ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム

人から人へ 広がるグリーンコンシューマーの輪

取材・文 浜口 美穂
  • SDGs
  • まち

「グリーンコンシューマー」という言葉をよく耳にするようになった。「環境を大切に考えて、買い物や生活をする人」という意味で使われている。特に買い物は私たちの生活の基盤であり、商品やお店を選ぶことは、社会に向けて「私はこの商品(お店)を応援します」という意思を表わすことにもなる。グリーンコンシューマーが増えれば、モノの質や流れを変える力になるのだ。
そんなグリーンコンシューマーの輪が名古屋でも徐々に広がりをみせている。その活動を紹介しよう。

環境にやさしい買い物ガイド

「よし、明日から私もグリーンコンシューマーになろう!」と思っても、環境に配慮した商品にはどんなものがあるのか、また、どこで買えるのか、わからないことが多い。こういった情報はまだまだ得られにくいのが現状だ。そんなときのお助けガイドブック「環境にやさしい買い物ガイド」の制作が全国各地で進んでいる。

名古屋では、各区ごとにボランティアがまち歩き調査・取材・執筆などを行い、2000年の東区版を皮切りに、2002年に天白区版と北区版、2003年に瑞穂区版、2005年に昭和区版と港区版が完成。現在、中川区でも活動が始まっている。メンバーは地元の人たちが中心となるが、他区の制作にかかわった経験者がサポートすることで、ノウハウを蓄積しながら、新しい区の活動へとつなげてきた。

飛び込みで店を回り、聞き取り調査
ガイドブックに載せるかどうか、「エコの基準」を検討しながら、取材を進める
現在、6区で発行されている環境にやさしい買い物ガイド

わがまちの再発見

各区のガイドブックを見ると、区ごとのまちの特徴や、かかわったメンバーの特徴が表れていておもしろい。例えば、昭和区の特徴は、コツコツと続けてきた古い店が多いという一方で、自然エネルギーや自然食のような新しい取り組みもあり、古さと新しさが共存するまち。最新の環境情報と共に、新旧の交流の場となっている「コミュニティーの場」を紹介するコーナーもある。

港区は、リサイクル工場が多いまち。それらの取材を通して「資源のゆくえを追う」記事や、子育て真っ最中のメンバーならではの、子どもたちの環境教育の取り組みを紹介する記事が充実している。

グリーンコンシューマーの目で改めて自分の住むまちを見直すと、環境にも人にもやさしい昔ながらのお店があったり、環境意識を持って新しく開業したお店があったり……。わがまち再発見によって、地域に対する愛着も生まれるようだ。逆に言えば、地域に根ざしてこそ、グリーンコンシューマーと言えるのかもしれない。

ガイドブックは「はじめの一歩」

ガイドブックを作ったら活動は終わり、ではない。各チームは、みそづくりやおからクッキングなどのスローライフ講座を企画したり、オリジナルの環境寸劇や買い物ゲームを通じて、グリーンコンシューマー仲間を増やす活動を行っている。

また、各チームが緩やかにネットワークする「グリーンコンシューマー名古屋」をつくり、新しくガイドづくりを始める区のサポートを行うほか、各チームの講座を応援。その他、名古屋市リサイクル推進センターと協働でグリーンコンシューマーのガイド冊子「ひらけ! eco」を制作したり、オリジナルの買い物ゲーム「どっちこっちスーパー」を創作し、環境デーなごやで実践するなど、活動の幅が広がっている。

瑞穂区チームのスローライフ講座「みそづくり」
「ひらけ! eco」の付録、グリーンコンシューマーすごろく。エコライフの一場面を書いたマスに止まればポイントが加算され、逆の行動を書いたマスに止まるとポイントを失う。ゴールしたときに一番ポイントをためた人が最高の「エコな達人」。楽しみながら、エコライフについて学べる
「缶ビールとびんビール、どっちを買う?」。「どっちこっちスーパー」でどっちを選ぶかで、グリーンコンシューマー度がわかるというオリジナル買い物ゲーム(「環境デーなごや2004」にて)

グリーンコンシューマーの輪

なごや環境大学の共育講座にも3つのグリーンコンシューマー講座が登場した。「グリーンコンシューマー名古屋」が企画・運営した「グリコン・ワンディツアー」、昭和区チームの「エコひいき体験講座」、瑞穂区チームの「こころとからだと自然にやさしい講座」である。

グリコン・ワンディツアーは、各区のメンバーがツアーコンダクターとなってまち歩き。お店の人の話を聞いたり、こだわりの商品を手にしたり、自然食レストランでランチを食べたり……。参加者は、まち歩きを楽しみながら、自分たちのくらしと環境がつながっていることを実感し、身近なまちの中にそのくらしを支える材料があることに気付いた。

さらに、思わぬ波及効果もあった。まちを一緒に歩いたり、こころとからだにやさしいランチを食べるうちに仲間意識が深まったのか、参加者同士が自ら連絡先を交換しあい、講座終了後もさまざまな催しやお店情報のやりとりをするようになったという。また、回を重ねるごとに口コミで受講者が増え、グリーンコンシューマーの輪は確実に広がっているようだ。

グリコン・ワンディツアー。楽しみながらグリーンコンシューマーについて学ぶ
グリコン・ワンディツアーの締めは、毎回お楽しみの自然食ランチ。最終回の天白区ツアーでは、エコライフ家庭のお宅で、おから汁、おからバーグ、黒豆の煮汁入りババロアなどに舌鼓。おいしいものを食べると、笑顔が広がり、話が弾む

インターネットで情報発信

グリーンコンシューマー名古屋では、名古屋市リサイクル推進センターの3R推進活動助成金を受け、2006年4月開設をめざして独自のウェブサイトを準備中。グリーンコンシューマー活動のピーアール、ガイドブックの紹介、イベント情報、エコライフの知恵袋などを掲載予定だ。

また、2000年に制作した東区版は情報が古くなったこともあり、同助成金を受けてウェブサイトを開設、ガイドブックの更新情報を掲載していく予定だという。

グリーンコンシューマー名古屋は今後も、講座や情報発信を行いながらグリーンコンシューマーの輪を広げ、いずれは16区すべてのガイドブックをつくりたいと意欲的。名古屋のグリーンコンシューマーたちの活動に、2006年も目が離せない。