ENVIRONMENTALCOLUMN 環境情報を知りたい方/環境コラム

名古屋ごみ減物語

取材・文 浜口 美穂
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あれはもう6年前のこと。1998年末、藤前干潟でほぼ決まりかけていた「ごみ埋め立て処分場計画」が断念された。多くのいのちの連鎖をつなぎ、はぐくむ干潟を未来に残すための英断だった。そのとき初めて、名古屋市のごみを埋め立てている愛岐処分場の寿命が、あと2年余りしかないことを知った市民も多いだろう。こうして名古屋のごみ騒動が幕を開けた。
翌年2月、市は「ごみ非常事態宣言」を出し、「2年間で20%のごみ減量」を呼びかけた。集団回収やリサイクルステーションなど市民の自主回収をうながしたり、集合住宅でのコンテナの廃止、事業者のごみ処理手数料の全量有料化など、さまざまな施策が急ピッチで進められたが、何と言っても大きな力を発揮したのは、2000年8月に始まったプラスチック製・紙製容器包装の新資源収集だろう。

藤前干潟が原点

あれはもう6年前のこと。1998年末、藤前干潟でほぼ決まりかけていた「ごみ埋め立て処分場計画」が断念された。多くのいのちの連鎖をつなぎ、はぐくむ干潟を未来に残すための英断だった。そのとき初めて、名古屋市のごみを埋め立てている愛岐処分場の寿命が、あと2年余りしかないことを知った市民も多いだろう。こうして名古屋のごみ騒動が幕を開けた。

翌年2月、市は「ごみ非常事態宣言」を出し、「2年間で20%のごみ減量」を呼びかけた。集団回収やリサイクルステーションなど市民の自主回収をうながしたり、集合住宅でのコンテナの廃止、事業者のごみ処理手数料の全量有料化など、さまざまな施策が急ピッチで進められたが、何と言っても大きな力を発揮したのは、2000年8月に始まったプラスチック製・紙製容器包装の新資源収集だろう。

“ごみュニケーション”の勝利

2000年、名古屋は“熱い夏”を迎えた。

新資源収集開始にともない、市は4月から学区・町内会ごとに説明会を実施。その回数は半年間で約2千3百回、のべ参加人数は約21万4千人に及んだ。「そんな細かいことやってられるか!」「どれくらいきれいに洗って出したらいいの?」「家に置いておく場所がない(当初は2週間に1度の収集だった)」……。説明会場では、市民の戸惑いと怒りの声があがった。そんな状態でも、8月が来ればやるしかなかったのだ。

資源の集積場所は予想通り、大混乱。まちの至るところに、「このごみは収集できません」と書かれた警告シールを貼ったごみ袋が残されていた。ここで奮闘したのが、保健委員や町内会長を中心にした町内会。当番制で集積場所に立って指導に当たったり、ごみよろず相談室を開いたり、新聞を作ったり……。町内会ごとに、資源の置き場所を示すオリジナルのプレートも登場した(市が用意したプレートは約1か月遅れで配布された)。

この時期、まちのあちこちの集積場所で、ごみ談義に花を咲かせている人たちを見かけた。名古屋人の中でこれだけごみの話題で盛り上がったことは、後にも先にもないだろう。

警告シールを貼って収集されずに残されたごみ袋
あちこちの資源集積場所で、わいわい言いながら協力して分別する人たちの姿が見られた
町内会ごとに資源の置き場所を示すオリジナルのプレートが登場

リサイクル貧乏に陥る

ごみュニケーションが功を奏し、2001年度には23%のごみ減量を実現し、目標を達成。埋め立て量もほぼ半減した。そして、2002年には第1回環境首都コンテストで第1位、2003年には自治体環境グランプリと環境大臣賞を華々しく受賞。ところが、名古屋市は「リサイクル貧乏」への道をひた走ることになったのだ。

例えば、2003年度のごみ処理経費と、プラ・紙製容器包装、ペットボトルの資源収集などにかかる経費を比べてみよう。

つまり、ごみ処理経費に比べて、プラで約1.7倍、紙で約1.4倍、ペットボトルに至っては約2.3倍もの経費がかかっている。リサイクルには、多くのコストとエネルギーがかかるのだ。

ごみ処理・資源収集にかかる経費

元から断たなきゃダメ!

「ごみ減量先進都市」として、全国に名を上げた名古屋市。しかし、このままでは市の台所は火の車だ。ならば、次の目標は? そう、「ごみも資源も元を断つ!」ことである。

発生抑制の取り組みは、例えば、2003年10月にスタートしたレジ袋削減をめざす共通シール還元制度「エコクーぴょん」* や、今年9月からイベントやJリーグの試合会場に導入し始めた「リユースカップ」** などがある。

「ごみ減量先進都市」からワンランクアップして、循環型社会を実現する「環境首都」へ。名古屋市は新たな目標に向かって進み始めた。

* エコクーぴょん:消費者が、この制度に参加する販売店でレジ袋を断るとシールが1枚もらえ、それを専用の台紙に貼って40枚集めれば、100円の買い物券として参加店で使用できる。しかし、約1年たって、平均レジ袋お断り率(還元金の請求にあわせて、参加店から報告のあったものを集計)は、8.6%と低い。
** リユースカップ:9月末から、Jリーグ「名古屋グランパスエイト」の試合会場で生分解性プラスチック製のリユースカップを導入。デポジット方式で回収を行っている。また、市内のイベントや祭りなどに、このリユースカップと食器洗浄車「アラウくん」(2トントラック)の貸し出しも行っている。

エコクーぴょん参加店に貼られたポスター