ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム

児童・生徒が主体的に環境の取り組みに挑戦 〜なごやスクールISO〜

取材・文 浜口 美穂
  • SDGs

先回紹介した「なごやエコキッズ」は、保育園・幼稚園での環境に対する取り組み。今回は、小・中・高校、養護学校における「なごやスクールISO」の取り組みを紹介しよう。園・学校ともに「ヤングなごやISO」として、平成15年度にスタート。ISO14001* を活かし、生徒たちが主体的に考え、自ら実践し、さらに振り返って改善しようとする姿勢をはぐくむことが目的だ。モデル事業として39校からスタートし、3年目の17年度は、市内すべての学校、387校で取り組まれている。

児童・生徒が主体

学校での取り組みは、大きく2つに分けられる。クラスでの取り組みと、児童会・生徒会が主体となる取り組みである。もちろん、教員・保育士が主導の「なごやエコキッズ」とは違い、あくまで児童・生徒が主体的に進めていくのが「なごやスクールISO」だ。

平成17年度の活動報告書によると、ほとんどの学校が「ごみ減量・分別」「省エネ・省資源」に取り組んでいるほか、学校独自の活動も多岐にわたる。

<児童・生徒が主体となったクラスでの取り組み>
クラスでの取り組みは、ごみの分別、電気や水の節約、生ごみ処理機による給食の残飯の肥料化、総合学習など教科の中での循環型社会・地球温暖化に関する調べ学習、外部講師や企業・行政の出前講座の利用などなど。
出前講座には、環境局公害対策課が行っている寺子屋教室もある。低公害車が必要な理由などを説明し、実際に、市の燃料電池自動車「エコ・MY・カー」を使って、水の出る様子を観察したり**、校庭で試乗もできるという。小学5年の社会科の教科書で燃料電池自動車が紹介されていることもあり、平成17年度は約50校の小・中学校が寺子屋教室を利用した。

<児童会・生徒会が主体となる学校全体の取り組み>
児童会・生徒会での取り組みは、資源収集、地域の清掃活動、環境新聞・環境ポスターづくり、ごみをできるだけ出さない運動会・学芸会の運営など。児童集会などで環境クイズや発表会を行ったり、市の「エコライフチェックシート」を参考にオリジナルのチェックシートをつくり、「エコ大賞」の審査を行った学校もあった。

* ISO14001:環境に配慮した活動を行うための仕組み「環境マネジメントシステム」を国際的に規格化したもの。
* 水の出る様子:燃料電池は、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する。排出されるのは水だけで、ガソリン車と違って二酸化炭素や有害な排出ガスは出ない。

寺子屋教室で、燃料電池部分の観察
寺小屋教室で、「エコ・MY・カー」に試乗

サポート体制も充実

なごやエコキッズと同様に、なごやスクールISOでも、取り組みを促す環境都市推進課のサポート体制が整っている。企業・行政が所有する環境学習に関するツール(教材・出前講座・見学施設など)の情報を提供するほか、独自の教材も作成し、インターネットのサイト「環境情報ネット」で提供(アクセスにはパスワードが必要)。教材は、「ごみ」「電気」「ガス」「水」「グリーン購入」「交通」「地球温暖化」などのテーマに分かれ、ワークシート形式で使いやすく、ペットボトルのお茶から環境を考えるようなゲームも紹介されている。

エコマネーで植樹

具体的な取り組みを生徒自身に聴いてみたいと、平和公園南部の森に接する東星中学校を訪ねた。同校では、生徒会による毎週の資源回収(アルミ缶・新聞紙・牛乳パック)が長く続いている。年4回ほどの「資源回収強化WEEK」には、各クラスごとに収集量を記録し、毎日、速報値を発表。速報ペーパーには、「ただいまトップは○年○組です!……なんと、みなさんのおかげで4日目で目標総計数を突破しました」というような「(生徒会)執行部からの一言」も添えられ、各クラスの士気を高めている。

また、昨年6月、万博見学の事前学習として、環境カウンセラーによる講演会を実施。地球温暖化やエコマネーについて学び、行動することの大切さを実感した。そして実際に、全校生徒約400名でエコクーぴょんを集め、9月の見学の際、EXPOエコマネーセンターに持参。エコマネーに換えて植樹に貢献した。

その後も、エコマネーを集める活動は継続。毎週、資源と一緒にエコクーぴょんを集め続け、先の3月25日にアスナル金山で行われた「愛・地球博開幕1周年記念イベント」では、エコマネー2005ポイントを達成し、表彰された。

「地球温暖化の話を聴いて、このままじゃダメだと思いました。エコマネーは、ほんのちょっとの努力で環境のためになるということが実感できる取り組みなので、今後も続けていきたいです。家でも、裏紙を使ったり、電気をこまめに消しています」と、頼もしい生徒会執行部の生徒たち。今後は、近辺の小学校や隣にある千種スポーツセンター、地域を巻き込んでいきたいと、エコマネーサテライト構想を練っている。

千種区・東星中学校の生徒会執行部の面々。手に持っているのは、昨年9月、EXPOエコマネーセンターを訪れ、エコマネーを植樹のために寄付したときに贈られた「植樹証書」
今年3月25日、アスナル金山で行われた「愛・地球博開幕1周年記念イベント」で、エコマネー2005ポイントを達成し、表彰された

進化し続ける「PDCAサイクル」

「なごやエコキッズ」「なごやスクールISO」を総称する「ヤングなごやISO」の特徴は、「計画(Plan)」「実行(Do)」「点検(Check)」「見直し(Action)」という「PDCAサイクル」の手順に基づき、進化し続けることにある(*図参照)。ヤングなごやISOに取り組む市内すべての園や学校では、年度末に成果や課題を振り返り、次年度に活かしているのだ。

名古屋の園で育ったエコキッズが学校に進み、今度は自らが主体となって環境行動を進めていく。地道に長く進化していけば、子どもが変わり、大人も変わる。学校が変わり、まちが変わる。名古屋が変わり、地球が変わる。明るい未来に夢を持って、子どもたちと歩んでいきたい。