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特集・なごやエコ最前線

全国初!宅配便を活用したパソコンの回収システム~リネットジャパンリサイクル(株)の取り組み~

2013年4月に小型家電リサイクル法が施行され、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン等々の小型電子機器がリサイクルの対象となった。しかし、どうやって回収に出したらよいか分からない、データが残っているので心配などの理由で、複数台のパソコンが眠ったままになっている家庭は多いのではないだろうか。我が家もご多分に漏れず、10年ほど前のパソコンが棚に眠っていた。

引っ越しを控え、断捨離を始めた昨年秋、ちょうど新聞広告で目にしたのが、宅配便を使った便利な回収システムを提供するリネットジャパン(株)(2020年1月よりリネットジャパンリサイクル(株)に社名変更:以下、リネットジャパン)だった。しかも一番ネックだったデータ消去も有料で請け負ってくれるという。さっそくホームページから回収を申し込んでみた。

掲載日
2020-03-23
取材・文
浜口 美穂
分かりにくい自治体の手引き

実は使わないパソコンを10年も寝かしたのには訳がある。名古屋市のウェブサイトで「パソコンリサイクル」を検索してみると、パソコンメーカーが加盟してつくった「パソコン3R推進協会」による回収システムが最初のページで紹介されている。「PCリサイクルマーク?」「メーカー受付窓口?」「ゆうパック伝票送付?」……この時点で「もうや~めた!」と思考停止になっていたのである。

リネットジャパンの存在を知ってから改めて市のウェブサイトを見て気付いたのだが、よくよく読むと、同協会による回収は資源有効利用促進法に基づきメーカーに義務づけられた再資源化のシステムで、すでに2004年から始まっていた。2013年4月から施行された小型家電リサイクル法による回収システムはまた別にあり*、それは別のページに飛ばないと情報に行き着かないのだ。

市民にとってどの法律に基づく回収システムであるかは関係ない。要はパソコンを手軽に回収に出せればよいのだ。

*小型家電リサイクル法による回収システム(名古屋市ウェブサイト)
市の事業として行っている総合スーパーや区役所等の回収ボックスを紹介。また、名古屋市で小型家電を回収している認定事業者を紹介している。リネットジャパンリサイクルはその最後に記載されている。
思った以上に簡単!

新聞広告で知ったリネットジャパン。個人情報漏洩が問題になっているこのご時世、心配だったのは、その会社が安全かどうかだ。ウェブサイトを見てみると、環境省認定で、名古屋市をはじめ全国各地の自治体と連携している(2020年2月末日現在231自治体と連携)。小型家電リサイクル法の認定事業者のマークもあるので間違いない。

簡潔明瞭なホームページには、「どんなパソコンでも無料で回収」とある。どんな箱でもいいから、小型家電詰め放題でその中にパソコンが入っていれば無料なのだ。データ消去も有料(3000円)でやってくれる。パソコンの機種によっては消去ソフトもダウンロードできる。残念ながらうちの機種は古すぎて対応しておらず、対応していたとしても作業時間が5~6時間かかると書いてあるので、とても自分ではやる気にならない。

データ消去も含めて申し込むことにした。さっそく「カンタンお申込み」ボタンをクリック*。「回収品にパソコンはありますか?」「台数は?」「データ消去は?」……イエスノー形式のように答えていくと、「回収希望日時」が指定でき回収先情報を入力すればもうOK。データ消去料金はクレジットカード払いにした(銀行ネット決済・代引きでも可)。あとは佐川急便が配送伝票(こちらで記入は不要)を持ってくるので梱包した段ボール箱を渡せばおしまいだ。

そしてリネットジャパンが提供する安心のサービスは、回収やデータ消去の処理状況がマイページから確認できるところ。「データ消去証明書」(写真参照)もマイページで見ることができ、印刷も可能。希望者には500円で証明書の郵送サービスも行っている。

*ウェブサイト以外に電話でも回収の申し込みはできる。
「面倒くさい」を上回る「便利な」サービス

こんなに便利なパソコン回収システムがあるのに、筆者の周りには知らない人、面倒だと思っている人がまだ多い。現状を知りたいとリネットジャパンの中村俊夫社長のもとを訪ねた。

少し古いが、2012年に経済産業省が行った消費者アンケートでは、約46.7%の人が不用なパソコンを眠らせているという結果が出ている。その理由は「手続きが面倒」「個人情報漏洩を心配」が多い。中村さんによれば、その状況は今でも変わらず、同社のアンケート調査でも約半数の家庭に複数台の不用パソコンが眠っているという。

