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特集・なごやエコ最前線

名古屋の堀川を清流に〜堀川1000人調査隊の果たす役割〜

名古屋の中心部を南北に流れる堀川は、食料品や木材などの物資運搬路として、長い間名古屋城周辺に住む人々の暮らしを支えてきた。しかし、自前の水源を持たないうえ工場や家庭の排水が流入していたことなどが影響して、都市化が進むにつれ汚濁やにおいが悪化する一方だった。

名古屋市が市政百周年を機に取り組んだ大改修や、マイタウンマイリバー整備河川第1号への指定などをきっかけに、堀川の整備はようやく進み始めた。最近では水質改善のための実験も実施されている。

もちろん周辺の住民にも、堀川に清流をとりもどしたいという強い思いがある。そうした思いの現れとして、市民サイドからも水質などの調査を行って市の実験をバックアップしていく活動が行われている。それが、堀川1000人調査隊だ。

掲載日
2006-04-12
取材・文
吉野 隆子
堀川1000人調査隊

3月28日、名古屋市北区役所で『堀川1000人調査隊2005成果報告会』が開催された。会場には、この活動に関わったメンバーを中心に、約350人が集まった。

調査を呼びかけたのは名古屋市と名古屋堀川ライオンズクラブ。名古屋堀川ライオンズクラブは、1999年に行われた「堀川を清流に」の20万署名運動をきっかけに、2003年堀川の浄化と美化に特化した活動を行うボランティア団体として設立され、活動を重ねてきた。

堀川1000人調査隊2005は、2004年2月から5月にかけて堀川における市の浄化施策の効果を市民の目線で検証するために行った第1次堀川1000人調査隊の結果を受けて、2005年11月から名古屋市が取り組んだ対策の効果を検証するために行われた。

第1次調査隊には217隊2007名、今回第2次調査隊は108隊730名が参加、調査隊の構成は、大学の研究者・水質浄化装置専門メーカーの社員・職場の仲間・名古屋市高年大学の学生・小学生・ボーイスカウト・地域のサークル・家族…と多岐に亘った。

第1次調査の結果を受けて名古屋市が行った実験は、「鍋屋上野浄水場の作業用水と浅い層にある地下水を堀川に導いて流す」、「名城下水処理場で汚泥などを集めて固める凝集剤を添加する」というものだったが、成果報告会では、昨年10〜12月に行った延べ385件の調査によって、場所による差異はあったものの、猿投橋〜納屋橋間で透視度は約20パーセント、水の汚染度を示す指標BODは最大約30パーセント改善されたことが報告され、名古屋市の実験には堀川を浄化する効果があったことが検証された。

この日報告に立ったメンバーからは、「毎日調査したので、ちょっとした変化もわかるようになりました。11月に鍋屋上野浄水場からの導水が始まると、『えっ、堀川がこんなにきれいになるのか』と思いました」(武家の里調査隊)、「透視度計を使って週1回調査しましたが、日が経つにつれて透視度が上がってきたことを感じました」(納屋橋CUBES調査隊)、「近所の子どもをたくさん連れて調査に参加しましたが、最初は汚さに驚きました。子どもたちが『卵の腐ったにおいにそっくり』などというほどでしたが、2回目の調査のときにはきれいになったことを実感できました」(港栄第1エコクラブ調査隊)と、堀川の水質改善を裏打ちするような発言が目立った。

水の中から見た堀川

鈴木ダイビング調査隊の鈴木勝美さんは、20年前から堀川に潜って継続的に生き物などの観察をしている。今回の調査では文字を書いた看板を沈めて透明度を確認したが、導水がはじまる前は50cm以上離れると文字が判読できない状態だった。ところが導水が始まると、1m離れても読めるほど水の透明度が上がり、ハゼやナマズ、手長エビなどの生き物も見かけるようになったという。

