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特集・なごやエコ最前線

なごやのフェアトレード〜フェアトレードタウンを目指して〜

2008年、牛丼の「すき家」でフェアトレードのドリップバッグコーヒーを販売しているのを見て驚いた。経営母体の「ゼンショー」がCSR(企業の社会的責任)として取り組み、原材料の調達からすべてのマネジメントを行っているという。

イオンやアピタなどのスーパーマーケットでもフェアトレードコーヒーを販売、ミニストップでは、フェアトレードチョコレートの販売も始めた。学祭でフェアトレード商品を販売する大学や高校も年々増えているという。

一気に広がりを見せているかのようなフェアトレード。なごやのフェアトレードショップの先駆け、「風”s」の店主、土井ゆきこさんと、フェアトレードの学生ネットワークをつくり活動する名古屋市立大学医学部5年の福島一彰さんに、なごやの現状を伺った。

掲載日
2009-10-22
取材・文
浜口 美穂
日本のフェアトレード

フェアトレード* は、1946年、アメリカで始まったといわれている。その後、60年〜70年代にかけて、ヨーロッパで先進的なフェアトレード団体が設立された。

「フェアトレード」という言葉が初めて用いられたのは、1985年、英国生協主催の国際会議のとき。これ以降、国際的なフェアトレードの基準をつくろうと国際組織の設立が相次ぎ、本格的なフェアトレード運動が始まった。

日本では、1974年、シャプラニール(市民による海外協力の会)の前身となる団体が行ったバングラディシュのジュート製品生産組合プログラムが実質上の始まりといわれているが、フェアトレード団体が次々と設立されるようになったのは、80年代後半から90年代にかけてである。

日本のフェアトレードの市場規模の統計はないが、「日本のフェアトレード ——世界を変える希望の貿易」(明石書店)によると、2005年に53億円と推定されている。これは世界市場の3.3%に過ぎないという。

また、2007年4月のチョコレボ実行委員会** のインターネット調査では、「フェアトレードを知っている人」(出現率)は日本では2.9%という結果が出ている。イギリスでは86%の人がフェアトレードを認知しているというから(「日本のフェアトレード ——世界を変える希望の貿易」による)、日本では広がりをみせているとはいえ、まだまだスタート地点といえるだろう。

*フェアトレード
アジアやアフリカ、中南米などの農村地域や都市のスラムなどに暮らす人々が作った商品を適正な価格で取り引きする貿易のこと。貧しい人々が自らの力で暮らしを向上させることを目指すほか、現地の環境にも配慮した方法(有機栽培など)で生産を行う。フェアトレードの歴史や現状は、「日本のフェアトレード ——世界を変える希望の貿易」(発行所:明石書店、編著者:長坂寿久)に詳しく掲載されている。
** チョコレボ実行委員会
2006年から活動。フェアトレードやオーガニックなど「人と地球にやさしいチョコ」を広める活動をしている。http://www.choco-revo.net/
なごやのフェアトレード

WFTO(世界フェアトレード機構)により、毎年5月第2土曜日は世界フェアトレード・デーと定められ、5月は世界フェアトレード月間として、全国各地で様々なイベントが繰り広げられている。名古屋でも10年前から風"s開店とともに設立された「GAIAの会」* がイベントに取り組み、フェアトレードをアピール。主要なフェアトレードショップ合同企画で、ゲストを招いた年もある。

「GAIAの会」では、今年、映画「おいしいコーヒーの真実」** を上映し、盛況だったとか。来年は、フェアトレードの現状に詳しい長坂寿久氏をゲストに招き、昨年秋に実施された日本初のフェアトレードアンケート調査結果を報告するとともに、次のステップを考える講演会を開催する予定だ。

1996年に風”sが開店して以降、なごやのフェアトレードショップは徐々に増え、現在、主な専門店、カフェなどは9店舗。それぞれが、商品を売ることで、フェアトレードの普及をはかり、自分たちの生活が世界の国々とつながっていることをメッセージとして伝えている。また、自然食レストラン・カフェ、雑貨屋さんの片隅でフェアトレード商品を販売するところも増えているという。

「いろいろな店で、小さなコーナーでもいいからフェアトレード商品を置いて、お店の人が一人ひとりと地道に語っていくことが大切。それによって消費者も育ち、フェアトレードが広がっていくと思います」と、風”sの土井さんは話す。

*GAIAの会
1996年に名古屋初のフェアトレードショップ風"sがオープン。店と同時に、フェアトレードなどについて学ぶ市民団体「GAIA(がいあ)の会」を立ち上げ、情報発信にも努めている 名古屋市東区上竪杉町1番地 愛知県女性総合センター(ウィルあいち)1F TEL&FAX 052-962-5557 http://www.huzu.jp/
**おいしいコーヒーの真実
http://www.uplink.co.jp/oishiicoffee/
1杯のコーヒーの販売価格の1〜3%しか生産者に渡らない現実を訴えている。
名古屋市をフェアトレードタウンにしよう

