ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム

消費者と事業者が手をつないで「なごや2Rすいしんちゅう!」

取材・文 浜口 美穂
  • SDGs
  • まち

マイ箸、マイバッグ、マイボトル……エコライフの三種の神器が、最近のエコブームで広がりをみせている。さらに注目されているのがマイ容器。総菜屋、飲食店、和菓子屋などで、「これに入れてください!」と容器を差し出す「マイ容器族」たちが、まちに現れ始めた。
しかし、どの店でも対応してくれるわけではない。衛生面や品質管理、手間の問題からあっさり断られることも。事業者には事業者なりの事情があるのだ。
そんな中、事業者と消費者、行政が一緒に考えながら、使い捨て容器などを減らす2R*(リデュース・リユース)に取り組もうというプロジェクトが始まった。昨年度は、2Rに取り組む店を探そうと、エコライフ三種の神器を持ってお店探検。そのコミュニケーションを通じて見えてきたものは?!
「なごや2Rすいしんちゅうプロジェクト」(以下、2Rプロジェクト)を紹介しよう。

しみんプロジェクト

2Rプロジェクトは「しみん提案会議」** に端を発する。しみん提案会議とは、市民、地域団体、NPO、事業者、行政など、名古屋の社会を構成する「しみん」が「循環型社会なごや」実現を目指して議論する場。2006年8月に発足し、2007年9月に「しみん提案」としてまとめられた。これは、市の第4次一般廃棄物処理基本計画に反映されたほか、実現を目指してなごや環境大学の中に「循環型社会推進チーム」が設置され、現在、4つのプロジェクトが進められている。

その1つ「発生抑制プロジェクト」の中に位置づけられているのが2Rプロジェクト。ファストフード店やコーヒーショップでの「給茶」*** 「リユース食器」の推進を目標としている。

* 2R:リデュース(資源もごみも元から減らす)とリユース(モノを繰り返し使う)。ごみを減らすためのキーワード「3R」のうち、リサイクルはエネルギーもコストもかかるため、循環型社会を目指すうえで大切な「2R」に着目して、アピールされるようになってきた。
**しみん提案会議:https://shimin.n-kd.jp/history.html
*** 給茶:象印マホービンが始めた「マイボトルでどこでもカフェ」の給茶スポットは全国各地にどんどん増加し、現在ではカフェのほかに、お茶屋も参加。2009年6月20日現在、名古屋市内には、給茶スポットのカフェが4店舗、お茶屋が10店舗ある。そのほかにも、希望すれば「給茶」してくれるコーヒーショップなどが増えている。 マイボトルでどこでもカフェ ロックDEお茶!

多くの団体のパワーが集結

2Rプロジェクトは2008年4月にスタート。プロジェクト実行委員会には、発生抑制プロジェクトチームのメンバーのほか、なごや環境大学の学生チーム「エコネクスなごや」、栄の2Rマップを制作した「OSHARECO(オシャレコ)」、グリーンコンシューマーの仲間づくりを進める「グリーンコンシューマー名古屋」、消費者のアイデアを事業者に届ける「ブログミーツカンパニー」、名古屋の環境NPOの老舗「中部リサイクル運動市民の会」が参加*。事務局は名古屋市環境局減量推進室が担っている。

また、武蔵野市を皮切りに、ファストフード店やコーヒーショップ内での脱・使い捨てを推進している国際環境NGO「FoE Japan」** も、講演に招いたことが縁で仲間入り。拠点が東京にあるため、メーリングリストで情報交換し合ったり、フォーラムで意見交換などをしている。

*多くの団体:エコネクスなごや/OSHARECO(オシャレコ)栄2Rマップ/グリーンコンシューマー名古屋/ブログミーツカンパニー/中部リサイクル運動市民の会
** FoE Japan

OSHARECOが作成した栄2Rマップ。マイボトルに給茶してもらえるカフェなどが紹介されている

4つの事業を展開

初年度(2008年度)は、あいちモリコロ基金(公益信託 愛・地球博開催地域社会貢献活動基金)から助成を受け、以下の4つの事業を展開した。

1 なごや2Rお店探検隊
市内のファストフード店やコーヒーショップにおける2Rの現状を調査。チェーン店本社へのアンケートやヒヤリングは23社(回答があったのは12社)。まちあるき調査「なごや2Rお店探検隊」は、市内6エリアで実施し、2Rに取り組む107店舗を発掘した。

2 ウェブサイト制作
2Rについて情報発信するために制作。上記の探検隊で発掘したお店マップなどを掲載。

3 事業者との意見交換会
事業者との協働を模索するため、2009年2月20日に意見交換会を実施。ファストフードやコーヒーショップチェーンに広く呼びかけたものの、結果的にはモスフードサービス1社のみの参加となった。
この意見交換会をきっかけに、名古屋市内のモスバーガー全28店舗を調査する「モス倶楽部」もプロジェクト内に誕生し、フォーラムで調査結果が報告された。

4 「なごや2Rすいしんフォーラム」を開催
2009年3月20日に開催。ゲストはモスフードサービスと実行委員会構成団体。それぞれが活動報告を行った後、今後の2R推進の可能性を探る車座トークを行った。また、武蔵野市や京都市、韓国の事例も紹介された。