リネットジャパンは、もともと本やゲームソフトなど中古品の宅配買い取りの会社。そのノウハウを活かし、2014年7月から本社のある大府市、小牧市、豊橋市で自治体と協定を締結し、宅配便を使ったパソコンの回収サービスを開始した。遡ること2012年12月、環境省、愛知県、大府市の協力を得て、宅配便を使った回収の実証事業を期間限定・大府市限定で行ったところ、反応が良かったことから、市民の求めるサービスはこれだと確証を得たという。2013年4月に小型家電リサイクル法が施行され、認定事業者のライセンスを取得し、全国で初めて(今でも唯一)、宅配便による回収サービスを始めた。

「どんなリサイクルでもおおもとの分別が一番大事です。いかに市民がリサイクルに協力しやすい環境を整備するか。環境を整備すれば分別も進みます。“面倒くさい”を上回る“便利さ”の究極のサービスが家に取りに行くということだったんです」と中村さんは話す。

安心のデータ消去

パソコンの回収が進まないもう一つの要因が個人情報漏洩の心配。リネットジャパンでは、セキュリティが確保されたデータ消去の処理センターに佐川急便が直接持ち込み、1台1台単品管理をしているという。単品管理しているので、前述したようにマイページから処理工程がすべて確認(トレーサビリティー)ができるのだ。

データ消去の方法は、パソコンの機種・状態によって、「専用ソフトによる上書き消去」「物理的な破壊」「強い電磁波による消去」の3種類が使い分けられている。そしてどの方法を使ったのかは「データ消去証明書」に記載されている。ちなみに筆者の証明書には「強磁気破壊方式」と書いてあった。

使用済みの小型家電には金・銀・銅など有用な金属が含まれ、「都市鉱山」と言われている。リネットジャパンはもちろん再資源化処理の最先端にいる事業者なのだが、その点を強くアピールしているわけではない。

「一市民の方にとっては、大事なデータが入った1台のパソコン。先に都市鉱山だ、再資源化だというのがあるわけではありません。我々はまずはお預かりしたデータをちゃんと処理する。その上で適正に再資源化するというのが仕事だと思っています」

知的障がい者が大事なパートナー

処理センターでデータ消去されたパソコンは、手作業で分解して仕分けされ、その中のレアメタル(希少金属)が専門業者に売却される。一連の流れの中で分解作業を担っているのが知的障がい者だ。

「正直言って僕が作業するより彼らの生産性の方が高いんです。集中力が高いですから。僕らにとって大事なパートナーなんです」と中村さん。同社の理念として、寄付という社会貢献ではなく、事業の中にパートナーとして組み込むことで、収益と社会貢献を同じ軸で回すということを考えているそうだ。つまり、モノが回っている限り、社会貢献もできる仕組み。パソコンのリサイクルは障がい者雇用の創出にもつながっていた。

市民に知ってもらうために

パソコン・携帯電話など小型家電の再資源化で東京オリンピックのメダルをつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」というのをご存じだろうか。パソコン回収のキャッチコピーがユニークで「ホコリかぶったPCを誇り高きメダルへ!」。主催は(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会だが、実はこのプロジェクトの中心で事務局を担ったのがリネットジャパンだ。2019年3月に回収受付は終了し、そこから取り出した金・銀・銅は、同年10月に造幣局に納品された。オリンピック・パラリンピックの金・銀・銅あわせて約5千個のメダルに必要な金属量が100%回収で賄われたという。

すべての国民がオリンピックに参加できる唯一のチャンスともいえる世界初の試み。これを次の2024年パリオリンピックにも引き継いでほしいと、2019年11月に中村さんと環境省の職員がパリを訪れ、働きかけを行った。反応は上々。資源の枯渇が問題となっている昨今、「持続可能」な取り組みであるメダルプロジェクトは、これからオリンピックの定番となるかもしれない。

そして、国内でもアフターメダルプロジェクトとして新たに2020年2月17日から始まったのが「グランパスくんのPCリサイクル2020」。名古屋グランパス、リネットジャパン、環境省が連携し、不用パソコンからグランパスくんをデザインした金メダルをつくり、回収台数に応じて最大3個をプレゼントするというもの。また、パソコン回収に協力した全員に「必勝!グランパスくん金のおまもりメダル」がもらえるという。さらに、2021年10月に三重県で開催される国体「三重とこわか大会」でもアフターメダルプロジェクトが進められている。これらのプロジェクトは、市民が家庭に眠っているパソコンに目を向けるきっかけになることだろう。

全国の自治体と連携が進み、注目され始めた宅配便によるパソコンリサイクル。だが、同社のお膝元である名古屋市・愛知県での認知度が低いという。「市民の皆さんに支持されるサービスにより一層磨きをかけて、回収率を高めたいと思っています」。リネットジャパンの目は常に排出者である市民に向けられている。