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エコクーぴょんの大冒険 〜リサイクルの限界を飛び越えて〜

取材・文 内藤 大輔
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買い物のときにレジ袋を断るとシールがもらえ、40枚集めて専用台紙に貼ると100円分の買い物券として使える「エコクーぴょん」。参加店はスーパーやドラッグストアのほか、クリーニング店やファーストフード店など多岐にわたり、2004年12月現在、名古屋市内の571店舗が参加している。一部スーパーでは同様のサービスを独自に行っているが、エコクーぴょんは異なる系列のお店でも共通して使える点が消費者に好評だ。

リサイクルの次の時代へ

エコクーぴょんが始まる3年前の2000年8月、名古屋市は新たな資源収集をスタートした。このプラスチック製・紙製容器包装の収集開始により翌年度には、ごみ量を3年前の4分の3にまで減量することに成功。しかし、資源リサイクルにはごみ処理よりもコストがかかり、資源収集とごみ処理にかかるコストの総額は、以前と同水準のままだ。コストばかりではなく、収集や再資源化には多くのエネルギーがかかっている。石油など有限資源の消費量や、地球温暖化の原因とされるCO2の排出量を抑えるためにも、リサイクルからリデュース(発生抑制)への転換が課題となっている。

ミッションは脱レジ袋

容器包装の中でも、私たちに最も身近なのがレジ袋。2001年度のごみ組成分析によると、名古屋市内で年間約1万トンのレジ袋が使われているという。つまり、1世帯で1日約4枚のレジ袋をもらっていることになる。レジ袋も有効に再利用できるという意見もあるが、とても使い切れる量ではないだろう。また、レジ袋1万トンの原料・製造に使われる石油は約2トン、約26,000世帯が1年間に消費する電力に相当する。意外に侮れないレジ袋。でも、私たち消費者が少し気をつければ、簡単に減らせそうなのもレジ袋だ。

2002年5月、名古屋市は「脱レジ袋宣言」を発表し、レジ袋を2005年までに30%削減、2010年には50%削減する目標を打ち出す。そして翌2003年の10月、エコクーぴょんは始まった。

参加を呼ぶメカニズム

消費者団体・関係事業者団体・行政・学識経験者で構成する「容器・包装3R推進協議会」が、エコクーぴょんの運営組織だ。参加店は、協議会から1枚2.5円でシールを購入し、レジ袋を断ったお客さんに1枚配布。シール40枚を貼った台紙1枚を100円分商品券として、お客さんに還元する。集まった台紙は協議会に送付し、台紙1枚あたり100円の還元金を受け取るという流れだ(図表1)。参加店の負担は差し引きすると、シール1枚あたり2.5円。一部スーパーでは類似サービスで1枚あたり5円を負担しているが、より多くのお店が参加できるようにと協議会が検討して設定した金額だという。また、レジ袋の仕入れコストは1枚あたり2〜3円程度と言われており、負担分はレジ袋の削減によって相殺されるとみられる。手間の増加による間接的なコストも発生すると思われるが、参加店がますます増えていけば、消費者としてはうれしいことだ。

図表1:共通還元制度「エコクーぴょん」のしくみ

1年3か月、実りのときは…

しかし、スタートから1年が過ぎた今、その成果は芳しくないようだ。開始から2004年12月末までの1年と3か月、参加店でのレジ袋「お断り率」は平均8.6%(還元金の請求にあわせて参加店から報告のあったものを集計した数値)。類似の「すぎなみエコシール事業」を実施する東京都杉並区の「マイバッグ等持参率」は31.8%(2004年7月)、「共通シール制度」を実施する愛知県豊田市の「買物袋持参率」は15.4%(2003年平均)だ。それぞれ調査方法が異なるため単純には比較できないが、やはり低い数字と言わざるをえないだろう。

エコクーぴょんの実施期間は、2006年3月31日までとなっている(買い物券としての利用期限は同年4月30日まで)。名古屋市の担当部局では評価・改善して継続したいとしているが、もしあまりに成果が表われなければ、先行きは不透明になってくるだろう。それぞれの小売事業者や消費者が参加できる共通のプラットフォームとして、エコクーぴょんはさらにもう一段、飛び越えていけるだろうか。

スイッチ! 市民発のムーブメントへ

2004年12月4日、名古屋市の繁華街でエコクーぴょんのPRキャンペーンが行われた。「マイバッグ宣言」に署名した人に、エコクーぴょんのキャラクターが描かれた買い物バッグをプレゼント。子どもたちは、ごみ減量ゲームを楽しんだ。1時間半のキャンペーンで189人がマイバッグ宣言するなど、合計1,600人の市民が呼びかけに応えた。このキャンペーン活動は、公募で選ばれた「エコクーぴょんPR隊員」たちが行ったものだ。

隊員として登録された市民は、レジ袋削減やエコクーぴょんのPR活動に参加できる。具体的には、月に1〜2回行われる店頭や街頭でのキャンペーンのほか、情報誌での企画や取材執筆の活動をするという。エコクーぴょんPR隊員は、随時募集中だ。対象は、高校生を除く市内在住の18歳以上の市民。問い合わせは、名古屋市環境局減量推進室まで(TEL 052-972-2398)。

こうした市民による市民へのPR活動は、小さな取り組みかもしれない。しかし、同じ視線からのコミュニケーションが実は、この活動を広げるうえで有効なのではないか。レジ袋の削減は、消費者である市民からのムーブメントなくしては、なしえない目標なのだから。