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もうマイバッグでお買い物は当たり前! レジ袋有料化が東部7区に拡大

取材・文 浜口 美穂
  • SDGs

名古屋市緑区でレジ袋有料化が始まったのは2007年10月。参加店はスタート時の26店舗から46店舗に増え(2008年9月現在)、レジ袋お断り率は90%を超えるようになった。
これは、行政にとっても事業者にとっても予想をはるかに上回る結果。実施前は2010年度以降に名古屋市全域でレジ袋有料化を実施することを目指していたが、予定を2年前倒しし、まずは今年10月に東部7区に拡大、2009年4月からは残りの西部8区も加わり、市内全域で実施することを決定した(図1)。これにより、2006年度に市内で使われていたレジ袋約10億枚の60%削減を目指している。

協働の成果

緑区でレジ袋有料化がスタートした昨年10月のレジ袋お断り率は平均87%だった。周知が行き渡ったのか、マイバッグ持参が習慣になってきたのか、ここ数カ月は90%を超えて安定している(表1)。これにより、昨年10月から今年7月までの10カ月間で削減できたレジ袋は2,530万枚(重量177トン)。CO2削減量は1,012トンになるという。

当初、事業者側は客離れによる売り上げの減少を心配していたが、有料化の影響はなかった。今年1月(レジ袋有料化開始3カ月後)の緑区住民対象に行ったアンケート調査では、「レジ袋の有料化はお店を選ぶ理由になりますか」という問いに対し、69%が「選ぶ理由には全くならない」と回答している。

この成功要因について、ユニー(株)環境社会貢献部長の百瀬則子さんは、「市が住民の理解を進めてくれたことと、市民団体もキャンペーンなどを行い協力してくれたからだと思います。私たちは住民の方々に『支援します』と言ってもらえると心強い」と話す。また、事業者が一斉に有料化に踏み切ることも大切だという。

表1 参加店舗平均のお断り率(平成19年10月〜20年7月)
2008年10月4日、東部7区有料化スタートに伴う店頭キャンペーン(千種区・アピタ千代田橋店)

参加店の広がり

今年10月4日から、東部7区でも有料化がスタート。参加店は、一気に635店舗になった。これは、山梨県(106店舗)や富山県(290店舗)など全県で有料化に取り組んでいるところと比べても圧倒的に多く、全国最大規模である。

緑区でも途中からチェーン展開しているドラッグストアやクリーニング店などが新たに加わり、参加店が46店舗に増えたが、今回はさらに、愛知県クリーニング生活衛生同業組合、愛知県薬業協同組合、名古屋小売酒販組合など組合単位での参加があり、店舗数増加につながったようだ。

今後の課題

今後、有料化を進めていく上での課題について、容器・包装3R推進協議会* に市民団体代表として参加している岩月宏子さんに伺った。

「デパート、コンビニの参加が課題です。デパートは、店内のテナントの意見を調整できない。そしてコンビニは全国一律のフランチャイズ契約であり、一部の店舗だけ有料化するのが難しいというのが理由だそうです。一人暮らしの方や若者は、コンビニの利用率も高いので、ぜひ参加してもらいたいですね。また、事業者は容器包装にかかる経費が減った分の一部でもよいので、還元セールなどといった消費者還元策を考えてほしいと思います」

そのほか、今まで実施していたポイント制との兼ね合いも課題のひとつ。「エコクーぴょん」はもともと2009年3月でシール配布を終了、50円券として使える期間も同年4月までとなっているが、事業者独自のポイント制を実施しているところもあり、レジ袋有料化によって、レジでのポイント発行作業の手間や経費増大が心配されている。

また、透明・半透明のレジ袋を資源袋として使用できる暫定的措置をいつまで行うかという課題もある。市によると、ある事業者からは「これをやめれば、レジ袋辞退率がさらに上がることが予想される」という意見がある一方、有料で購入したレジ袋の有効利用という観点もあるので、検討中とのことだ。

* 容器・包装3R推進協議会:容器・包装の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を推進するため、2001年に発足。これまでレジ袋削減の取り組みを進めてきた。消費者団体、事業者団体(小売り・製造業界含む)、学識経験者、行政で構成される団体。

レジ袋は生き残る?