なごや2Rすいしんフォーラム。車座になって、参加者も巻き込みながらトークを実施

事業者の悩み

「事業者の事情がわかった一年でした」と中部リサイクル運動市民の会の代表、和喜田恵介さんは話す。意見交換会に参加したモスフードサービス* は、店内リユース食器を導入し、持ち帰りの場合も脱石油資源の観点から、バイオマスプラスチックの透明カップや紙袋を使用している先進的な2R推進企業。しかし、本社がやりたくても、実際に店を経営するオーナーとの話し合いですんなり受け入れられないこともあるという。店舗は、コスト高と客の反応に左右され、取り組み状況にばらつきがあるのが現状だ。

実際に、モス倶楽部でリユース食器と持ち帰り用素材、給茶の可能性について調査したところ、1店舗のみリユース食器を導入していない店(フードコート内の店)も。逆に給茶については、本社としては対外的に実施を広報してはいないが、28店舗のうち23店舗で給茶に応じてくれる結果となった。サービスについては、そのときの状況に応じて個別に対応してくれるということだ。

モスの店で、給茶とマイ容器にハンバーガーを入れてもらうことに成功。ただし、ハンバーガーは早く食べないと湿気を帯びてしまうので、要注意。容器にはいろいろな役割があることを実感

コミュニケーションの力

本社ヒヤリングを行ったのはスターバックスコーヒー。名古屋市内の店舗では、ホットドリンクは陶器のマグカップ、アイスドリンクは使い捨てのプラコップで提供しているが、各店舗でCO2削減目標を設定し削減に取り組んでいることから、希望に応じてアイスでも陶器のマグカップで提供するオペレーションを導入している店もあるという。

お店探検隊は2009年2月〜3月の間に伏見エリア、大曽根エリア、栄エリア、八事エリア、覚王山エリア、瑞穂エリアで実施。参加者は延べ49人だった。

和菓子屋では、「マイ容器を持ってきて和菓子を買い、ふろしきに包んで持ち帰る男性がいるよ」という話を聞いたり、「今ある割り箸を使い切ったら、リユース箸(洗い箸)に切り替える予定」という飲食店もちらほら。少しずつ事業者の意識が変わってきていることを実感したという。

また、店の人とのコミュニケーションの中で、「マイボトルOK」という表示を出してほしいと提案したところ、快諾してくれたり、逆に「消費者ががんばってくれないと店も変われない」と発破を掛けられたり。ドーナツチェーン店では、当たり前についているドーナツを包んである紙(サバーラップ)を断ることができるということが分かったり。コミュニケーションの楽しさと大切さ、将来への可能性を感じた探検となった。

本社ヒヤリングを行ったのはスターバックスコーヒー。名古屋市内の店舗では、ホットドリンクは陶器のマグカップ、アイスドリンクは使い捨てのプラコップで提供しているが、各店舗でCO2削減目標を設定し削減に取り組んでいることから、希望に応じてアイスでも陶器のマグカップで提供するオペレーションを導入している店もあるという。 お店探検隊は2009年2月〜3月の間に伏見エリア、大曽根エリア、栄エリア、八事エリア、覚王山エリア、瑞穂エリアで実施。参加者は延べ49人だった。 和菓子屋では、「マイ容器を持ってきて和菓子を買い、ふろしきに包んで持ち帰る男性がいるよ」という話を聞いたり、「今ある割り箸を使い切ったら、リユース箸(洗い箸)に切り替える予定」という飲食店もちらほら。少しずつ事業者の意識が変わってきていることを実感したという。 また、店の人とのコミュニケーションの中で、「マイボトルOK」という表示を出してほしいと提案したところ、快諾してくれたり、逆に「消費者ががんばってくれないと店も変われない」と発破を掛けられたり。ドーナツチェーン店では、当たり前についているドーナツを包んである紙(サバーラップ)を断ることができるということが分かったり。コミュニケーションの楽しさと大切さ、将来への可能性を感じた探検となった。
カレー屋でカレーをテイクアウト
和菓子屋でマイ容器に入れてもらう
お店探検隊はコミュニケーションが命

グループに分かれて探検した後は、2Rの収穫物を囲みながら、発見したことや感想を述べ合う

消費者と店を結ぶ新たなる挑戦

今年度もモリコロ基金の助成を受け、現在、具体的な計画づくりが進められているところ。事業者がそれぞれ事情を抱えている中で、どのように2Rを呼びかければよいか思案中だ。

武蔵野市で行われている地域自主協定によるファストフード・コーヒーショップ店内のリユース推進事業* までいかなくても、事業者に「2R宣言」をしてもらうことも検討。また、市民が2Rの大切さを知り、がんばっている店を選べるような冊子づくりも考えている。つくるだけでなく、その活用も課題のひとつだ。

「店の人と話さないと、向こうも消費者が何を求めているかわからない。その会話が店を変えていくきっかけにもなります」と和喜田さん。どんどん店の人と会話し、口コミでがんばっている店を応援してほしいと話す。

もちろん、会話のきっかけになるマイボトルやマイ容器は忘れずに。グリーンコンシューマー名古屋の守屋百合子さんは、「マイボトルに入れてもらった時点で責任は自分持ち。給茶は、店と客の信頼に基づいて成り立っています」と給茶の心得を話してくれた。

消費者と店を「信頼」で結び、ともに2Rに取り組むのはこれから。今後の展開は、またの機会に紹介したい。

* 地域自主協定によるファストフード・コーヒーショップ店内のリユース推進事業:市民、事業者、自治体が協定を結んで、店内リユースを進める。レジ袋については、この手法を用いて全国各地で取り組みが進んでいる。https://www.foejapan.org/lifestyle/gomi/fast/chiiki/