現在、世界中にフェアトレードタウンが700以上あるという。その認証は、イギリスのフェアトレード財団が行っている。2000年にイギリスの小さな町が世界初の「フェアトレードタウン宣言」をしてから、世界各国に広がったが、日本にはまだない。

日本では、フェアトレードタウンを認証する5つの厳しい基準が障害になっているようだ。例えば、自治体議会でフェアトレードを推進していくことを決議し、自治体の事務所や食堂ではフェアトレードのコーヒーや紅茶を提供しなくてはならない。また、フェアトレード認証ラベルが貼付された商品を2品目以上販売する店が、名古屋市の場合は300店舗以上あることが必要だ(人口比率による)。

名古屋市では、2010年10月、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催される。生物多様性条約の中には、遺伝資源の利用に関して、資源提供国と利用国の間で利益を公正かつ衡平に配分することも盛り込まれている。つまり、フェアトレードに関係ないとはいえないのだ。

これを契機に、名古屋市をフェアトレードタウンにしようと、GAIAの会が呼びかけて、今年6月に「名古屋をフェアトレードタウンにしよう会」が発足し、ワークショップ形式の勉強会を続けている。

学生ネットワークの誕生

フェアトレードの普及活動に学生たちの動きも見逃せない。全国的には、2004年に東京近郊の学生たちによってフェアトレード学生ネットワーク(以下、FTSN)が設立され、現在は、東京・関西・中国・九州に支部を置く。

名古屋では、名古屋市立大学生協が学生の働きかけにより、2006年からフェアトレード商品を置くようになった。このきっかけをつくったのが現在医学部5年生の福島さん。途上国での医療活動をしたいと医学部に入り、在学中にも何かできないかと考えているときにフェアトレードを知ったという。

当初は有志で広報活動をしていたが、持続可能な活動をしたいと、今年からキャンパスを越えたサークルを再編成。11月の大学祭では、フェアトレードの紅茶を使い、タピオカミルクティーの販売をするという。

このような動きに刺激を受けたのか、他の大学でも学祭でフェアトレード商品を販売するところも出てきたという。ちらほら聞こえるフェアトレードに感心を持つ学生の声、前出のFTSNの中部支部をつくりたいという声も集まってきた。

そこで、まずは人のつながりをつくるのが大切と、大学を越えた学生ネットワーク「328(みつば)」が誕生した。設立は、今年3月28日。だから「328」である。また、三つ葉は、あと1枚の葉があれば四つ葉になるので、「あなたが1枚の葉となり、参加してください」という気持ちもこもっているという。

今年5月に開催されたアースディ愛知2009に出展。インドのビーズを使って携帯ストラップ・ブレスレットなどを作るワークショップを行い、メンバーのつながりを深めるとともに、外に向けてフェアトレードをアピールした。また、フェアトレード商品を扱う大学生協を増やす活動も始めている*。そこを拠点にフェアトレードや世界の貧困・飢餓などの問題を発信していくのがねらいだ。さっそく、10月から愛知大学名古屋キャンパスで取り扱いを開始。また、中京大学八事キャンパス、淑徳大学でも、学生が導入に向けて活動中であるという。

学生ネットワークが動き始めた今、次の目標は一般の人たちとのつながり。そこで、「フェアトレードタウン」という目標を使って興味ある人をつないでいこうと、大ナゴヤ大学** や「名古屋をフェアトレードタウンにしよう会」などと一緒に、12月に最初のミーティングを開く予定だ。

日本でフェアトレードが普及しない1つの要因として、欧米のようなネットワークが存在しないということが指摘されている。その中で、中立的立場にあり、フットワークの軽い学生がネットワークの牽引役としても期待されている。

*フェアトレード商品を扱う大学生協
愛知県内の大学生協で、継続的にフェアトレード商品を扱っているのは、それまで名市大のみ。一時扱っていた大学もあるが、続かなかった。
** 大ナゴヤ大学
http://dai-nagoya.univnet.jp/
フェアトレードでまちづくり

フェアトレードタウンまでの道は険しいが、行動を起こすことで、仲間が増えていく。フェアトレードはつながりを結び直すこと。生産者自身も組合を通してフェアトレードを行うのでコミュニティーの再生につながる。そして、先進国の暮らしと途上国の生産者のつながり、消費者とお店のつながり、生活者同士のつながり……。遠くつながる途上国の人々に思いを馳せ、足元の自分の暮らしとまちを見つめ直す。なごやのフェアトレードのこれからのキーワードは「まちづくり」のようだ。

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