レジ袋がスーパーで使われ始めたのは昭和40年ごろ。当時は紙製の袋が主流だったが、冷蔵品などを入れると破れやすいという問題もあり、ポリエチレン袋の便利さに注目が集まった。スーパーの拡大とともにレジ袋は定着したが、近年の環境問題に対する意識の高まりや有料化により、レジ袋は消えていく運命なのだろうか。

現在のレジ袋の使われ方から考えると、資源用指定袋の代わりに使える間は利用されるだろうし、生ごみなどの内袋としても、以前より量が減るにせよ、利用され続けるだろう。

また、緑区住民対象に有料化実施前(2007年9月)・実施後(2008年1月)で行ったアンケート調査では、買い物袋としてレジ袋を再使用している人が実施後でも11%ある(図2)。10月4日、レジ袋有料化が始まった千種区のスーパーで数人にインタビューしたところ、「もう10年も前から、レジ袋を何回も買い物に使うようにしている」「畳めば、マイバッグより小さくなるので、レジ袋をよく使っています。豆腐などを小さなビニール袋にわざわざ入れる必要もないので、かえって環境にやさしい気がする」という声が聞かれた。

図2 アンケート調査
レジ袋を繰り返し使っている人もいる(千種区・アピタ千代田橋店)

レジ袋の3R

前出のユニー(株)の百瀬則子さんは「レジ袋は悪者じゃない」と言う。「必要のある方には購入してもらい、必要でなくなったら回収してマテリアルリサイクル* しようと、ユニー独自の『レジ袋toレジ袋リサイクルシステム』を始めました」。使用済みレジ袋を店頭回収し、再びレジ袋にリサイクルしている事業者はなく、全国初の取り組みになる。配布するレジ袋も、リサイクルしやすいように白1色のインキで印刷面積を極力減らした新レジ袋に今年4月1日から切り替えた。同時に、旧レジ袋の回収も始め、これはベンチ等に再生するという。

再生レジ袋の品質を保持するため、リサイクル原料混入率は15%以下。最低でも2〜3回は使えるよう丈夫につくられている。不要なレジ袋は断り、必要あって買ったレジ袋は繰り返し使う、そして最終的にはマテリアルリサイクル……容器包装に頼らざるを得ない販売業者が取り組む「レジ袋の3R」である。

* マテリアルリサイクル:廃棄物を製品の原材料として再利用すること。これに対して、サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却して得られる熱エネルギーを回収すること。循環型社会形成推進基本法では、廃棄物の発生抑制とリユースを行い、マテリアルリサイクルを繰り返し行った後の最終的なリサイクル手法としてサーマルリサイクルを位置付けている。

エコバッグ販売コーナー横に設置されているレジ袋回収ボックス。左が旧レジ袋回収用で、右が新レジ袋用。回収ボックスの上にリサイクルシステムの説明ボードが掲げてある(千種区・アピタ千代田橋店)
リサイクル原料を使った再生レジ袋。触ると張りがあり、丈夫そう
リサイクル原料を使った再生レジ袋。触ると張りがあり、丈夫そう

他の容器包装削減へ

ユニー(株)では、バイオマスプラスチック容器* の導入・回収も行っている。今後は、商品が生産されてから廃棄されるまでにどれだけCO2を排出しているかという情報を消費者に提示し、理解してもらいながら、石油由来のプラスチック容器を減らしていきたいという。ちなみにユニーは、環境保全に関する取り組みを環境大臣に対して約束したエコ・ファースト企業** に業界で初めて認定されている。

レジ袋削減から次のステップは、ほかの容器包装材の削減。レジ袋有料化で、レジ袋以外の小型の袋など、ほかの資材の使用量が増えることも懸念される。しかし、緑区住民対象に行った有料化後の環境問題への意識・行動に関するアンケート調査では、「有料化の前より、ごみの分別に取り組むようになった」が64%で最も多く、「ごみの減量に取り組むようになった」も39%ある(図3)。有料化がきっかけになり、ほかの容器包装材の削減やグリーン購入に結びつくことを期待したい。そのためには、事業者と消費者のより強い理解と協働が必要になるだろう。

* バイオマスプラスチック容器:石油ではなく、植物を原料にしたプラスチック容器。
**エコ・ファースト制度:https://www.env.go.jp/guide/info/eco-first/

図3 アンケート調査

全国でも有料化の波

今年4月1日時点では、名古屋市を含め全国28地方自治体で、レジ袋有料化の取り組みが行われている。名古屋市のように、市民・事業者・行政が自主協定を結んで協働で取り組んでいるところが多く、条例を制定して取り組んでいるところは東京都杉並区のみ、行政が事業者に協力要請をする形の自治体もある。

その後も、有料化に踏み切る自治体が後を絶たず、たとえば愛知県では、4月1日時点で実施している5市(名古屋市緑区、瀬戸市、豊田市、豊明市、安城市)に加え、犬山市、江南市、小牧市、一宮市、大府市、知多市、東海市、岩倉市の8市と4町が今年10月までに実施。来年4月までには岡崎市、半田市、西尾市、常滑市、日進市、尾張旭市、北名古屋市の7市と1町が実施を予定している。

ドミノ倒しのような有料化の流れ。もうマイバッグ持参で買い物は当たり前の時代になりつつあるようだ。

「家族全員マイバッグを持ってます」