11月22日には導水や地下水が流れ込む猿投橋付近の一番深い場所で、オオサンショウウオを見つけた。オオサンショウウオは清流にしか住まない国の特別天然記念物だが、それが見つかったのは堀川がきれいになった証でもあるとされ、話題となった。その後、このオオサンショウウオは『ホリちゃん』と名付けられ、堀川浄化のシンボルとなっている。

鈴木さんは、「導水や地下水放水が始まると水の透明度が上がり、魚が上流に向かうのが見えました」とも報告したが、鈴木さんの調査にも立ち会い、この調査の事務局を務める名古屋堀川ライオンズクラブの服部宏さんによると、「潜った後は持参した大量の水で口をゆすぎ、頭から水を何度も浴びないと日常生活に戻れないというのが現在の堀川の状態であり、これをきれいな泳げる川にするのが目標」なのだという。

堀川浄化に向けて

川には水源がある。いくつもの水源から水が流れ込んで川となり、やがて海に注ぐ。だが、堀川は名古屋城築城の頃、城下に船で米や野菜・魚・塩などの物資を大量に運ぶために、名古屋城の外堀から当時は海だった熱田にかけて人の手で切り開かれた運河で、水源がなかった。江戸時代には矢田川や大幸川から、明治に入って黒川経由で庄内川から水を引くようにはなったが、堀川唯一の落差のある地点で、河口から13キロある北区の猿投橋まで潮の満干の影響を受けていることからわかるように、海水が流入することによって川として成立しているのだ。

自然河川にはある程度まで汚れを浄化する能力があるが、堀川のような都市の人工河川はきれいな水の流入が少なく、水面から溶け込む酸素の量が汚れに追いつかないため、水質の指標となる溶存酸素濃度が低くなってしまう。汚染が浄化能力を上回るようになったのは当然のことだろう。

今回の名古屋市の実験によって、堀川の水を浄化するには、ヘドロの除去、ごみの不法投棄をなくす、流れ込んでいる生活排水をきれいにする、といった対策はもちろん必要だが、きれいな水を一定量以上流すことがかなり効果的であると実証された。そこで名古屋市は、これまでの庄内川からの導水に加え、より水質の良い木曽川からの導水実験を計画、2006年度の一般会計当初予算案に盛り込んだ。

木曽川からの導水はこれまで何度も計画されてきたが、名古屋市が木曽川の水に持つ水利権が上水用と限定されていること、そして導水のために国が計画して建設する予定だった約22キロの人工河川が、2000年の公共事業見直しによって中止されたことなどから、実現に至っていなかった。今回の計画は、木曽川の犬山取水口から既設の水道管を使って鍋屋上野浄水場へ送水し、約200メートルの連絡管を接続して堀川に導水するというものだ。水利権の問題は環境用水として扱うことで、特例として取り組むことが可能となった。新年度から3年間、社会実験として取り組み、将来への道を探る。

国が今回の実験を認めたのは、堀川1000人調査隊として市民がこれまで活動してきた実績も影響していると思われる。もちろん、実験が行われる際に、調査隊は水質調査に協力する予定である。

1000人調査隊成果報告会で挨拶に立った松原武久名古屋市長は、次のように語った。

「現在は水利権の問題でできませんが、いずれは木曽川から堀川に水を引けるよう願っています。制度のしばりは、願えば変わると信じています。

堀川は名古屋の川を考えるうえでのシンボルです。だから、堀川の浄化は、名古屋市にとっても大切な施策なのです」

川の浄化は行政からの一方通行の施策だけでは成し得ない。排水やごみの問題も含め、堀川をきれいにしたいという思いの種を市民の心に蒔き、そのうえで協力を仰ぐことが必要となる。そうした意味で堀川1000人調査隊は、市民の目を堀川に向け、堀川浄化への意識を高め、思いを結集させることに大きな役割を果たしてきた。また、これまでの活動を通して、市民と行政が連携をとりながら、できることからひとつずつ取り組み解決を目指していくことが、堀川の浄化に効果をもたらすことも実証された。今後も継続していくという活動が、きれいな堀川と堀川沿いの街をどう形作っていくのか、期待は大きい。

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