ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム
マイ箸・マイボトルでHappyエコライフ
レジ袋削減のためマイバッグ持参をすすめる取り組みが盛んだ。レジ袋だけでなく、消費者の行動によって減らせる使い捨て製品は多い。そのひとつが割り箸(はし)。飲食店などで割り箸を断るためのマイ箸持参運動はまだ始まったばかり。さらに最近は、マイボトル(水筒)持参の話も聞かれるようになった。
マイバッグ、マイ箸、マイボトル……あなたのカバンには何が入っていますか?
割り箸が抱える問題
環境問題の中で、かつて「割り箸論争」というものがあった。「割り箸は森林を破壊してつくられている」vs.「割り箸は端材や間伐材を利用しているので、林業を促進する」という論争。しかし、いまや流通している割り箸の9割以上が中国から輸入されていて(日本割箸輸入協会データ*)、しかも材料を採るための森林皆伐が問題となり、現在は材料の約67%をロシアなどからの輸入に頼っているというから、この論争も勝負あったというところか。
また、割り箸の安全性も問題視されている。特に竹の割り箸については、防かび剤や漂白剤が使われているものもあり、厚生労働省が調査を実施している**。
このように、森林保護や安全性、ごみの問題から見ても、割り箸使用を減らすことは重要。割り箸の年間使用量は約250億膳といわれ、1人が年間200膳の割り箸を使い捨てている計算になるというから、「たかが割り箸、されど割り箸」である。何より、「自分の箸で食べるのがおいしい!」とマイ箸を持ち歩く人もいる。
* 中国からの輸入量について:全国で流通している割り箸の量が正確にはわからないため、推測値となっている。輸入量全体でみれば、中国からの輸入が99.9%を占めている(2005年度)。
** 割り箸の安全性について:「(財)日本食品分析センターで検査済みです」ということを証明する日本割箸輸入協会による認証マークもあるが、マークを入れるかどうかはメーカーの判断に任されており、割り箸がまとめて入っている外袋に印刷されていることが多いので、飲食店が使用している箸の安全性について消費者が知ることは難しい。
エコクーぴょんの対象にも
本サイトでも紹介した新しいエコクーぴょんシステム。レジ袋・紙袋を断る以外に、割り箸を断るなどの3R行動も対象に加えられた。さっそくエコクーぴょん参加店に名乗りをあげた飲食店が数軒。そのひとつ、天白区にある「きらく寿司」を訪ねた。
「実は、参加の申し込みをしたのは息子なんです」と、店を切り盛りする林美奈子さん。東京の大学で地球環境クラブに入っていた息子さんは、実家に戻ってくるたびに、「割り箸を捨てるのはもったいない」と、段ボールに詰めて春日井市の製紙メーカーに送っていた。そこでリサイクルして紙に生まれ変わるのだ。しかし、送料がかかるなど、リサイクルの限界を感じていたところに、新エコクーぴょんの参加店募集のお知らせを目にし、「うちも参加してみたら」と両親に勧めたという。
店内にはエコクーぴょんのポスターが1枚。参加店になってから初めてのお客さんにはエコクーぴょんについて説明する。箸を断られるのは、主に出前のとき。しかし、「お客さんに出すので割り箸の方がいい」「割り箸の方がおいしく感じる」という人も多いという。
「店屋物は割り箸で食べる習慣がついているから、それを崩すためには自治体が大々的にPRしないとだめ。マイ箸が定着するまで継続していかないと」と美奈子さん。自分たちだけでもやっていこうと、家族みんなでマイ箸を持ち歩いている。
* きらく寿司:名古屋市天白区菅田2-1306 TEL 052-802-0668
マイ箸袋づくり
2005年度のなごや環境大学共育講座で、マイ箸袋づくりを行ったのは、グリーンコンシューマー名古屋・昭和区チーム(「エコひいき体験講座」第4回目)。みんなでわいわい話しながら、手縫いで自分の箸袋をつくるのは楽しい作業。思ったより短時間で完成し、好評だったという。
今年も引き続き、マイ箸持参を呼びかける活動を続け、10月には、地元、興正寺の秋祭りに出展。自分たちで手作りした箸袋の販売を行って、マイ箸をPRした。
また、グリーンコンシューマー名古屋の各区チームが制作した「環境にやさしい買い物ガイド」を販売する玄米菜食&カフェ「バオバブ」では、割り箸ではなく洗い箸を使用。さらに、マイ箸持参のお客さんには食事代20円引きという特典もあり、箸袋も販売している。友達にプレゼントしたいと、箸袋を買い求めるお客さんもいるという。
