物、自家製の練り物など、いろいろな料理に使うことができる面白い野菜のひとつだ。

おすすめの食べ方のひとつとして、レンコンを厚切りにしてじっくり焼いた「レンコンステーキ」を作ってみよう。作り方は、皮付きのまま厚さ2cm位の輪切りにして、油をひいたフライパンで片面を焼き、香ばしく色が付いたらひっくり返して、蓋をして蒸し焼きにする。皿に盛り付けて、自然塩やしょうゆ、レモンなどの柑橘類の搾り汁と一緒にシンプルにいただくのがおすすめだ。もっちりとした食べ応えのある味わいが満喫できるだろう。

輪切りにしたレンコン
定番料理「レンコンのきんぴら」
レンコンはスープや煮込み料理にもよく合う
厚切りにしてじっくり焼いた「レンコンステーキ」

遊びから民間療法、信仰まで幅広く利用されるレンコン

レンコンの大きな特徴のひとつに、ユニークな形状がある。品種にもよるが、周りに8~9個、真ん中に1個の穴が開いている。その形状から「先の見通しが良い」「将来が見通せる」とされ、おせち料理などおめでたい席には欠かせない食材とされてきた。

レンコンの切れ端を使った「野菜スタンプ」は、子どもの遊びにもぴったりだ。色が少し変色したものなど、捨ててしまいがちな部分でも十分楽しめる。小さな子どもでも安心して遊ぶことができるし、スタンプ台が無ければ水彩絵の具を水で溶いたものでも代用できる。創造性を育むとともに、野菜の形状の面白さなどに気が付くきっかけにもなる。こうした野菜スタンプなどの野菜を使った遊びは、子どもの野菜嫌いを克服するアイデアとしても活用できるかもしれない。

また、薬膳の考え方ではレンコンは「潤す」「熱を取る」働きがあるとされ、すりおろしたレンコンを使った「レンコン湯」は、民間療法ではのどの痛みや咳・痰などのお手当としても古くから使われてきた。詳しい作り方は、本記事の最後に紹介しているので、空気が乾燥する時期の風邪予防としてぜひ参考にして欲しい。

さらに、初夏に咲く美しいレンコンの花も、忘れてはならない特徴だ。泥水のなかから神秘的で華麗な花を咲かせる様子は、どんな状況でも美しく佇む「清らかさ」の象徴ともされている。仏教では、蓮の花の上に座ったブッダの絵画も有名である。また、レンコンはヨガのなかにも登場し、心の落ち着きを取り戻し、エネルギーを目覚めさせる「ロータスポーズ」として親しまれている。

レンコンスタンプ
レンコンはおせち料理にも欠かせない食材だ
レンコンの花
レンコンの栽培風景

おばあちゃんの知恵「レンコン湯」の作り方

では、喉の炎症がある時に昔からよく飲まれてきたのが「レンコン湯」の作り方を紹介しよう。これは、身近な食材を上手に活用したおばあちゃんの知恵でもある。私自身も喉の痛みがある時などにレンコン湯を作ることが多い。蜂蜜を加えると飲みやすくなり、子どものお手当にも重宝する。

------- レンコン湯 -------

1人分

・レンコンのすりおろし汁 50cc
・蜂蜜(お好みで) 小さじ1~2
・生姜のすりおろし(お好みで) 少々
・水 100~150cc

1. レンコンはよく洗って皮付きのまますりおろして、汁を搾る。
2. 鍋に1のレンコンの搾り汁と水、お好みで生姜を入れてひと煮立ちさせる。
3. お好みで蜂蜜を加えてよく混ぜる。温かいうちにいただく。

材料を鍋で加熱せずに、レンコンのすりおろし汁に熱湯を加えるだけでも作ることができる。
ちなみに、生のレンコンが手に入らない場合には、レンコンを乾燥させてパウダー状にしたものを使うのも便利である。マクロビオティックなどではこのパウダーは「コーレン」と呼ばれ、お湯を注ぐだけで手軽に「レンコン湯」を作ることができる。また、レンコンを使用した「レンコン飴」などもあり、忙しい時に助かる食材だ。コーレンやレンコン飴は自然食品店などに置かれていることが多いので、気になる方はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

また、喉の炎症など風邪予防として、レンコンのすりおろしを使った料理もおすすめである。レンコンのすりおろしをゆっくりと加熱すると、葛粉のようなトロミが付く。これを利用して作る「レンコンスープ」はとろとろとした仕上がりで、身体が温まり寒い日の朝食にもぴったりだ。

レンコン湯

------- とろとろ「レンコンスープ」 -------

2人分

・れんこん 100~120g
・水 300cc
・すりごま・自然塩(お好みで) 少々

1. レンコンはよく洗って皮付きのまますりおろす。
2. 鍋に1のレンコンと水を入れて、木べらなどで混ぜながら、弱火でゆっくりと加熱する。
3. レンコンが透明になり、トロミが付いてきたら火を止める。お好みですりごまと自然塩を加えて、味を調える。

加熱している途中で鍋の底が焦げ付きやすいので、厚手の鍋を使うようにする。

レンコンのパウダー「コーレン」
レンコン飴
レンコンスープ

身近な食材の活用を通して、持続可能な暮らしの実現へ

レンコンは、煮物やきんぴらなどの定番料理だけでなく、切り方や加熱方法などを変えることで、さまざまな食感や味わいを楽しむことができる。また料理だけでなく、子どもの遊びや民間療法、信仰などにも利用されてきた歴史を持つ、とても奥の深い食材である。

コロナ禍での暮らしが続くなかで、季節の移ろいを楽しむ機会が貴重なものになりつつある。こうした状況のなかでレンコンをさまざまな用途に活用することは、季節の移ろいを感じるとともに、先人の知恵や自然の恵みに感謝し、シンプルな暮らしを楽しむことにもつながっていくのではないだろうか。さらにレンコンなどの地域の食材を大切に扱うことは、長い目で見れば地域の環境や文化を守るとともに「持続可能な暮らし」を実現することにも結び付くだろう。

まずは、昔から親しまれてきたレンコンの力を借りて、心身ともに健やかに過ごせますように。