* 玄米菜食&カフェ「バオバブ」:名古屋市中区大井町3-20 山下ビル2階 TEL 052-332-8522
Happyまるけのマイ箸
おしゃれにかっこよくマイ箸を広げていこうと活動する市民グループ「Happyまるけのマイ箸」。代表の神谷芝保(かみや しほ)さんは、2年半前、ある映画監督が食事の際に取り出したマイ箸を見て「かっこいい!」と感じた。当時は、割り箸に関する知識もなく、監督が何のために箸を持ち歩いているのかもわからなかったという。割り箸について調べてみると、中国産がほとんどで、森林伐採や安全性などの問題があることがわかった。2年前には、植林をするため、中国へ。森林は切り開かれ、大地はカラカラに乾燥していた。
「大きなことはできないけど、自分にできることって何だろう。自分でマイ箸を持ってみたら、いろんなHappyがやってきた。みんなでやったら、みんながHappyになれる」と思った神谷さん。さっそく自分でつくった箸袋を路上で販売しながらマイ箸を持ち歩こうと呼びかけた。この「Happy」とは、ごみ減量や森林保護、安全・安心、それにおいしい!こと。現在は、シルバー人材センターでリサイクル布を利用して箸袋を縫ってもらい、間伐材の箸と箸キャップ(箸置きにもなる)をつけてセットにして販売。「Happy」には、高齢者雇用、布のリサイクル、間伐材利用も加わって、「Happyまるけ(だらけ)」になった。
「今はまだ自分の給料も出ない。それでも動いていると、関連情報を知ることもできるし、それを人に伝えることができる。みんな知らないだけ。伝えることが大切だと思っています」
自分で絵を描いた紙芝居を手に、イベントや飲食店を回ってマイ箸の普及活動を行う。利益が出るようになれば、その1割を基金として、間伐や植林などに使っていく予定だ。
また、マイ箸を広めるためには、「おしゃれ・かっこいい」は欠かせない要素と、現在、「マイ箸アイデアコンテスト」を実施中。こんな箸なら持ち歩きたいという箸や箸袋、関連グッズのデザインを12月10日まで募集している。集まった作品は、2007年1月5日〜8日まで市民ギャラリー矢田に展示。賞の発表も行う。このようなコンテストは今後も継続し、いずれ製品化したいと、夢は広がっている。
そしてマイボトルも
中区大須の東仁王門通商店街にある「珈琲ぶりこ」* は、築59年の木造町屋を改装した風情ある喫茶店。格子戸の入口前に立ててある看板には「給茶スポット」と書かれた緑色のシールが貼ってある。「給茶スポット」って何だろう?
給茶スポットとは、象印マホービン(株)が進めている「どこでもカフェ」** で、マイボトル(水筒)を持参すれば、購入したコーヒーなどを入れてもらえる喫茶店だ。ボトルのサイズに応じて量を選べ、店内で飲む場合より割安になっている。今年4月、東京・大阪からスタート、9月に名古屋・福岡に展開した。名古屋の給茶スポットは3店舗。「珈琲ぶりこ」のほかに、栄の「air café」、久屋大通の「ティーパーティー」が給茶スポットになっている。
珈琲ぶりこでは、元々、紙・プラスチック容器を使用してテイクアウトもしているが、ごみが出るのが気になっていた。そこへ象印から給茶スポットの話が舞い込み、共感してスタート。コーヒーや紅茶、オレンジジュースなど給茶スポット専用メニューは12種類。通常のテイクアウト価格より30円安い。
「どこでもカフェ」のステッカーに興味を持ったお客さんに説明すると、「ずっと温かいまま飲めるのはいい」と反応は良いが、実際に3カ月間で利用したのは記者で4人目。取材後、飲み会に参加し、最後に飲んだマイボトルコーヒーのおいしかったこと! それ以来、「水筒にコーヒー」がマイブームになっている。
いつでもどこでも自分の飲みたいものが飲めるマイボトル。出先で自販機から飲み物を買う習慣を見直す時代がやってきた。
* 珈琲ぶりこ:名古屋市中区大須3-35-22 TEL 052-238-2789
** どこでもカフェ:https://www.zojirushi.co.jp/cafe/
おしゃれで使いやすいグッズが増え、当たり前のように誰のカバンの中にもマイ箸・マイボトルが入っていて、意識しなくても自然にエコが実践できている……こんな環境へのアプローチがあってもいい。